37 文化祭 日曜日②
どうぞよろしくおねがいします。
「トモ! お客さん!」
食券担当のアキに呼ばれた。
私は強張った顔で振り返る。
その表情でアキは何かを察したみたいで、慌ててこちらに来た。
「どうした?」
「天堂さんが文化祭に潜り込んでるかもしれないっ!」
「えっ? 匠海くん達来てるよね!?」
「どうしよう! 電話かけて来ていい?」
私とアキの様子に飯塚さんが来た。
「どうしたの?」
「さっきの男の子、匠海くんとママ、実はDVの元お父さんと離婚してて、その人が文化祭に来てるかもしれないって……」
飯塚さんが私の手を取った。
「わかった!
後は任せて!
すぐ行ってあげて!
みんな! トモちゃん緊急事態!
さっきの男の子が困ってるらしい!」
飯塚さんの一言で「行ってあげてー! こっちは大丈夫!」「うんうん、大丈夫だよー!」なんて声が掛かった。
「ありがとう、みんな!
ごめん、できるだけすぐ戻る!」
私は早足で階段の方へ向かいながら川上先生に電話を掛ける。
すぐ出てくれた。
『どうした?』
「文化祭のチケット!
はるみ伯母さんの分が消えてるの!
天堂さん、天堂家に入ったってことない?
合鍵持ったままとかさ。
だから、匠海くんと雅さん、安全なところに! どこ向かう?」
『え、ああ、なら短大の方の会議室の方に!』
「了解! 私も向かう!」
私は階段をととととっと急いで降りて、高校棟を出て中庭の端っこを取り抜けて講堂のエントランスから短大棟の方まで走り込むと、エントランスを見回す。まだ匠海くん達はいない。
「トモちゃん!」
呼ばれて振り返ると講堂の入り口に、都さんと加藤さんだ!
「巫女さんが走って行くの見かけて!
どうしたの!」
「文化祭チケット!
伯母が家に置いてたのがなくなってるの!
天堂さんが持ってったってことあるかも!
だから、匠海くんと雅さんを匿うためにここで待ち合わせしてて」
「私、横川に連絡する」
都さんがスマホを取り出し通話を始める。
加藤さんが会議室の方を見に行ってくれて、戻って来た。
「まだいない」
「みんなこっちには向かっているけど、今、中庭だって!」
都さんが教えてくれて、エントランスを戻って入口から中庭の方を見ると、みんながこちらに向かって歩いてくる!
一番後ろを川上先生が守るように周囲を見ながら歩いている。
私を見つけた匠海くんが走りだす。
私も駆け寄り、合流。
母が、はるみ伯母さんが不安そうな顔をしていた。
このふたりには話したみたいだけど、匠海くんと雅さんには伝えてないのかも?
すぐに都さんと加藤さんが4人を守るように短大の方へ誘導してくれる。
私は川上先生と後ろから周囲を見回しながらついて行く。
「天堂、大学、クビって?」
「都さんが聞いたらしい。
天堂さん、連絡つかなくなってるらしいし」
その時スマホが震えた。電話だ。
見ると相原くん!?
「もしもし!」
『トモちゃん!
天堂いたよ!
自然科学部の方に!
マユミちゃんとソウヤは隠れた!』
「相原くんも気をつけて!
アキは?」
『これから高校の方へ向かってアキと合流するから!』
「匠海くん達は短大の方に逃げ込んだから!」
『良かった! 気をつけて!』
「天堂さん、中学棟の自然科学部の方にいるって!
相原くんはアキがいる高校棟へ。マユミとソウヤくんは自然科学部あたりで隠れてるみたい」
「っと、警察に……、篠原達への接近禁止出ているんじゃなかったか?」
「都さんに聞けばわかるかな?」
川上先生は都さんに電話を掛けてくれているみたいだ。
私達は電話を掛けていたため、講堂の入り口に立ち止まっていた。
その時、中学棟から出てきた天堂さんと目が合った。
なんか……、虚無感を感じる目だ。
「いたっ!」
私は川上先生を引っ張る。
「中学棟から出てきた!
どうしたら!?」
川上先生が慌てて振り向き、電話に「天堂が中庭に! 見つかった。俺と朋佳は地下に逃げる」と言って、通話のまま、講堂に入り、地下への階段を下り始めた。
私は振り返り「ついてきてる!」と叫んだ。
地下へ下りれば、駐車場があり、そこを抜ければ中学棟と大学棟の連絡通路に出られる。
でも、逃げ続けていても仕方がない。他の人が見つかれば何かされるかもしれない。
読んで下さり、ありがとうございます。
次の話でこの章はおしまいです。




