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今世と前世と罪と罰  作者: 月迎 百
番外編
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番外編 さおりんの恋

番外編です。

さおりんが気になってたんですよね。

3話ぐらいに分けようと思ったんですけど、さおりんの性格的に分けない方がいいかなと。

なので長めの読み切りです。

どうぞよろしくお願いします。

 トモ先輩が卒業しちゃって……、なんだか寂しい。

 でも、なんだか寂しいのはそれだけじゃ、ない。

 私には好きな人がいる。

 高一の時に自然科学部と文芸部の合同の合宿の時の……、ホテルのお兄さん。

 運転手をしてくれたり、望遠鏡の使い方を教えてくれたり。


『この地域を星で活性化させることができたら素敵だと思ったんですよ』


 恥ずかしそうに話してくれた、そのなんとなく誠実そうなところに私の心はさらにきゅんとなった。

 まあ、見た目も最初からまあまあカッコいいかなとは思ってたし。

 外見から入ったって、内面が素敵だとわかれば、まあ、いいよね!? ね?


 自然科学部と文芸部の文化祭の発表で合宿のことを取り上げるので、お聞きしたいことがあるかも……と言って、お名前と連絡先を聞いた。

 ホテルの住所で、名前はホテル内 安斉仁あんざいひとしで連絡付くこと、電話でもスタッフの安斉と言えば取り次いでもらえるとは教えてもらったけど……。

 なかなかハードル高い。

 でも、ここで諦めたら、なんだか私が仁さんの連絡先狙いだけだったみたいな……。

 いい加減な気持ちで言ったみたいな……。

 それは嫌!

 本気で、あの地域とホテルとあの夜空の宣伝をしたいと、私も思ったのだから!


 スキー場の展望台での星空観察のすばらしさ。

 ホテルで行われている天体観測の親しみやすさ。

 そんなことを書いて部誌にも乗せたし、自然科学部の方ではホテルの紹介コーナーまで作った。

 そして、ホテルのことを紹介したいから、パンフレットを送って欲しいと手紙を出せた。

 仁さんからは取り上げて宣伝してくれることに対してのお礼の手紙とパンフレットが同封されてて。


『地域の星空とホテルのことを紹介してくれてありがとうございます。

 どんな反応だったか、教えて頂けたら、うれしいです。』


 ということは、反応があれば、それをお返事としてまた出せるってことだよね!

 これって、文通してるってことだよね。きゃー!!


 私は文化祭で頑張って、合宿のことを話して、宣伝した。

 写真や他の部員達も一緒に話をしてくれて、星空観察のすばらしさはとてもよく伝わったと思う。

 特に保護者や家族の年配の方達から、実際に行ってみたいとのお言葉をたくさん貰った。


 私は張り切って、報告の返事を書いた。


 星空の写真の絵ハガキ(自家製)のお礼状が届いた。


『文化祭、お疲れ様でした。

 とても楽しんでいる様子が伝わってきました。

 この地域の星空の宣伝をして頂いて、本当にありがとうございます。

 ぜひ、またお会いできる時があればうれしいです。お知らせ下さい。』


 うん……、それだけ。

 うん、たぶん、お客さんからのお手紙には、きっと、こうしてお返事出しているんだろうな。

 

 私は何だか、ここで私から返事を出さないのが嫌で、年賀状を出した。

 今度はスキー場の写真の絵ハガキ(自家製)の年賀状のお礼状が届いた。


 これで、おしまいかな……。

 もう、手紙を出す理由が見つからない……。

 

 高二になって、突然、仁さんから手紙が届いた。

 春から夏にかけて、『泉学院の文化祭で話を聞いた』と直接ホテルに問い合わせが数件あったそう。

 それで、私のことを思い出したと。


『お客様が「泉学院の女の子がとても楽しそうに星空観察や天体観測のことを話してくれて、ぜひ行ってみたいと思ったんですよ」とお話しして下さって、感激しました。

 これからも、どうぞよろしくお願いします。』


 そうか、思い出した……、ぐらいなんだ。


『今年の夏は合宿が学院のクラブハウスになりました。

 私の在学中にそちらに合宿に行くことは残念ながらなさそうです。

 次の代には素晴らしかった体験を伝えるので、その時は、またよろしくお願いします。』


 私は最後のつもりでそうお返事を書いた。


 そうしたら……、また手紙が来た。


『あなたの星空観察の紹介文がとても素敵で。

 ホテルでの展示に言葉を使わせてもらってもよろしいでしょうか?』


 もう、その頃には私は純粋に私の書いたものを読んで評価してくれたのがうれしいと思った。

 なんかもう、恋とかそういうのは置いといて。というか、置いておかないと思っていて。


『ぜひ!

 使って頂けたらうれしいです』


 そう、短くお返事した。


 文化祭では星のことはやらなかったけど、植物のことをやったので、なんとなく、自然公園のことを思い出して『今年の文化祭の展示は植物がメインでしたが、このような感じになりました。』と報告をした。

 なんだか、自然公園のパンフやチラシのヒントになりそうじゃないかと、勝手に思っちゃって。


『素晴らしいまとめと発表ですね。見せて頂き、ありがとうございます。』


 自然公園の写真の絵ハガキ(自家製)が届いた。


 私はもう返事を出さなかった。



 トモ先輩が卒業して……、私は高三になった。

 忘れたつもりなのに、仁さん、あの夏の運転手さんの思い出が忘れられない……。

 自分が手紙を出すのをやめたくせに、なんだか寂しい……。



 5月の連休明け、トモ先輩やアキ先輩やマユミ先輩が学院に来て、自然科学部と文芸部の合同部活に顔を出してくれた。

 その時、私はトモ先輩の指に! 左手の薬指に指輪があることに気がついてっ!!


「と、トモ先輩!?

 結婚!? したの?」


 トモ先輩はちょっと赤くなりながら「結婚じゃないけど、約束した人がね」と言った。


「えっ? 大学で出会って、電撃!?」


 鈴永さんが叫んで。


「違う違う」と慌てるトモ先輩。


「もー、さっさと言っちゃいなよ。

 トモの相手は川上先生だよ!」


 アキ先輩が面倒臭そうに言った。


「「「「「えええええーっ!!」」」」


 クラブの全員が絶叫した。

 そしてかなちゃんがぽつりと言った。


「あー、なんかそんな気はしたんだー」


 みんな何となく思い当たることはあるぞってな顔になって。

 ちょうどその時に、川上先生が理科準備室から顔を出して。


「おーい、差し入れ!

 朋佳! 配るの手伝ってくれ!」


 朋佳!? すでに呼び捨て! まだ卒業から二ヶ月も経ってないざんすよ!

 あ、動揺し過ぎて、語尾がおかしくなった。

 それは周囲の子達も同じで……。


「川上先生、恐るべし……」「呼び捨て……、指輪……」「どういうこと? 卒業と同時に!?」


 こうして、トモ先輩は泉学院の最新の伝説になった。


 ほけっとしているとマユミ先輩がやって来た。


「さおりんの文通の方はどうなのよ?」


 こそっと聞いてきた。


「あー、何度か手紙のやり取りしたんですけど、個人的な話にはならなくて……。

 なんとなく、去年の冬で途絶えちゃいました……」


 マユミ先輩は『あら』という表情をしてから「うーん、自然消滅みたいのは……、忘れられないんじゃない?」と言った。


「その通りです……。でも……。もう思い出にすべきかな……」


「うーん、どうだろね?」


 マユミ先輩、それじゃアドバイスになってないですって!



 私は家に帰り……。

 ぼーっと自分の部屋に入った。

 机の上に封筒。

 手紙?


 取り上げて「うえっ!」と叫んだ。


 仁さんからだ!!!


『高三になられたんですよね。

 お手紙がないので、学業の方がお忙しくなったのかと気になってしまい……、手紙を書いています。

 さて、こちらの星空観察の方ですが、さおりさんの紹介文章がなかなか好評です。

 そして、自然公園では、泉学院のマップを参考に新たに環境マップを作ってみようという動きが出ています。

 お忙しいとは思いますが、今年の夏、こちらに友人かご家族で遊びにいらっしゃいませんか?

 お部屋一部屋ぐらいでしたら、何とかご招待できるように頑張ります!

 いい返事をお待ちしています。

 こちら、私のlineのIDです。もし連絡先として使えたら……。

 実はもっと早くお知らせしたかったのですが……、さすがにお客様の女子高生にとなるとお伝えするのを考えてしまって。でも、手紙のやり取りを重ねて、さおりさんとはもっといろいろお話をしたいと思っています。』


「うえぇーっ!」


 これって、これって……。


「脈あり~!!」


読んで下さり、ありがとうございます。

さおりんがどうなったか、本編で触れたいなとは思っていたのですが、無理だったので。

番外編となりました。

自然科学部と文芸部と朋佳のその後のこともちょっと書けて、楽しかったです。

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