30 あなたのことが好き
どうぞよろしくお願いします。
川上先生は呻くように言った。
「ああ……、思い知らされてるよ」
「そうか……」
そう言って都さんは立ち上がりドアの方へ行った。
「トモちゃん」
「はい?」
私は振り返るような感じでこちらを見ている都さんを見た。
「ごめん、今夜、私、別の部屋で寝るわ」
は?
「川上、今日だけだからね。
明日はトモちゃんしっかり休ませて帰したいから、今日だけね……」
えっ?
「じゃあ、おやすみ」
都さんはドアを閉めて部屋を出て行ってしまった!?
な、な、な、なんで!?
こう、みんな、私の意見というか、意思とかそういうのを確認してくれないで……。
川上先生が私が座る出窓の方に近づいてきて隣に座った。
「……綺麗だ。光の精みたいだ」
その言葉を聞いたのは……、あれ?
私の意識は前世の記憶に飛んだ。
上から降り注ぐ星の光。
まだ小さい頃だ。
ただ無言で光っている、冷たく無機質に光り続けている無数の星が怖く感じて、私は兄様に抱きつくように擦り寄った。
温かくて、安心。
『光の精みたいだな』
まだ幼さの残る少年である兄様が笑って、長い私の髪を指で梳いて撫でる。
私と兄の身体はぼんやりと光を放っていて。
天人の特性らしい。この世界にふたりだけの天人の力が発現した兄妹……。
あの時と同じように髪を一房すっと滑らせるように手に取る。
今の私は少し髪が伸びて、肩ぐらいだから、前世の時のようにはいかず、はらりと落ちた。
そのまま、じっと見つめられて……。
私は無言に耐え切れなくなって「そういえば、匠海くんと雅さん、元気ですよ」と言った。
ちょうど夏にハガキのやり取りをしたところだった。
キャンプとプールに行ったことが書かれていた。
「……篠原とは、地方に行く時、会って話をしたんだ。
すごく反省してたよ。朋佳に悪いことをしたって。
自分では大学三年の時に戻れる、その同級生達と同じ場所にいられると思っていたけれど、社会はそんなに甘くないって。
仕事を探した時に痛感したみたいだな。
でも、篠原には匠海くんがいる。
都も横川も加藤も俺も……、篠原と匠海くんを助けようと動いたことに感謝された。
朋佳や他の高校生達も。
天堂と篠原の魂胆っていうか、天堂は計算って言ってたな……。それをわかっていて、朋佳と匠海くんを守るために来てくれたことを感謝してた。
俺もそうだ……。
天堂と比べられて振られるっていう……。
まあ、頭にきたけど、篠原がそう選択したならっていう、どこかホッととしている気持ちもあった。
だけど不幸になれと思っていたわけじゃなくて、変にずっと気にはなってたんだと、今回のことで気づいたよ。
今回のことが終わって……。
みんな、新しい一歩を、幸せになるために踏み出したって感じがした。
ずっと胸の中で燻っていたものが消えた。浄化されたような。朋佳のおかげだよ」
「いや、私のおかげってことは……」
私はどう受け取っていいのか困ってしまう。
確かに匠海くんの成長を助けたいとは思ったけど。
天堂さんと雅さんがなんか不穏で、離れようと考えていたし、結局、アキ達は『私』を助けようと天堂さんのマンションに一緒に来てくれた感じだし……。
それぞれ動いていた目的が違う……。
「……それに、朋佳が少しでも嫉妬を感じてくれていたって、知った時、俺は……」
あ、前に車の中で言った奴か。
確かに、それは感じてた。
でも、言ってないけど、紗栄先生が現れた時の方のインパクトというかもやもや具合いの方が実は大きかった。
うーん!?
「……結局、私はあなたのことが好きだったんだと思います」
私の言葉に川上先生が一瞬だけ痛ましそうな表情をした。
「それは……、前世の記憶?」
「うーん? 前世から……、今も……」
読んで下さり、ありがとうございます。




