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おはよう、新世界!③

いつもありがとうございます!

 「ちょっと待ってくれ。所有者がいないってどういう事だ?」


 素っ頓狂な声を上げた俺を不思議そうに見つめるフィエラ。ま、好意的に解釈して、って話ね。客観的に見るなら氷のような眼差しを俺に向けるフィエラってとこかな。

 そのフィエラが放った言葉はあまりにも信じがたく、俺の認識との乖離が激しすぎた。まずは一つ一つ確認していくしかないだろう。


 「…私にも解りません。正直な所を言うと、記憶が抜(・)け(・)落(・)ち(・)て(・)い(・)る(・)のです」


 「抜け落ちている?」


 「何者かがこの大迷宮を築き、私を創った──それは間違いないのですが、その何者かに関する記憶が全く無いのです」


 「なるほど…?」


 「所有者が現れたと、私の執務室に通知が来た際には期待しました。大いなる創造主が再臨したのかと。忘れてしまった記憶を取り戻すことができるのではないかと。ですが…」


 おやおや?なんで俺に向ける眼差しを更に冷たくするんだい?俺の知っているテンプレ通りなら「大いなる創造主様…!」って言ってウルウルする所じゃないの?「ですが…」ってなるハズないよね?


 「まさか貴様のような卑劣な盗人だったとは…!この場所に何処から入り込んだ…ッ!!」


 「ちょ、ちょいちょい待て待て!」


 

 いきなりブチ切れてるんだけど!?いや、俺、所有者です!正式な!ってか盗人?どういう事!?

 焦る俺を他所にフィエラが俺に向けた手、その前には巨大な魔法陣が完成していた。

 

 正直に言おう。メッッッチャやばい。フィエラは総合Lv75。確か職業(クラス)は行政官Lv30、会計士Lv30、調整官Lv30。ガッツリ頭脳ビルドだから直接戦闘力はそうでもないが、それは同じ総合Lv75ならばという話だ。

 フィエラのステータスはINTが130ちょっと。ビルドを戦闘用に切り替えれば(もう切り替えてるんだろうけど)、Lv70程度の純戦闘職相手でもギリギリ渡り合えるだろう。

 対する俺は総合レベルも職業レベルも1。要するに余裕でワンパンって訳だ。

 ま、フィエラが本当に俺を殺す気ならね。

 魔法陣を前にして俺は腕を組んで仁王立ちする。



 「おい、俺に巫山戯るのは止せと言ったのにオメーも随分巫山戯た真似をしてくれてるじゃねーの」


 「貴様、死にたいようだな!?」


 「いや死なねーじゃん。大層な魔法陣だけどそれ、お前は発動できないだろ?」


 「………!!」


 「岩系統極大範囲攻撃魔法、《巨岩隕石群》。大元素術師が使える岩系統範囲攻撃魔法で最高の攻撃力と範囲を誇るが、消費MPは2500。対してお前のMPは2300。MP不足で発動不可能だ……違うか?」


 

 俺がソムニア・アトラスで歩んだ10年間を舐めるんじゃないよ。全職業のスキルは0.1秒あればモーションやら魔法陣やらから見切れるようになってんだわ。ゴミ職業(クラス)で純戦闘職と戦うにはPSで職業差を埋めるしかないからね。それに俺の迷宮にいるNPC達のステータス、職業も当然頭に入ってる。

 俺が総合一位になれた理由の一つは知識量が多いからだ。その辺に転がってる攻略wikiよりも詳しく、かつ精密な情報が俺の脳内に叩き込まれている。その知識量だけは誰にも負けない自信があるんだよ!

 

 ──とは言えこれは賭けだ。そもそもこの世界は俺の知ってるソムニア・アトラスと少し違っている。フィエラのMPが2500を超えていたら話は終わりだ。ジ・エンド。死ぬ。


 「フン、苦し紛れにハッタリか?じゃあ死ね…!」


 あ、終わった。MP2300超えてんですか。マジですか。


 


 が、しかし。次の瞬間、フィエラの前に展開していた魔法陣は消え失せ、代わりに彼女は深々と頭を下げた。



 「数々の非礼をお詫びいたします。試す様な真似をした事、お許しください」


 「……?あ、おう…」


 


 ッッッぶねーーー!!!耐えたぁぁぁあ!

 いやーマジ、死ぬかと思った。フィエラったら演技が上手ね。消し炭にされるかと思ったわ、ガチで。


 

 「一つ質問をさせてください。私のステータスと職業(クラス)は分かりますか?」


 「総合Lv75。STR54、VIT110、AGI61、DEX141、INT133、WIS186、SPR157、LUK102。職業(クラス)は行政官Lv30、会計士Lv30、調整官Lv30。【隠蔽の指輪】で本来ステータスは解析不可能。これでどうだ?」


 「……ではもう一つ。貴方が私の創造主ですか?」


 「そうだ。そしてこの『終夜回廊』の所有者であり創造者だ」


 「では、第九関門の守護モンスターは?」


 「エクリプス」


 「…本当に、貴方なのですね」


 「なんだ、まだ疑ってたのか?」


 「当然です。一体どういう理屈か、この迷宮の所有者であり私の創造主でもあるにも関わらずあまりにも弱すぎます」


 「それはまあ…そうなんだけどさ」


 「私の《解析(アナライズ)》で見る限り、貴方はLv1と出ていますが…これはステータスの偽装ですか?」


 「残念ながら違う。本当に俺はLv1なんだよ、悲しい事にね」

 

 「しかしそれでは辻褄が合いません。そのように脆弱な存在がこの迷宮を創造する事など不可能です」


 「まあ待ってくれ。俺も今の状況を把握しきれていないんだ。一旦場所を移して話さないか?」


 「わかりました。であれば、戦略会議室へ行きましょう。全幹部を招集します」


 「ああ、それがいい」


 「では領域転移で…」


 「待った。すっごく言い辛いんだけど、領域転移、使えないわ…」


 あっ、やめて。そのゴミを見るような眼差しで俺を見ないで。そんなに眉間に皺を寄せたら美人が台無しです!


 「ハァ……。歩いていきましょうか」


 「ごめん…」


 フィエラは特大の溜息をかまし、くるりと反転して歩き出した。俺はそのフィエラについていくしかない。

 しかし執務服って凄いピチッとしてるからボォン!の部分が歩く度に揺れていてなんと言うか、神秘的だ。

 俺がボケっとそんな事を考えるとフィエラにギロリと睨まれた。


 「…何か?」


 「イエ、ナンデモナイデス」


 後ろに目でもついてるの?それとも心が読めるとか?いやはや、恐ろしい。


 

 「そう言えばお名前を伺っても?」


 歩きながらフィエラが振り返らずに尋ねてくる。


 「スパインだ。人間族の男性で、25歳。趣味はゲームで、歴代彼女は2人。中学の時に1人と高校の時に1人。よろしくな」


 「そこまで聞いていません」


 「さいですか」


 「貴方は何処からこの迷宮に入り込んだのですか?貴方程度では侵入など到底出来ないと思うのですが」


 「それは俺にも分からん。気付いたら所有者復帰室にいて、まあ今に至るって訳だ」


 「それ以前の記憶は?」


 「あるにはあるが、まだそれを言うつもりは無い」



 実はゲームにログインしようとしてたら使ってたキャラクターに転生しててさ〜…なんて言えるわけがない。言ったところで相手にされないのは間違いないし、ただでさえ低そうな俺の株がさらに下がってしまうだろう。 


 そうこう言っている間に着いたようだ。フィエラが前に立ち、戦略会議室の扉を開く。

 そこには錚々たるメンバーが揃っていた。

 

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