遠征前日
とうとう遠征試験前日になってしまった。
俺にしては珍しく、朝早くから修練場に来て戦闘訓練に励んでいる。まぁ戦闘訓練と言っても1人で魔道具の性能テストをしているだけなのだが。
色々試して見てわかったことなのだが、4枚のカードにはそれぞれ1つずつ魔法が刻印されているらしい。思念感応方式の魔道具で、なおかつ魔力の注入も必要がないことから予想はしていたが、周囲の魔力を自動で集めてチャージする仕組みのようだ。
恐ろしく高性能な魔道具ではあるが、その分リスクもある。
それにしてもこの魔道具は俺専用に作られたとしか思えないな。魔力を注入しなくても良い魔道具はとても便利だが、これだけ重いリスクがのしかかるのであればプラマイではマイナスだ。
まぁ、俺にはこれしかないのでどんなリスクとも付き合っていくしかないんだが・・・
「ヤァ、新入生君。早いねぇ、随分と勉強熱心じゃないかぁ」
俺が1人で黙々と魔道具の使い勝手について悩んでいると、見たことのない男が話しかけて来た。こんな朝早くから修練場に来るなんて、こいつもまたソーマ同様に頭のネジが2、3本とんだ戦闘狂なのだろうか。
口ぶりから上級生だと思われるその男は、腰にそれはもう高そうな宝剣を差していた。
「随分立派な宝剣を差していますね、もしかしてこないだソーマに負けた人?」
「おやぁ?これはまた随分と有名になっていしまったようだねぇ。たった1度の負けがここまであとを引きずるなんて初めてだよぉ」
そういえばクラスの連中が盛り上がっていたな、序列3位の上級生を相手にソーマが勝っただのなんだのと
しかし、初対面で随分と痛いところを突いてしまった俺にこの反応。懐の深い人物ではあるようだ
「先輩の方こそこんな朝早くから鍛錬とは勉強熱心ですね」
「まぁねぇ、下級生に負けてそのままにしておくわけにはいかんでしょうよぉ」
どことなく嬉しそうにそう呟くセリス。
もしかしてこの男・・・
「もしかして先輩は、下級生に公衆の面前でボコボコにされることに喜びを感じる系の人ですか?」
「ちっっっっげぇよ!!!!!!!!!!」
激しく取り乱す先輩。ちょっと冗談が通じない感じか?
「ところで君はなぜ修練場にぃ?聞いたところによると魔法が使えないそうだけどぉ」
「いやぁ、ちょっと珍しい魔道具を手に入れまして、使い方すら分からなかったんで性能実験に」
「それでぇ?使い方はわかったのかなぁ」
「専用の鑑定機で昨日のうちに調べておいたので、使い方はわかっていたのですが、使用にはリスクが伴うのでシミュレーターで使い勝手を確かめていたんですよ」
仮想空間構築型魔導シミュレーター
一定範囲内に結界を構築し、その結界内でのみ魔力を消費しない魔法・魔道具の擬似的な行使が可能になるという極めて大掛かりな科学分野の装置だ
科学の限界を超える為の手段である魔法の安全な行使のために科学の力が必要というのも皮肉な話ではあるが、用途不明な高性能魔道具が数多く存在するこの世界では必須とも言える
まぁ、魔道具の使用用途を確かめる為の魔道具というものがあり、発動せずともその使用用途について知ることもできるのだが、その例外となる魔道具というものがこの世には複数存在する。
その例外というのが、4000年前に英雄と呼ばれていたなんとかさんという人が才能と財力に任せて造らせたというもので、極めて強力な魔力を秘めていて現代の人間では解明できないほどの複雑な構造をしているようだが、その用途というのが、自動でトイレ掃除をしてくれるというものだったり部屋に埃がたまらなくなるというものだったり、なんとも役に立つようで役に立たない魔道具なのだ。
だが俺の手に入れた魔道具は、その例外には含まれていなかったようであっさりとその用途と使用方法について知ることができた
なので俺はこの学園の修練場にあるシミュレーターを使って、チャージされている魔力の消費なしでこの魔道具の使い勝手について確かめようとして来たわけだ
「それでぇ?その魔道具は君のハンデを克服できるような類の魔道具だったのかなぁ?」
「まぁぼちぼちですね、遠征に死にに行かななくても済むかなという程度です」
「へぇ、随分と大きく出たじゃないかぁ。遠征は君が思ってるほど甘くはないと思うけどねぇ」
・・・・?随分と大きく出た?死なない程度としか言ってないんですが・・・、遠征って、そんな死ぬ前提みたいな感じで行くものでしたっけ!?
先輩の狂気に満ちた発言に戦慄している俺をよそに、セリスは宝剣を抜き、2、3度素振りしてからこう言った。
「なんならぁ、死なずに帰ってこられるかこちらが確かめてあげようかぁ?」
本気かこの男!?学年1の落ちこぼれに対して勝負を挑んでくるとは・・・
よほどソーマに負けたのが悔しかったのだろうか。ソーマに負けた腹いせを俺でしようというのなら許せない!!
ソーマが・・・・
「いや、遠慮しておきますよ・・・、明日は遠征当日なんで今日はゆっくり体を休めないと」
引きつった笑顔でどうにかこの話を流そうとする俺に、
「遠慮しなくていいよぉ、遠征にはついていけないからねぇ、せめてもの手向けさぁ」
この先輩は1歩もひかずに親切心を押し付けようとしてくる。
押し付けられた善意は悪意と何も変わらないということを知らないのだろうか
「ホラァ、遠慮しなくていいんだよぉ。私が直々に相手をして君を鍛えてあげようというんだぁ」
「わかったわかった!わかったから、顔近いって!!!」
くっ付きそうなくらい顔を近ずけて鼻息を荒くする先輩に、俺は渋々折れた。
「じゃぁ、今日の実戦形式の訓練の授業で私と組んでやろぅ」
先輩は満足げに笑うと鼻を大きくフンッと鳴らして修練場を後にした
最近、話に詰まってきました
しばらく間を空けるとまたアイデアが湧くと思うので若干の休載に入りたいと思います
毎日少しずつ書くと話が分からなくなるのでいっきに1章の最後まで書いて今度まとめて投稿しようと思います




