幹部会議①
今のところ不定期更新です。
更新日決めた方が良いってわかってるんです、わかってるんですけど…
戦略会議室。中央に配置された円卓は会社の会議室と比べるとずいぶん豪華で、周りに置かれている椅子も社長椅子のようなものばかりだ。それぞれの大きさが違うのは、その席に座る人物の体格を考えたものだからだ。
もちろんこれらは専用家具として俺が創りました。俺は内装までしっかりこだわりたいタイプなんでね。別に椅子が均一のサイズだろうが会議室が質素だろうが、強さとはまったくもって直結しないのだが、そういった細部にまで拘ってこそ、真にゲームを愛していると言えるのではないだろうか。
え?その割に所有者復帰室はずいぶん質素だなって?
あそこは内装の編集できねーんだよ。出来たら当然バカほど豪華にしてるにきまってる。そこに金をかけるのは無駄だと分かっていてもやりたくなっちゃうのがゲーマであり逆張りでもある俺の性ってもんだ、編集不可で本当に助かったぜ。
「いつまでそこで立っていらっしゃるのです?早く座っていただかないと会議を始められないのですが。――あぁ、ご起立しながらの参加をご所望でしたらそれでも結構ですけれど?」
「あ、あぁ、すまんすまん…」
いかんいかん、ボーっとしていたようだ。しかしそんなちょっと呆けたくらいでフィエラさん言いすぎじゃないですかね?
俺は円卓の一番奥、というか円卓から少し離れた場所に鎮座する一際豪華な席――この場合玉座とでも言ったほうが良いか――に座る。
すると、部屋の照明は徐々に落ちていき、明るかった室内は薄明かりに照らされるのみとなった。それと同時に扉のあった場所にプロジェクターが展開し、ダンジョンの全体図が映し出される。
「ではこれより、緊急の幹部会議を始めます。本日の議題はすでに見当がついている方もいらっしゃるかと思いますが―――この迷宮「終夜回廊」の所有者様がご帰還なされた件についてです」
あ、会社の会議さながらに進む感じなんですね。ソムニアのころは別にガチ会議してたわけじゃなくて、迷宮防衛でどの守護者をどの関門置くかとか、NPCをどういう行動方針にするかとかの設定をする場所だったはずだ。こうやって会議しているところを見ると、改めて転生したんだなぁと感じるよ。
フィエラはその後、一通り現在に至るまでの経緯を説明した。その間、フィエラの発言を遮るようなバカ――通称「クラッシャー」がいないのはさすが幹部ってとこか。いやあ、会社での会議は大体途中でヤジが入ったりするからウザくてしゃーなかったんだけど、こうもスムーズだと助かるね。
一通りの説明を終えたタイミングでフィエラが質疑応答の時間を設けたが、ここで手が上がらないのはフィエラの説明が巧かったからだろうな。疑問の出そうなところを予め潰してたし。
それこそ”バカ”のいる会議だと敢えて突っ込みどころを残した上で質疑応答を行うことによってバカが分かりやすいようにしたりもするんだけど、それをしないってことはここにいる幹部たちは相当優秀なんだろう。いやはや、社会人として尊敬しますわ。
「さて、では質問もないようなので本題へと進みます。まずはこの者――スパイン殿をこの迷宮の所有者として認めることに異議がある方、挙手をしたうえで理由を述べてください」
満場一致で異議なし―――とはならんよなぁ。分かってはいたけど、自分が手塩をかけて育てたNPCに拒絶されるってのは中々ツラいもんだ。
手を挙げたのは3人――ザルハイト、セルネイン、ティルネカ。
「ではまずザルハイト殿、お願いします」
フィエラの指名に応え、ザルハイトは俺に鋭い視線を向ける。
「理由は一つ、弱すぎるからです。組織において上に立つ人間は常に強くあらねばなりません。ましてや組織のトップともなれば武力、知力、人間力、それらすべてに於いて最も秀でていて当然です。しかし見たところその者からそのすべてを感じられません」
額から生える黒く捻れた角。顳顬から顎に向けて走る一筋の古傷。真紅の長髪は背中まで伸びており、瞳は人間のそれではなく、邪悪と表現するに相応しい。
ザルハイトは若い魔族の男性。年齢は確か300歳くらいにしたはずだ。魔族の年齢は人間に換算すると約10分の1なので、実質30歳くらいかな。
ソムニアでは外征指揮官として愛用していた、ゴリゴリの武闘派だ。
外征指揮官は迷宮外での戦闘を指揮するだけでなく、迷宮内でも遊撃部隊として迫り来るプレイヤーを迎撃してくれる。だからとっても使い勝手が良かったのよ。
「なるほど。ではセルメイン殿はどうですか?」
「ほぼザルハイト殿と同じ意見です。少しだけ違うところを挙げるとすれば、私が求めているのは対外交渉能力、ということでしょうか」
「と言いますと?」
「現在の終夜回廊の状況を鑑みると、全盛期の繁栄を取り戻すには対外的なアクションが必要になるでしょう。その際にこの迷宮の最高権力者である所有者様に交渉能力がないと遅れを取ってしまう──いえ、良いように利用されてもおかしくありません」
ザ・商人。恰幅の良い体躯、白髪混じりの頭髪、ふくよかな笑み。彼こそが終夜回廊における交易商人、セルメインだ。ソムニアでは彼に資源を預けることでそれを諸外国と取引して別の品に、あるいは預けた資源を倍倍に増やしてくれる俺の大事なお財布だ。
迷宮運営にはとにかく資金・資源が必要だ。だからこそセルメインはかなり優先的に育成した記憶がある。商人系のスキルをありったけ上げた──ちょっとゲスな方法で。
え?どうやったって?いや別に変な方法ではないんだよ。ただ、ほとんど戦闘スキルも持たないセルメインを外国に捨ておき、僅かな資金を持たせて徒歩帰還命令を下す──これを繰り返しただけだ。
それによってセルメインは都度各地で資金調達の必要性が出てくる。戦闘スキルが乏しい彼は兎に角交渉を重ね、様々な所で経験値を積んで帰ってきてくれる。
帰ってくる度に
「ふう、大変な旅路でした…」
というセリフを何度聞いたか分からない。あの時はごめんな、セルメイン。可愛い子には旅をさせよって言うじゃないか。許しておくれ。
「分かりました。では最後になりましたがティルネカ殿、いかがですか?」
「儂は職人として認められん者を敬わんぞ!小僧、貴様黒魔鋼で剣でも打ってみろ!それが出来れば認めてやるわ!」
チッ、頑固ジジイめ。腰には工具帯を巻き、額には保護ゴーグルを当て、全身を作業着に包んでいる小さなジジイ──ティルネカ。セルメインと同じく見ればわかるほどにザ・親方だ。鍛治、建築、罠の補修など何でもござれの大工匠である彼は少し気難しい。というか職人ビルドのNPCは何故か全員性格が気難しくなってしまう。運営め…。
「言葉遣いにはお気をつけください、ティルネカ殿。さて、他に意見のある方はいらっしゃらないようですし、スパイン殿……各々の意見に何か仰りたいことがあればお伺いします」
ふう、俺の番か。まあとにかくここで全員を納得させなきゃ始まらない。やれるだけやってみるとしよう…!
「ああ。順々に答えていきたいところだが、言葉ではどうにもならないのはお前だな、ティルネカ。お望み通り、後で工房に行くから先に行って炉を暖めておいてくれ」
「フン、もう準備は出来ておるわ!」
「いいや、まだだ。炉の温度が低いだろう?7000℃だ。そこまで温度を上げろ。」
「…!!バカめ、どうやってそこまで温度を上げる!」
「フィエラ、プレイヤードロップの魔石は今いくつ貯蔵されている?」
「…現在約8億3000万個ですが」
「よし。ならそのうち1000万個だ。1000万個を炉の中に突っ込んでくれ」
「「!!!?」」
「早く行け、ティルネカ。火を見ていないと爆発して工房区が消し飛ぶぞ?それとも出来ないか?」
「…ッ!出来るに決まっておろうが!」
そう言うとティルネカは会議室から姿を消した。
「さて、工房の方が限界を迎える前にさっさと話を終わらせよう」
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