1 前世の妹
最後の10章スタートです。
川上先生視点です。
どうぞよろしくお願いします。
初めて朋佳に出会った時のことを今でも思い出す。
教師になって2年目。初めてクラス運営に関わることになり、副担任となった中一のクラスにいた。
今までに前世の妹を感じるような女性に出会ったことはある。
特に高校で出会った篠原は『かなり近い』と思った。
でも、『近い』であって、本人ではない……。
もう……、妹とは会えないのかもしれない。
恐怖を感じた。
ひとりで生きることは辛過ぎた。
そんな時に目の前に現れた朋佳。
まるで光と共に舞い降りてきたように感じた。
まだまだ子どもで、壊れてしまう、いや、壊してしまった妹の……子どもの頃を思い出させる。
まだお互いが幼かった頃は、兄妹ということで触れ合って抱き合って、お互いの存在を、温かさを、呼吸を、鼓動を、感じることができたのに……、それが許されなくなり……。
そんな『妹』が俺の前でまた無垢な笑顔を見せていた。
俺は川上健司として今世に生を受け、恵まれて育てられたと思う。
体格や知性にも恵まれ、学びたいことは与えてもらえる環境に育った。
ただひとつだけ、前世でお互いの命を壊し合うように愛して、次の世に他人として出会えるように罪に引きずり込んだ……妹に出会えていないことだけが、俺の中で暗く静かに俺自身を焼いていた。
『かなり近い』と思っていた篠原に裏切られるように振られ、俺はさらに性格が歪んだと思う。もう妹には会えないのかもしれないと自棄になり、寄ってくる女の子と言われるがままにつきあってみたこともある。
だが、思いはないのに愛している真似事はできない。
付き合っても付き合っていなくても、付き合うことを望んだ彼女の方が常軌を逸していく。
何故、諦めるということをしてくれないんだろう。
彼女達を俺はかなり冷めた目でみるようになっていた。
若宮朋佳、それが今世の愛する人の名だった。
前世では血がつながった兄と妹であったために結ばれることはなく、俺が壊した妹。
今世でやっと出会えたのに、教師と生徒という禁断な関係で、年齢も10歳違っていた。
少しずつ少しずつでいい。
若宮に近づいて……、そして時が来れば、思いを打ち明ければいい。
ずっとそう自分に言い聞かせて、見守っていた。
若宮は少女から美しい女性へと成長していく。
俺は前世と同じことになるのではと恐れた。
前世では天人の力を持つ姫として、妹に求婚する者が絶えなかった。俺はそれを断り、握り潰し続け、妹を囲い込んで、そして……。
誰にも渡したくなかった。ずっと俺のそばに置いておきたかった。
どうぞよろしくお願いします。




