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竜騎士  作者: Blood orange
26/29

お仕置きは◯◯◯◯の刑〜!前編

お仕置きは、ピ◯キオの刑?





 「ミーヤ!」

 「どこ行っていたんですか?!」

 「ウゴウゴーウーガー!」

 「ご主人様ー!」

 

  空から「よっ!」と飛び降りたら、いきなり四人に言葉攻めにされる事、一時間。

  ジャンガの言葉はウゴウゴーウーガーとしか言っていないけど、大体何を言っているのかはよく分かる。


  「このお転婆娘め! 何で空を飛んでいるんだよ! もしそう言うのを他の人に見られたらなんて思った事ないだろ!」


  よくこんな言葉があのウゴウゴーウーガーに凝縮されているんだな〜なんて感心してまう。便利だな異世界。全くこの一言に尽きる。

  ダイアナから潤んだ大きな目で「ご主人様〜」と呼ばれれば、思わず口がニヤニヤしてしまうのは、私だけじゃないはずだ。絶対!こんな可愛いネコ耳…いや…イヌ耳(狼だが)が垂れているんだぞ。尻尾までもれなく着いて来る。これこそ、究極の……グフングフン……。思わず鼻から赤い噴水が止めどなく吹き出してしまった。そんな変態気質の私にドン引きもせずにハンカチをくれるのは、さすが永遠の天使ブラウ様である。

  私には、君の背中に真っ白な天使の羽根が見えるよ。頭にはもちろん綺麗なパ◯ソニックの丸い電気の輪が見える。


 「一体どこまでレジュンヌを買いに行って来たんですか?」

 「えっと…。空の散歩しながら?」


 ブラウ様はこめかみに手をやると、少し濃い金茶色の眉を顰めて、盛大なため息を漏らしていた。ああ〜なんて絵になるのかしら!! 憂いに満ちたブラウ様!!やっぱり、携帯で…いや、カメラでこの瞬間を撮りたい!!ついでに憂いの午後ってタイトルで売り出したい!!

 「ミーヤ。お前の心の声がただ漏れじゃ」

 「あ…そうでしたか?」

 「ミーヤ。まさか空を飛んでいる所を誰かに見られたわけではないだろうな」

 「……」

 人って核心を突かれると思わず目を背いてしまうもんなんだね。ついやっちゃったよ。別に意識してって訳じゃないんだけどさ〜。ほ〜んの出来心?ってやつですよ。お茶目でしょ?なんて笑って誤摩化したら、毛むくじゃらのビーツ様の鉄拳が頭にめり込みました。


 「ミーヤ…誰と誰に見られたんだ?お前の事だ、一人二人じゃない事はわかっている」


 さすがはビーツ様。よくわかってらっしゃる。思わず「田中君〜座布団一枚!」って言いそうになったよ。


 「で?誰に見られた?」

 「ビーツ様。誤摩化されてはくれなかったんですね」


 当たり前じゃと言わんばかりに大きなお腹を撫でる毛むくじゃらの元勇者は、ギロリとミーヤを一睨みする。普通の男でもこの元勇者の睨みに身を竦ませて、全てを洗いざらいに話してしまうのだが、ミーヤはそこら辺の男どもとは違って肝が据わっている。


 「えー。話したらまた怒られるじゃないですかぁ〜」


 この時渡りの巫子には反省どころか、改心すらみれない。


 「ブラウ…絵姿を手に入れたのだが…他ではめったに手に入らないレアものだそうだ」


 「言います!!欲しい!!絶対欲しい!!」


 渡す前に顔の前にブラウの半裸身の絵姿をさっと見せると、キラーンとミーヤの目が光った。


 「二人の怪しい男と、王様だよ。言ったんだから頂戴!」


 奪うようにビーツから取り上げた愛しの天使ブラウ様のヨダレものの絵姿を手に入れたミーヤは、恐る恐る目を開けてご尊姿を目に焼き付けた。


 「あ!!!!」


 がっくりと項垂れたミーヤの手の中には、早足人参の姿が描かれたものが残っていた。


 「ビーツ様…騙したんですね…。私にブラウ様の半裸身の絵姿をくれるって言ってたくせに」


 ナイアガラの滝のように目から涙が止めどなく溢れている。そんなミーヤを見てビーツは「鼻からも水が出てるぞ」と指摘してる。


 「ミーヤ!何てことを言ってるのですか! ビーツ様はそんな事は仰ってないでしょう。ビーツ様が言われたのは私が描いた早足人参の絵姿をあなたにと仰ったのですよ。何をそんな邪な考えをしているのですか。あなたと言う人は!それにそれは私の魔法がかかっていて、その人が欲しい物を一瞬見せると言う仕掛けが入っているのですよ。さあ、ミーヤ。あなたは一体その一瞬で何を見たと言うんですかね?教えていただけませんかね?」


 心なしかブラウが怒っているのがヒシヒシとわかる。いつものブラウなら周りには暖かい春色のオーラが出ているが、今はどす黒い色に覆われている。


 「ひぃぃぃぃぃぃ〜!!」


 ブラウの静かな怒りに思わずミーヤは日本人の究極の反省スタイルをした。それは……土下座。でもあまりに勢い良くジャンピング土下座をしすぎて、膝小僧は強打するわ、額は……ここは置いておこう。つまりだ、あまりのことにブラウの怒りも吹っ飛んでしまったのだ。


 「ミーヤ。額から血がドクドク流れてますよ!」


 天使ブラウにこの日は止血と介抱してもらい、思わず三途の川を渡り終えそうになったのは、言わないでおこう。ジャンガからは白目剥いて額から血ダラダラ流していて、笑っている女を見たのは産まれて初めてだと言って呆れていた。お前に呆れられても私は屁とも思わないさ。これが天使ブラウだったら、地獄の底まで行ける穴を掘ってその中で悶えてるけどね。

 折角はじめてのおつかいで買って来たレジャンヌの花は全てミーヤの怪我を直すために使われてしまった。これってプラマイゼロじゃん。

 ブラウとビーツから「ミーヤ。今回の事で学んだ事は?」と聞かれて、すぐにこう答えた。


 「土下座する時には、勢いをつけない」


 もちろんビーツから拳骨をくらい、ブラウからは盛大なため息を貰った。

 えー何が間違ってんだよ〜!! だって、土下座はあれは万国共通のごめんなさいポーズだよ。この日の夜、ダイアナが密かにご主人様の真似をしていたのは言うまでもない。


 次の日、四人が城下町へと行くとそこには奇妙な立て看板があった。

 《この顔にピンと来たら騎士団へ》

 そこに描いてあったのは、凶暴な顔をした黒い髪の鬼の絵だった。しかもご丁寧に詳細まで書いてある。


 《空の飛び方を教えますと豪語して、見ず知らずの幼い子供から金を巻き上げる極悪詐欺。この顔を見たらすぐに騎士団詰め所へお知らせ下さい》


 「……ミーヤ…いや、聞かんどこう」

 「え〜。ビーツ様。私がいつそんな悪どい事をしましたか? そんな人間に…「見える!」


 ミーヤの言葉を遮ってきっぱり「見える!」と断言して来たビーツに、ミーヤはその場で膝をついた。一応庇ってくれると信じていたのに、酷いじゃんか…。やっぱ、そうだよな……。愕然と膝をついて落ち込んでいるミーヤを慰めるのは、ダイアナとピノの二匹だけ。ピノは特にビーツの方を見て威嚇して来る始末。


 「ミーヤ。本当に……やってないんだよな?」


 まるで万引きして掴まった時に親が必ず言う台詞と一緒だ。


 「なんでやらなきゃなんないのよ! お金なんていらないよ。それに私にも同じ事言って来たヤツが居るんだって、昨日から言ってんじゃん! こんなんあの二人の男達が勝手に捏ち上げたに決まってる!絶対許せない!」


 勢い良く立ち上がったミーヤの目には、メラメラと復讐の炎が燃え上がった。いきなり魔力を下半身に込めると、一気に空へと浮上した。


 「おい!ミーヤ!そんなことしたら…」

 「空から見つけた方が早いんだよ!絶対あいつら見つけてやる」


 ミーヤの姿は一気に空の彼方へと消えて行った。

 

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