表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/29

その18

 奏子が和歌菜と部屋に着くと、中では紗由、龍、翔太、翼、充、史緒が華織の周りに集まり談笑していた。


「奏子ちゃん、お久しぶりね」

 微笑む華織に丁寧に頭を下げる奏子。

「おばさま、相変わらず神出鬼没でいらっしゃるのね」

「楽しそうな場所を探し出すのが得意なの」うふふと笑う華織。


「でも、おばあさま」紗由がハッとしたように言う。「こんなに一度に抜けたら、お見合いメンバーが変に思わないかしら」

「大丈夫よ」微笑む和歌菜。「大地と真里菜がホスト役として前もって説明してあるから」

「前もって?」首を傾げる紗由。

「ええ、そうよ。本来、あなたたちは人数のうちには入っていなくて、でも、それぞれに久我の人間と会う用事があったから、少し早めに来ていただいて、30分程飛び入り参加ということにしてあるの」


「ああ…。だから、いつもの倍のスピードで、龍んとこに、おなごが押し寄せてたんですな」納得する翔太。

「皆さん、一気におうちに電話されてたみたいで…今度の総裁選も確実な総理の孫たちに気に入られて来いと、ご家族に言われたんじゃないかしら」

「両家の子女は大変ですなあ」心底同情するかのように言う翔太。


「でも、紗由ちゃん、すごいスピードであちらこちら動いていたから…」思い出し笑いをする史緒。

「姉小路くん、紗由を追いかけまわしてたのに、挨拶もできなくてお気の毒だったよ」同じく思い出し笑いの龍。

「あれを見てたら、姫に近づこうとしていてもひるむでしょうなあ」頷く充。


「恭介くんが姉小路さんに“えいっ”をしたようですし…やたらとやってはいけないと言ったのに…」奏子が部屋を見回す。「そういえば、恭介くんは…?」

「ボーイさんの予備人員を配置してなかったの…」申し訳なさそうに言う和歌菜。

「そろそろ、皆さんのわがままに切れてそうな…」

 史緒が心配そうに言った時、ドアがバタンと開いた。


「不良物件、回収してきました」

 憮然とした表情の真里菜が現れた。

「何だよ! 僕は紗由ちゃんを守ったじゃないか!」

 拳を握る恭介。


「あーのーね」

「恭介くんのおかげだよね。うん。ありがとう」

 真里菜の怒った顔をチラリと見ながら、紗由がとりあえず礼を言う。

「だからって、うちの大切なお客様たちに不愛想な態度は困るんですけどっ」


「例の多治見くん以外、みんな好き放題なんだよ。カクテル一口飲んで、やっぱりこれは嫌だとか、ガトーショコラはないかとか、瓶じゃなくてジョッキ持ってこいとか…ここは居酒屋でもケーキ屋でもないんだぞ!」

「…正論ね」真里菜がうなずく。「でもまあ、それでいいのよ。お坊ちゃまとお嬢ちゃまのカップリングだけじゃなくて、ちゃんとした人を見極めるための場だから」


「うん。そういうこと」大地が部屋に入ってくる。「仕事で付き合って大丈夫そうな人を見極めてるんだ」

「多治見くん以外、全員やめたほうがいいよ」まだ不満げな恭介。

「ところで恭介くん、多治見くんはそんなに他の人と違ってたの?」紗由が聞く。

「途中から、ずっと一人でベランダに出てて、静かにしてたから手がかからなかった」

「確かにそうだったわ」

 自分が感じた蒼也の変化を皆に話す奏子。


「匂いも何度か消えたり出たりしてたし…」

「僕も妙に手のひらがビリビリする時があった」大地が言う。

「僕の石も一度だけ大きく反応した。でもその後、石が眠っちゃったんだ」

「マドモアゼルが持っているのは、翼君の石の兄弟石だよね?」奏子に聞く充。

「ええ。普段は片方ずつ働くようになってるの」

「そう。リスクの分散」笑う翼。


「その石が眠っちゃうってことは、よほど疲れたか、今後に備えてチャージか、どちらかやな」翔太が言う。

「なーんか、気味が悪いわ」真里菜が顔をしかめる。


「今までの話をまとめると、人格が一つでないのは確かですわね」大地を見つめる史緒。

「そうだね」

「つまり、白也くんと黒也くんが一つの体の中にいるってことね。蒼也くんじゃなくて」

「姫。ちょっと滑ってますぞ」

「えへへ」マカロンを口に歩折り込む紗由。


「総研のことだから、人体実験ぐらいやりそうだな」龍がつぶやく。

「自分ちの子供にか?」驚く翔太。

「彼、養子よ」和歌菜が言う。

「人さまの子なら、何にでもつかうというわけでござるな」


「奏子が一瞬感じ取ったSOSは、そういうことなのかもしれないな」

「でも翼くん」真里菜が言う。「それだと白を助けて黒をやっつけるみたいなことになるわけ?」

「どちらも助けてちょうだい」

 微笑む華織を、一同は困惑の眼差しで見つめた。


  *  *  *



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ