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今世と前世と罪と罰  作者: 月迎 百
番外編
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番外編 三枝先生の休日

番外編第3弾!

都のことを書いておきたかったので。

どうぞよろしくお願いします。

「今日の仕事はこれでおしまい!」


 私はカルテを書き終え、パソコンの電源を落とし、デスクの上を片付けた。

 さあ、明日から3日間のお休み。

 明日は家のホテルの方で、今のクリスマスの装や食事のチェックと年末年始のスケジュールなどの確認を頼まれている。

 次の日は横川と加藤の結婚式。3日目は……。予定は詰まっている。


「三枝先生、お疲れ様です!」


 同僚の中里先生が声を掛けてくる。


「3日間もお休みいいですね!

 ゆっくりなさるんですか?」


 中里先生の微笑み、裏が……。


「いえ、友人の結婚式があるんです」


「ほう、12月に! ロマンチックですね」


 中里先生からロマンチックという言葉が出てきて、ちょっと意外に思いつつ答えた。


「どちらも忙しくなる年度末前に式をということになったようです。

 まあ出席する私達にとっては1日だけですしね。

 確かにクリスマスムードの結婚式も素敵ですよね」


 結局いつだって誰かしら忙しい。

 加藤が言っていた。


『タイミングを計っていると、いつまでもタイミングが取れない。

 それなら決めてしまった方が何とかなる』


 その通り。12月中旬の結婚式。

 学院の助手をしている横川にとっては、学院が冬休みに入るタイミングで、加藤にとっては……、まあ、奴はどうとでもなるか!?


「三枝先生はクリスマスを一緒に過ごす方はいるんですか?」


 中里先生が笑顔のまま、踏み込んだ質問をしてきた。

 私の、その気配を感じ取ったのか、中里先生は答えを聞かずに引いた。


「楽しんできて下さいね! では!」


 私の中に踏み込まれた小さなむかつきだけ残して……。

 気配を読むのはお互い職業柄上手だけど、そのまま引いたら、私の中のこの小さな怒りはどうすんだよ。

 私は薄笑いを張り付けたような顔で立ち去る中里先生を見送った。

 中里先生には私に言いたいことがある。でも、タイミングを計っている。計っていたら……。

 聞きたくない私もいるから、それはそれでいい。

 そう考えてしまう自分が、純粋でないことはもう嫌というほど知っている。

 泉学院で高校生達と一緒に……、あの時は何だか、久しぶりに学生の頃の自分に戻れたような気持ち良さがあって。トモちゃんに久しぶりに会えるのも楽しみ。川上はどうでもいいけどね。



 

 帝王ホテルで結婚式とは加藤、ずいぶん頑張ったね。まあ、うちのホテルでとなると、私が純粋に出席者として楽しめないと気にしてくれたのかも。


 新婦の控室に通された。

 横川はとてもきれいだった。

 柔らかい白の、上半身が細身でぴったりしたシルエットなのに、下へ緩やかに裾を長く引く布のドレープが美しい。クラシカルだけど、モダンな感じもする。それにマリアベールを合わせ、ブーケも下へ垂れるようなデザイン。

 装身具は金で統一され、柔らかく上品だ。


「うん、素敵! 加藤喜んじゃうね」


「ありがとう、都」


 横川は微笑んだ。心の底から。もう、篠原のマネをしていた横川はいない。


「おめでとう。あなたは幸せになるわ」


「都にそう言われると信憑性が増すわ」


 横川と私は顔を見合わせ、笑う。

『信憑性が増す』というのは加藤がよく言う言葉なのだ。

 そこへ、トモちゃんとアキちゃんとマユミちゃんと、川上がやって来た。


「わあ、紗栄先生、素敵!」とマユミちゃんが言って、「きれい……」とトモちゃんが息を飲み、アキちゃんが「すっごく素敵!」と微笑んだ。

 川上は「うん、よく似合ってるよ」と言ってトモちゃんを見る。

 どーせ、トモちゃんはどんなのが似合うかとか考えてるんでしょ。アンタは!?


 トモちゃんは私を見て微笑んだ。


「都さんの濃いグリーンのドレスも素敵。

 あ、アクサセリーが金でというのがお揃い?」


 確かに、冬ということを考えてアクセサリーを金にした。横川とお揃いか。


 トモちゃんは渋い感じのレッド、アキちゃんは水色、マユミちゃんはピンクとみんな華やかなドレス姿だ。

 横川はうれしそうに、まるで女の子みたいな笑顔になると3人とキャッキャと写真撮ってた。



 横川と加藤の結婚式がチャペルで始まった。

 加藤は明るいグレーのタキシードで、確かに白って感じじゃないから、いい感じ。

 もうふたりとも幸せそうで……。私もニンマリしてしまう。


「都、すげー口元緩んでる」


 川上に言われて、睨む。

 誰のせいで拗れたと思ってるんだ、こいつ!


 式が終わり、私達は花びらと米をふたりに掛けて祝福した。ライスシャワーって奴ね。

 大人っぽいふたりが顔を寄せ合って笑い合っているのは……、見てていい気持ちだ。


 披露宴会場では私と川上、トモちゃんとアキちゃんマユミちゃんが同じテーブルで。


「何? この川上の両手両足に花な状況は!?」


 私の言葉にトモちゃんが笑った。


「都、お前も『花』なのか?」


 川上の言葉に私は目を剥いた。こいつはー!!


 披露宴も進み、ブーケの贈呈ではミニブーケが3つ出てきて、トモちゃん、アキちゃん、マユミちゃんが呼ばれた。

『私が私らしくなれるきっかけをくれた3人』と紹介された。

 うん、そんな話を聞いた。

 私や加藤が言っても……、篠原のマネをし続けていた横川が、この3人と出会って、まあトラブルになったことをきっかけに、自分を取り戻せた。


 3人はブーケを手に顔を赤くして戻ってきて……。ホテルスタッフがさっとテーブルに来てブーケ用のボックスに入れると預かってくれた。


「ブーケ貰うなんて初めて!」とマユミちゃん。

「私だって!!」とアキちゃん。

「すごいね。ブーケってあんなにガッチリ作ってあって、重いんだね」とトモちゃん。

 トモちゃん!? なんか感想が……。

 川上は笑ってる。まあ、川上にしてみれば、トモちゃんが何したってかわいいわよね……。



 披露宴が終わり、出口で加藤と横川に挨拶する。


「素敵な式と披露宴だった! おめでとう!」


「都にそう言ってもらえると安心する」


「うん、信憑性が増す」


 加藤の言葉に私と横川は顔を見合わせて笑った。


 みんなを送り出す加藤と横川の姿を見て、私はちょっと涙が出そうになった。

 うう、よく一途に待ち続けたよ。本当、偉い! 加藤!!



 ホテルのエントランスにはソウヤくんとスナオくんがちょっと緊張した顔で迎えに来ていた。

 ソウヤくんとスナオくんは車の免許を夏に取ったそうで、迎えに来ることは聞いていた。

 アキちゃん、マユミちゃんとはここでお別れ。見送る。

 さて、川上は酒飲んでたね。どうするのかな?


「川上とトモちゃんはどうするの?」


「今日はここに泊る予定」


 川上が何でもないことのように言って。


「トモちゃんも?」


「当たり前だろ」


 いや……、当たり前じゃないし。


「私も泊まって、トモちゃんと夜通し語り合おうかしら?」


 川上が露骨に嫌な顔をする。川上の前にいるトモちゃんは川上の表情に気づかず「明日、おふたりを空港まで見送る予定なんです」とにこにこして言った。


「……よろしくね。私は明日は……、野暮用でね」


「野暮用?」


 トモちゃんが首を傾げると川上がトモちゃんをグイっと抱き寄せて「俺からもよろしくって」と言った。

 気づいたか。




 次の日、私は黒のパンツスーツに化粧気のない顔で車を運転していた。

 一番の親友だった小平こだいらの墓参り。

 小平のことは加藤や横川は知らない。小学校の同級生だったから。卒業して、中学入学式にはもうこの世にいなかった。


「小平、来たよ。

 昨日、友人が結婚した。幸せそうだった。

 うれしいのに、寂しい気持ちがするのはなんでだろうね。

 あんたが生きてくれれば……。いや、それは……、こんな後悔は私らしくないか」


『都らしくないって?』


 小平の声が脳裏に蘇る。


「そうか、私らしいっていうのも、もう呪縛か。

 気づかせてくれて、ありがとう」


 小学生なのに大人のように微笑む小平の姿が浮かぶ。


『都には……、俺の分も生きて欲しい』


「それも呪縛じゃない!? あんたはサッサと逃げたくせに!」


 そう呟いて花を墓に供えた。もう声は聞こえない。


 小平と私は似ていた。でも、小平は諦めて死を選び、私は怒り生き続けている。


「私は……、もう少しこの怒りと付き合い続けるよ。

 こんな私でも頼りにしてくれる人も助けられる人もいるから。

 いつか燃え尽きる時、小平の所へ行くから」


 そう言うと、心が凪のように穏やかになる。


「うん、そうしたら、今度は兄弟にでも生まれ変わろう。

 それで、今度こそ、小平を助ける」


『待ってる』


「待ってて」

読んで下さり、ありがとうございます。

本編の主人公若宮と川上は前世が兄妹で、今世は他人になることを祈り(川上が)、結ばれました。

三枝と小平は逆です。

三枝(都)は小平を家族として守りたいので、来世は兄弟になりたいと祈っています。


都は身体は女性ですが心はどちらでもない。なので、比較的、生きやすかったのかもしれません。ただ、怒りは色々感じています。特に女性の味方をするとはありましたが、困っている人がいたら男女関係なく手を差し伸べる人です。

小平は……、いろいろ考えたのですが、たぶん性が逆転していたことに苦しんだ子なのだと思います。どちらだったのかまでは書きません。考えたら、どちらもあり得ると思うので。もう都にとって、性別は気にしない関係なので。

書き終わってから、ああ、朋佳と川上。都と小平。対になってるんだと気づき、ちょっと不思議な因縁を感じました。

今の時点、書いている番外編はないので、ここで再び完結にします。

もし、また、番外編が浮かんで来たら、書くかもです。としておきます。

長い間、お付き合いいただきありがとうございました。

読んだ記念にぜひ評価と感想など頂けたら、すごくうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。


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