その27
清流旅館の大広間では、「ミステリーツアー 四神の謎を巡る」についての説明が行われていた。
参加客、男女18人の大学生と高校生が席についている。
中には“サクラ”の顔も見受けられる。
ホワイトボードの前で説明をする翔太。その横にはアシスタントの坊城がいる。
「このツアーは、清流旅館で何年か前に見つかった“詔”の謎を解いていただこうというものです。参加者の皆さまには、ここ清流旅館においでいただく前に、“詔”に記されていたスポットを回っていただき、そこで集めたヒントを持ち寄っていただきました。
さらに、これから、静岡の神社、3か所を回っていただきます。これらも“詔”に記されていた場所です」
翔太が言うと、坊城が続ける。
「お手元の地図をご覧ください。赤い丸印がその神社です。4つの班に分かれていただき、回って下さい。団体客だと動きが制限されてしまう場所もありますので、4、5人ずつのグループで動いていただきます。それらの情報をここに持ちより、各自の推理をご披露いただきたく存じます」
「“詔”の中には、解読できたら青龍神が池に現れると記されています。その姿が見られるかどうかは、皆さんにかかっています」
「それでは、グループ分けのクジを引いていただきますので、順番にお願いします」
坊城がクジの入った箱を差し出すと、参加客たちは箱に近い客から順番にクジを引いて行った。
* * *
ツアー客が清流旅館に集まる2週間前、華織の家では、蒼也と恭介が居候をし、恭介の言うところの強化合宿が行われていた。
とは言っても、二人が華織からアクセサリー作りを習うのに大半の時間が使われ、特段それ以上の授業がされていたわけではなかった。
ただ、恭介にとっては、その作業がことのほか気に入ったらしく、せっせとブレスレットやネックレスなどを作り上げていった。
「恭介くん、器用だね。すごく上手にできてる」
蒼也が褒めると、まんざらでもなさそうな恭介。
「細かい作業は嫌いじゃないんだ」
「そのブレスレットは美智香ちゃんにあげるのかしら?」
華織が聞くと、はにかんだ笑顔になる恭介。
「石でアクセサリーを作る作業には、その人の特性がよく出るものなの」
「どんなふうにですか?」興味深げに聞く蒼也。
「蒼也くんの作り方は翼くんに似てるわね。石の意味合いを考えて論理的に並べる。大きさや色合いの選び方もとても整理されてる感じがするわ」
「確かに、翼くんと同じだ。石をバーッて並べて、何かぶつぶつ言いながら並べ替えていって、数式が解けたみたいに“解けた!”って叫んでつないでいくんだ」
「恭介くんは奏子ちゃんと同じね。感覚的に選んでいって、出来上がったものを見ると、なぜだか、とてもよく出来ているの」笑う華織。
「まりりんは、おしゃれ感重視で、紗由ちゃんは作らずに食べてるだけなんだ」
今度は蒼也が笑う。
「でも僕、あの食欲はよくわかるよ。僕もああなること、よくあるから」
「蒼也くんも大飯ぐらいなの?」
「脳みそをフル回転させると糖分使いきっちゃうんだよ。人格がいくつも入っていた時は特にそう」
「大変だよね…食費」
「恭介くん。大変なのはそこじゃないと思うわ」
困り顔の華織を見て、蒼也がクスッと笑った。
「そうですね。蒼也くんの場合は、すごい研究者で、自分が作った人工知能プログラムを自分の中に搭載させたわけだから…」
「本当。すごいわ。でも、ご本人が知らない形のものまで入れられるなんて…多治見には、同レベルの力がある誰かがいるのかしら」
「…僕にはわかりません」
「そうよね。あなたには、わかりようがないと思うわ」
華織は微笑むと紅茶を飲んだ。
* * *
ミステリーツアーのグループ分けが済んだ後、4班担当の龍と奏子が客4人を前に、挨拶をする。
「4班を担当します西園寺です」
「四辻と申します」丁寧に頭を下げる奏子。
「えー、多治見天人さん、多治見蒼也さん…お二人はご兄弟ですか?」
「従弟なんです」天人が答えた。「彼は幼い頃からアメリカ生活だったので、実はあまり合ったことがなかったんですけど」
「偶然てあるんだなって思いました」笑う蒼也。
「そうだったんですか。えーと、こちらが西園寺華音さん、高橋悠斗さん」
「西園寺…」天人がつぶやく。「ご親戚なんですか?」
「はい。遠い親戚なんです。私もさほど会っていないので…似たような人たちが集まって、面白いですね」微笑む華音。
「そうですねえ。よろしくお願いします」
プリントを配る奏子。
「こちらが資料になります。回る前に、事前に集めた材料を元に話し合いをするのも可能ですが、どうしましょうか?」
「あまり先入観なく、新たなスポットを回りたいかなあ」天人が言う。
「僕もそう思います」賛成する悠斗。
「では、このままスポット巡りにしましょう。玄関に15分後に集合にいたします」
龍が言うと、皆うなずいてその場は散会となった。
華音は部屋を出る時、龍に囁いた。
「あやつり人形ね、彼」
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