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今世と前世と罪と罰  作者: 月迎 百
番外編
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番外編 藤本さんの憂鬱

番外編第2弾!!

藤本さんが山室さんと同じ聖治大に行ったことが気になっていたんですよね……。

『さおりんの恋』と同じく3000字越えの読み切りです。

楽しんでいただけたらうれしいです。


「ねえ、次の授業も一緒だよね! 

 一緒にランチしない?」


 声を掛けてきた女子。

 断る理由もないけど……。なんか、気になる。

 私からは声を掛けないタイプだ。


 同じ高校から聖治大に進んだ子はいるんだけど、文学部は私ひとりで。

 もしかして、若宮さんがいるかもと期待してたんだけど、彼女は教友大に進学していた。

 望徳大のオープンキャンパスで知り合った若宮さん。

 なんとなくお互い惹かれ合うように声を掛けあって、その後、若宮さんがトラブルに巻き込まれて、井上くんと助けたことから仲良くなって……。

 友人達の受験お疲れ様でした会(打ち上げ?)に呼んでくれて、井上くんは同じ東政大に進学する子がふたりいて喜んでたけど、聖治大はここにもいなくて。

 でも、私はここで親友に出会ってしまった。泉学院大学(女子大)の松井典子ちゃん。何と源氏物語好きで、初対面だというのに十二単の色について語り合ってしまうほど、同じ趣味の持ち主だったのだ!

 彼女とはのりちゃん、しずかちゃん(私の名前は藤本静なので)と呼び合うほど親しくなった。


 聖治大に入学して二週間。

 なんとなくお互い探り合いの時期は終わり、私も挨拶したり話したりする子はできたけど……って感じ。

 そこへランチの声を掛けてきた女子。今まで特に接点がなかった。

 彼女、他の子といっしょにいなかったっけ?

 とりあえず断る理由もないので、誰だったかな? と思いながら「いいよ」と答える。

 歩きながら聞いた名前に私は後悔した。


「私、山室美帆っていうの。泉学院出身、よろしくね!」


「え、あ、私は藤本です。都立校の……」


「えー、共学だったんだ! なのに、なんか、おとなしい!

 下の名前は?」


「静、静御前の静です」


「えー、斬新な自己紹介!

 藤本静……、なんかごつそうな名前だね。

 柔道とかやってそう」


 どういうこと?

 私はつい「いいよ」と言ってしまったことを、また後悔した。


 それ以来、山室さんはなんか私の隣に来ることが多くなり……。

 それは連休明けの5月になっても変わらなかった。


「私、女子校出身だから! なんか女子のそばが安心するのよ!」


 大きな声で女子校出身をアピールする山室さん。

 近くにいた男子達が声を掛けてきた。


「山室さんって、女子校だったの? どこ?」


「えー、興味あるの? 泉、スプ女よ」


「スプ女なんだ! じゃあさ、若宮さんって、どの大学に行ったか知ってる?

 こいつがさー、ファンだったのよ」


 声を掛けてきた男子が、隣のメガネ男子の肩をグイっと引っ張った。


「え、トモちゃん! 仲良かったんだー。教友へ行ったよ!」


 仲が良かった!? それにそんな個人情報をぺらぺらと……!?

 私は『この人、信じられない!』という顔で山室さんを見てしまった。

 山室は『すごい』と思われてると勘違いしたみたいで、さらに照れたように話を続けた。


「トモちゃんって、スプ女で『月の宮』って呼ばれてて、まあ美人だったのよ」

 

 へー、それは初耳。『月の宮』なんて素敵。朋佳だからかな?

 最初に声を掛けてきた男子が聞いた。


「若宮さんって彼氏いるの?」


「えー、いないと思うけどー」


「じゃあさ、合コンでも食事会でもなんでもいいから、セッティングしてよ!」


「えー、もうしょうがないな。頼んでみるけど、あんまり期待しないでね」


「サンキュー! 良かったな、お前!」


「おい勝手に!」「いいじゃん、ここで知り合いになるチャンス!」「あー」

 わちゃわちゃしている男子達。男子もなんだかなー。


「じゃあ、トモちゃんに連絡ついたら話してみる!」


「頼んだー!」


「じゃあ、静ちゃん、行こ」


 何故に突然の名前呼び!?

 しかし、私にここに残る理由もなく……。

 私は無言で立ち上がり、教室を出るまで一緒に歩いた。


「これで、今日の授業おしまいでしょ!

 買い物付き合って欲しいんだけど」


「友達と約束があるんだ」


「えー、誰と?」


 誰とでもいいでしょが!


「高校の時の友人。女子大に行ったから」


「女の子ね……。じゃ、楽しんできてね!」


 男子だったら、ついてくる気だったのだろうか? と気がついたのは別れてからだった。



 典ちゃんと一緒にいたのは、若宮さん、麻岡さん、渡辺さん、伊藤さん、飯塚さんだった。


「女子会だね!」


 若宮さんが左手を頬に添えて笑う。

 ん、指に……、薬指に、指輪!?

 私のガン見に気づいた若宮さんが、自分の左手を見て、赤くなった。


「あ、その、正式にお付き合いを始めた人がいて……」


 私は思わず、これまでの山室さんの話をしてしまった。まあ、典ちゃんにも相談するつもりだったし。

 若宮さんの名前を出して、男子の気を引いてるのも、やっぱり許せなかったし。


「静ちゃん大変そうだね。山室さんは泉でも強烈だったから」


 典ちゃんが心配してくれる。伊藤さんも言った。


「うん、そのうち藤本さんを下に見るような感じで利用してくるから、気をつけて」


 山室さん、あなたいったい、泉で何しでかしてたの!?


「あ、聖治に乗り込んでばらしてやりたいわ。

 トモちゃんを攻撃して、自分が孤立したこととか。

 仲良し!? 何言ってんの!」


 渡辺さんが言った。

 飯塚さんがにやりとした。


「その男子達、利用できない?」




「山室さん、まだ若宮さんと連絡つかない?」


「あー、ごめん、彼女も忙しいみたいで!」


 男子と山室さんが話を始めた。山室さんは私の隣に座っていたからなんとなく巻き込まれる。


「そっか、じゃあさ、今度、普通にみんなで食事しない?

 えっと、藤本さんもどう?」


「えー、静ちゃん、どうするぅ?」


 私は山室さんを無視して、男子の方を向いて言った。


「いいよ。でも、私の友達を連れて行っていい?

 私ひとりじゃ、つまんないし」


 男子はびっくりして頷いてた。

 山室さんも「え、私も行くけど……」と呟いた。

 男子と連絡先を交換して、日時が決まったら教えてもらうことにした。

 山室さんと別れて、歩いていたら、追いかけてきたメガネ男子に声を掛けられた。


「藤本さん、あのさ? 山室さんと仲がいいんだよね?」


「仲良しじゃない。山室さんが隣にくるだけ」


 私はやっとはっきり言えた。



 もう、この後の展開は話さなくてもわかるよね。

 私は仲の良い友達として、若宮さん、渡辺さん、伊藤さん、飯塚さんを食事会(酒は飲めないけど、居酒屋)に連れて行ったのだ。

 典ちゃんと麻岡さんは同じ店の別のテーブルで伊藤さんの彼のソウヤくんと井上くんと麻岡さんの彼の東大の相原くんとこちらを見学していた。


 私と若宮さん達がわざとちょっと遅れて到着すると、山室さんが顔面蒼白になった。

 後で聞いた話だと、早めに来て、実は私に意地悪されてると涙ぐんで話していたそう。

 ……そりゃ、顔面蒼白にもなるか。

 でも、その時はそんなこと知らなかったから、ちょっとびっくりしたけど。


「お待たせ! 私の友達の……」と若宮さんに紹介はバトンタッチ!


「教友の若宮と渡辺です。泉学院の伊藤に、東政の飯塚。みんな泉学院出身です。

 藤本さんとは前から友達で!

 今日はお会いできるの楽しみにしてました!」


 若宮さんがにっこりそう言うと、男子はみんなあっけに取られ、メガネ男子が呟いた。


「え? 藤本さんと友達? 山室さんじゃなく?」


「あら、山室さん!

 久しぶり!

 若宮さんや伊藤さんにまだ謝ってないよね?」と飯塚さん。


「私達、まだ、あなたがしたこと許してないんだけど?」と渡辺さん。


 そして、飯塚さんと渡辺さんが微笑んだ。

 微笑んでるのに冷たいって……。

 なんかびょおおおおっと冷たい風を感じるような微笑み。


 山室さんは「用事を思い出したわ! 失礼します!」と荷物を抱えて飛び出して行った。

 若宮さんと伊藤さんは苦笑してそれを見送った。

 聖治の男子達、4人いたんだけど……。

 大きめの個室を取ってくれていたからさ。

 結局、私達と麻岡さん達も合流して、みんなでお食事会ということになった。

 これでもう山室さんは私にもうちょっかいを出さなくなるだろう。

 はー、良かった。

 井上くんが言った。


「僕にも相談してくれればよかったのに」


 井上に相談しても!?

 そばにいたメガネ男子も言った。


「……俺に。最初に、山室さんが仲良しじゃないと打ち明けてくれたんだよね」


 ん? 

 何故に、井上くんとメガネ男子が張り合ってる!?

 若宮さんを見ると、ふふふって、笑ってた。

読んで下さり、ありがとうございました。

ふふふ、井上くんと藤本さん、これから、どうなるんでしょ!?

飯塚さん(ヅカちゃん)と渡辺さん(こころちゃん)が強すぎて……、好き。

番外編は第3弾まで書き終えていて、この連休中に投稿する予定です。なのでそれまでは連載にしておきます。

また、気になることがあったら、番外編書いちゃうかもです。

本編もどうぞよろしくお願いします。

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