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竜騎士  作者: Blood orange
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お仕置きは◯◯◯◯の刑〜!後編

 「本当に飛べたんですね。巫子様は…」

 暢気そうに空を見て呟いているブラウとは違って、ビーツは苦虫を噛み潰していた。あの子のことだから、自分を貶めた二人の男を半殺しの目に遭わせるに違いない。あれの怒りが頂点に達すれば、この国さえも滅ぼすと言うのに、どうしてこうも厄介ごとばかり持ち込んで来るんだか……。この老いぼれにはキツい仕事だわい。

 

 空から昨日の二人の男達を捜していたミーヤは自分の姿が人に見えなければ良いんだと言う事に気がついた。そこで、すぐに「ステレス機能」と呟くと身体を半透明にして透けさせた。暫く飛んでいると、憩いの森なのだろうか、公園みたいな場所の上空に来た。森の真ん中には噴水がある。その噴水の近くで笑いながら櫛団子みたいな焼き菓子を食っている男達が何人もいた。その中ににやけ面の二人の凸凹コンビがいた。


 (いた!一体何人騙してんのよ!)


 そっと男達の近くに降りると木の上から見下ろす事にした。

 

 「しっかし、昨日のあれは魂抜けそうだったよな〜」

 「全くだ。だが、あれでこっちはぼろ儲けだから、あの男に感謝だな」

 「ああーウィンザーが思いついてくれなかったら、ここまで上手く行かなかったぜ」

 

 どうやら、ミーヤを利用しようと思いついたのは、この狐目の口だけ男ウィンザーのようだ。しきりに他の男達が「さすが兄貴だぜ」とか何とか言ってるから、こいつがこの詐欺団のリーダーなのだろう。全く、人を隠れ蓑にして、その上小さな子供から金をだまし取るだ〜? お天道様に向かって唾吐いているのと一緒だろうが! そこへ直れ!って叫んでやりたい。ミーヤの怒りの気が今彼女が立っている樹木に移ったらしく、樹が風もないのに大きく揺れだして来た。


 「おい…なんか変じゃねーか? さっきから風もねえのに、木が揺れてんだけどさ……」

 「おいおい。そんな事でルディはお子様だな。まだ怖い魔女とか信じてんのかよ。あれはお伽噺だ。そんな魔女とかその辺にいるわけないだろ? 大体、魔法を使えるのは王宮でも王族と近衛隊の騎士の一部だけだって言うぜ」


 ほー良い事を聞いた。

 にやりと人の悪い笑みを浮かべたミーヤは、樹から噴水に移動すると水をぱちゃぱちゃと跳ねさせた。もちろん男達にはミーヤの姿は見えるわけない。最初はルディとか言うそばかすだらけの頬が赤い少年をバカにしていた男達は、水音を聞いて身体を凍らせた。普通に考えてもミーヤがやっている事は、ホラーだからね。勢い良く水がウィンザーの顔にかかると、男達は声にならない叫び声をあげてその場に腰を抜かした。噴水の水が一気に空中に持ち上がると人の姿を形どった。その姿は昨日のミーヤと同じ姿。


 「「「「「うわーーーーー!!!」」」」」


 逃げようとした男達は噴水の周りに植えられていた樹木に、行く手を遮られた。樹木から風もないのに葉っぱが舞い、それが次第に人の形を象る。


 「「「「「うわーーーーー!! でたーーーー!!!!」」」」」


 後少しか。土の方を指差すと、地面にひび割れが出来、そこから土ぼこりと一緒に何人もの土人形が出て来る。それぞれの手には剣を持たせた。

ついイタズラ心が出てしまって男達を懲らしめる前に失神させてしまった。


 「ありゃー。ちーっとやりすぎたか?」


 ちょびっとだけ、ほーんのちょびっとだけ罪悪感と言う名の良い子ちゃんが出て来たよ。でも、そんなのコイツ等の自業自得だよね。うんうん!そう自分に言い聞かせるとミーヤは次々に特性『クモの糸』で彼らを一人残らず縛り上げた。良い事を思いついたミーヤは口を弧の形にして微笑んだ。


 ざわざわと樹木達がミーヤに教えてくれる。こいつらの傍迷惑な悲鳴でどうやら人が来そうだ。身体をまた透けさせるとミーヤは空へと飛んで行った。

 

 「あんた達、どうしたんだい?」

 「一体何があったんだい?」

 「何なんだい? このヘンテコな糸は? ベタベタするしナイフも通さない」


これでは埒があかないと警備兵を呼びに行くもの、残って彼らの世話をする者にわかれた。ぱちぱちと頬を警備兵から叩かれ、漸く目を覚ましたウィンザー達は自分達が物凄い数の人間に囲まれている事を知ると、即座に顔を青ざめさせた。


 「おい!どうしたんだ? 一体何があった?」


 警備兵の声掛けにウィンザーが第一声に放った言葉は、ミーヤに全ての罪を被せるものだった。

 「黒髪の男に狙われたんだ!!」

 「そうだ。俺達はあの恐ろしい詐欺師に身ぐるみを剥がされたんだ」

 「あれは恐ろしいヤツだ」

 「俺達は、殺される…」

 「この国も滅ぼされるぞ…」


 尋常ではない男達の言い方に警備兵も顔色を失いはじめた。彼らの周りに居た黒山の人だかりも一歩、また一歩と徐々に後ずさって行く。それを見たウィンザー達は顔を青ざめ始めた。

 

 「俺達の言う事を信じないのかよ」

 「俺達がウソを言ってると思ってんのかよ」


 彼らの言葉に応えるように口を開いたのは、さっきまで親身になって彼らの事を心配してくれていた警備兵だった。

 

 「お前達が口を開く度に、さっきから鼻が伸びているんだよ。知らないのか?」

 「え?ううわわわあああ!!なんだこりゃあ?!」


 怯えるように自分の顔をぺたぺたと触りだすウィンザー達は、自分達の手足が木の人形になってしまっている事に気がついた。


 「うわああああ!!!!」

 「魔女の呪いだ!!!」

 「俺達が悪かったよ!!」


 ようやく彼らは自分達の罪を認める供述をし始めた。だが、彼らがウソを着く度に元の人間の身体に戻り始めて来たところが一瞬にして木に変わるので、役人達も彼らが全ての罪を認めるまで城の地下牢へと放り込むことにした。そうしてそれから三日も経たずに、この話は 詩吟歌人達によって国中に広まって行った。

 ビーツ達のところへ無事戻って来たミーヤは、ビーツから何も騒動は興していないだろうなと聞かれたが、無言で微笑むに止めた。次の日、城へ向かうビーツ達は街中で新しいお伽噺を耳にする事になる。

 

 それは人を騙して金を巻き上げていた男達の前に一人の少年がやって来た。彼らはその少年が持っている金の杖に目を付けると、彼に空を飛べる魔法を教えてやるとウソをついた。少年は男達の魂胆などわかっていた。騙されるフリをしてはみたものの、最後には自分の魔法で空へと飛んで行った。 飛ぶ前に少年は彼らに二度と人を騙さないようにと誓わせたが、男達は聞く耳など持ってはいなかった。彼らは自分達をコケにした少年に全ての罪を被せた。これで役人にも掴まる事などないだろうと高を括った男達は、笑いながら巻き上げた金の勘定をしていた。そんな彼らの前にいつかの魔法使いの少年が現れた。彼は全ての精霊を味方につけると男達に魔法をかけた。


 そこまで話を聞いていた子供達は口々に物語の続きを推理し始めた。


 『じゃあ、悪い事をした人達はどうなるの?』『やっぱり魔法使いが食べちゃうのかなぁ?』

 

 続きを教えてと強請る子供達に詩吟歌人は、風の囁き、水の音などを楽器で表現しながら、子供達を眺めた。ごくりと唾を呑む子供達に囁くような小さな声で魔法使いが彼らにかけた魔法を口にした。


 『ちがうよ。木の人形になっちゃうんだよ』


 ウソを吐く度に鼻が木の枝のようににょきにょきと伸びてしまう。最後には彼らがついた嘘で自ら身動きが取れない、木の人形に変わって行くと言う話を聞いた子供達が一斉にぼくはウソを吐いてないよと何度も言っては、自分達の鼻が伸びないかと心配していた。


 街角でその詩吟歌人の語る物語に耳を傾けたビーツ達は、終始無言でその場を去った。言いたい事は山ほどあるのだろうが、ここで思わず口を開いてしまっては、詩吟歌人が語っていた問題の魔法使いが、今大欠伸をしている貧相な少年だとバレてしまう。

 


 


 「……ミーヤ……つかぬ事を聞くが、あの詩吟歌人が語っていた魔法使いと言うのはお前だろ?」

 

 ビーツの言葉にミーヤは首を傾げて微笑んだ。以前ビーツはミーヤから聞いたあるお伽噺に今回の事が酷似している事に気がついた。右の眉をあげたビーツだったが腹を抱えて笑い出した。眉をハの字にして心配そうな顔でビーツを見ているミーヤによくやったと褒めると毛むくじゃらの大きな手でミーヤの髪をくしゃくしゃにした。

(だって、あのままだとウィンザーとルディ達はもっと多くの人を騙すからね。なら彼らが一番困る罰を与えれば良い。自分のウソで自分を追いつめるそんな究極の罪)


 ウィンザー達は反省したのかどうなのか、その後の話は誰も知らない。ただウソを吐いたり人を騙したりすると、魔法使いがどこからともなくやって来て魔法をかけると言う話が隣の国まで広がったと言う。




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