6 血の刃
どうぞよろしくお願いします。
長めになっちゃいました。
俺は振り向いた。中学棟の出入り口の階段の上に天堂がいて、こちらをひたと見つめていた。
朋佳は模擬店の巫女衣装を着ていて、とても目立つ。
「天堂が中庭に! 見つかった。俺と朋佳は地下に逃げる」
電話に向かって叫び、電話は手に持ったまま、朋佳の背へ手を回して一緒に講堂のエントランスに急ぎ駆け込み、下への階段へ急ぐ。
奥の短大棟に逃げると、匠海くんが隠れているそばへ行くことになる。
電話は通話のままにした。切っておくと、心配した都がまたかけてくることもあるだろう。もしその時が隠れていた時ならば……。
階段を下りるところで朋佳はエントランスを振り返り叫んだ。
「ついてきてる!」
俺は朋佳を促して階段を下りる。周囲の安全のためには俺達がおとりのように逃げ続ける方がいいのかもしれない。
地下には駐車場があり、他の棟との連絡通路にもなっている。いざとなれば車の通路を使えば外にも出られる。防犯カメラで入ってくる不審者は常時警戒しているが、こちらが逃げ出せば異常な動きと察知して警備も動いてくれるかもしれない。
とりあえず、駐車場まで降りるとすぐに端の方へ行き、中ほどの車の陰にふたりで身を潜めてしゃがみこむ。
朋佳が小さな声で言った。
「どこか、大人がたくさんで取り押さえられそうなところ」
「無理だ、生徒も、小学生も来ているんだぞ!」
「でも、このままじゃ!」
俺は決心した。電話に向かって囁く。
「駐車場で取り押さえる!
加藤、来てくれないか?」
『了解!
それと横川が学校の警備担当の先生に知らせてくれてる。
地下駐車場にって!
私と加藤も警備員と行くわ!』
都のしっかりした声に少し安心する。
「加藤と都が警備員を連れて来てくれるそうだ。
それから横川が警備担当の先生に駐車場と連絡してくれたそうだ」
「じゃあ、何とか駐車場に引き留めとかないと!」
朋佳が自分への指令と思ったようなやる気のある表情になってしまい、俺は焦る。
「俺が出るよ」
「ダメだよ!
私の方が目立つ格好しているし、駐車場内逃げ回るから!」
そう言うと、姿勢を低くしたまま離れていき、途中から少し立ち上がるように車の後ろを移動して行ってしまう。
俺はスマホを手に慌てた。
切ることはせずに、慌ててポケットに突っ込み、朋佳と天堂の立ち位置をしっかり把握して、いざとなったら飛び掛かる決心をした。
天堂が駐車場内に下りてきたようだ。
講堂の階段の方から声が響いた。
「おーい!
出て来い! 雅と匠海も来てるんだろう!
カレンダーに書いてあったからな!!」
やはり天堂家に不法侵入していたのか……。
天堂はゆっくりと駐車場の中を見回しながら進んでいるようだ。
立ち止まり、俺とは反対の方に気を取られている。
朋佳が動いているようだ。
無理するな。
俺から遠ざけようとしているのか!?
天堂は立ち止まり、ぐるっと周囲を見回して、薄く笑った気配がした。何を考えている?
どうやら、地下駐車場に、他の生徒から引き離しておこうというこちらの魂胆がわかったのか?
天堂は中学棟の方へ歩みを進め始めた。
わざと、誘い出そうとしている!?
でも、行かせるわけにも!
その時、天堂が立ち止まり、講堂側の方向を見ている。
上手くいったというような悪意ある笑いを浮かべているのが確認できた。
朋佳が飛び出したのだろう。
「雅と匠海はどこにいる?」
天堂の低い声が響いた。でも、その中に自分の思い通りに朋佳が飛び出してきたことのうれしさが滲んでいるのが気色悪い。
「もう帰りました。
はるみ伯母さんのチケット盗んだんでしょ!
天堂家に不法侵入して!
伯母さんにも伝えたから!
警察に通報が行くかもよ!」
朋佳の声が響く。
うん、講堂側の方にいるな。
まだ距離はある。
俺の方が天堂の近くにいる。
「……もう、いいんだ。
結局、私より下の奴が講師になった。
もう、私は、帝慶ではやっていけないし、この分野でも先頭には立てない。
地方の小さな大学でなら……、講師や准教授くらいにはなれるかもしれないが……。
もう無理だ。おしまいなんだ。
お前と川上が邪魔しなければ……」
低く途中から朋佳に話しているのではなく、自分の中に籠るような、呪いの念を垂れ流しているような……。駐車場に響いていく。
講堂の階段の方で足音がした。都と加藤達だろう。
天堂の後ろの階段からは体育の西村先生と教頭と田中先生が来た。
西村先生は戦力になるな。
教頭と田中先生は……。
俺と加藤と西村先生でならいけるだろう。
天堂はじりじりっと駐車場の真ん中あたりに移動した。
両方を警戒しているような素振りだ。
隠れている俺には気づいていない。
俺は車の影から飛び出したと同時に朋佳が叫んだ。
「ナイフ持ってる!
気をつけて!」
ナイフ!?
こちらからは見えなかったということは右手!?
そう思った時は右手で天堂の左腕を掴んだ時だった。
右手にナイフが見え、左手で右手を押さえに行くが揉み合いになり、ナイフの刃が俺の左手の甲に当たった感触とともに切り上げられ、甲から腕にかけて切られてしまった。
思ったより血が出て、俺は天堂から右手を放すと、左手を庇うようにして後ろへ距離を取ろうとしたが、思ったより出血と痛みがひどく、足がもつれた。
大きく尻もちはつかなかったが、その場に座りこんだような形になってしまい、両腕を支えに使うことができず、すぐに立ち上がれない!
天堂のナイフの刃が俺の血で赤く濡れている。
こんな時に前世で妹が自分自身に傷をつけてまで血の刃にした剣の刃を思い出した
読んで下さり、ありがとうございます。




