第3話 笑う看板
「こ、こんな感じかな」
ミールルアは、どこから持ってきたのか、私とそっくりな看板を私の隣に置き、茂みに戻った。
流石に、『ハヅィマルィ村→』とは書いていなかったが……それくらいなら魔法で何とかなる。
……私は、また魔法陣を出して、『ハヅィマルィ村→』の表示をミールルアが持ってきた看板に移した。
「……マルィさんは、そんな事も出来るんですね……」
ミールルアは、私の魔法を、食い入るように眺めていた。
……興味があるのだろうか。
私も、看板に文字を移し終えたら、看板を私がいた場所に設置し、素早く茂みの方へ除けた。
看板が二つあったら紛らわしいのと、動く看板を通行人に出来るだけ目撃されないようにするためだ。
ここは、あまり有名な村ではないのか、ぽつぽつとしか人が通らない。
それは幸いだった……だかしかし、人が通る事には変わりない。
避難しておいた方が良いだろう。
「あっ……マ、マルィさん……どうしてこちらに?」
ミールルアは、私からちょっと距離を置いた。
『いや、看板が二つあったら紛らわしいのと、動く所を見られたくなかったから……』
「あっ、で、ですよね……」
ミールルアは何故か照れた様子でそう答えていた。緊張しているのだろうか。
しかし……これからどうすればいいのだろうか。私はふとそう思った。
王国に行くべきなのだろうか。
……国王が居なくとも、何か手がかりはあるかもしれない。
……いや、しかしそれなら間違いなく、ミールルアの力を借りなくてはならないだろう。
……ああそうだ、ミールルアに聞いてみればいいじゃないか、王国の事を。
あるかないかくらいは分かるはず。
『ミールルア』
「はっ、はい! なんでしょう?」
『その……エニリコニ王国って知っているか……?』
エニリコニ王国、そう、そここそが、私が昔住んでいた場所……。
何となく、聞くのを避けていたのかもしれない。国王どころか、懐かしい王国がないなんて、信じたくなかっ……。
「知ってますよ?」
『え?』
私は思わずない耳を疑ってしまった。
知っている……? 王国を……?
いやいや、王国はかなり大きかった。今あったとしたら、そりゃどこに住んでいても知ってはいるはずだ。
……もしくは、きっと歴史とかで、今はきっと無い……。
「お、王国に行きたいんですか?」
……私は再びない耳を疑った。行きたいか聞くという事はまだあるという事!?
『う、うん……でも、今行っても多分……』
まあしかし、今さっき会ったばかりの少女に、まだ王国に確実に手がかりがあると言いきれないうちに、王国に連れて行ってくれだなんて頼むのは申し訳ない。
私は、話をぼかす事にした。
「わ、私、実は王国の方から来たんです」
『何!?』
が、ミールルアは王国から来たらしい。
……ここがどこなのかは分からないが、王国とハヅィマルィの村は近いのか……?
観察に来れるくらいの距離ではあるのか……?
「実は、私、転移の魔法が得意で……マルィさんの存在が気になって、毎日観察に来ていたんです」
『ええっ!?』
それなら、すぐに、王国に行ける……?
い、いや、本人しか移動できない可能性も……。
「マ、マルィさんも、一応連れて行けますけど……」
『ああ、じゃあ、お願いしてもいいかな』
私に表情は無いが、満面の笑みのつもりでミールルアにそう伝えた。
こんなチャンスはもうない、ここで逃したらまずいかもしれない。手がかりがない可能性なんてもうどうでもいい。
私は、ミールルアに王国に連れていってもらう事にした。
「じゃ、じゃあ、準備するので……待っててください」
『うん』
こうして私は、ワクワクとした気持ちで、王国を楽しみにしたのだった。
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