期待と失望
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結局その日の放課後、昨日同様にエリナを引き連れて研究会に向かう事となった
先輩が今日は来てませんように先輩が今日は来てませんように先輩が今日は来てませんように!!
神に祈るかの如く、俺は胸中で心からの願望を繰り返す
何とかしてこの悪魔の入会を阻止しなければならない
が、しかし、研究室への道のりは刻々と迫って来ている。どうしたものかと、足りない脳みそをいくら捻ったところで良い案など浮かぶわけもなく、とうとう研究室の前まできてしまった。
どうか留守にしててくれと最後の望みを賭けて、扉をノックしてみる。
「はい」
・・・返事が、返って来てしまった orz
絶望に染まり、微動だにできない俺に代わりエリナが扉を開け放つ
「どうもはじめまして、エリナ・グライトノートです!この研究会に入りたくて来ました!」
「ん?あぁ、昨日の入会希望者か、歓迎するよ!エリナ君」
爽やかなスマイルで応じる糸目先輩。
オワッタ・・・・、オレノセイシュン・・・・
ん?昨日の?昨日俺たちが戻って来たときはもう先輩は居なかったようだが、他にも誰か来ていたのだろうか?
それとも昨日は、まだ居たのに居留守を使って居たのだろうか?
・・・少なくとも、後者は無いな。この狭い部屋には隠れる場所などない。
だとすると、エリナの他にも入部希望者が?
「あの、私の他にも入部希望者がいるんですか?」
俺と同じ疑問を持ったらしいエリナが質問する
「あぁ、いや、そうじゃなくてね、昨日帰るときに中庭からこの研究室の前の窓を見たら君たちが入って行くのが見えてね、すぐ出て来たからもしかしたら入部希望者なんじゃないかと思ってね」
「あぁ、なるほど!」
今の説明で納得した様子のエリナ
本当の事なんだろうが、なぜかこの先輩が言うと胡散臭い。もしかしたらこの部屋のどこかに監視カメラでもあるんじゃないだろうか?
「ところで、入会希望ということはこの研究会についてはもう知っているのかな?」
「い、いえ、リクトに誘われたので来たのですが、この研究会についてはよく知らないんですよね・・・」
・・・!?この女!今さらっと俺に誘われたとか言ったぞ。
この栄養をおっぱいに持ってかれているせいで回復魔法以外に取り柄の無いクソ女を、俺が好き好んで連れて来たとか思われると困るんですけど!?
「あはは、そうかい、なら先ずこの研究会の詳細について説明するところから始めようか。」
そういうと糸目先輩は、またいつぞやの”ありがたい創世記”(笑)を取り出して来てエリナの前でつらつらと読み始めた。
誰でも聞いたことのある御伽噺を長々と聞かされるエリナはこの先輩の胡散臭さに早くも気付いてしまうかと思ったが、どうやら真剣に聞き入っていたようだ。
それにしても凄い外面の良さだ・・・、自信満々に御伽噺を世界の創世記だと言い張る痛い男の話を真剣な顔で聴き続けている。この女が持てる要因はどうやらおっぱいだけでは無いらしい・・・
「分かってくれたかな?この世界の始まりの物語について。そして我らが”神の力研究会”の活動目的は、かつてこの世界を創ったとされる全能者の力について解明することなんだ。創世記を読む限りでは、全能者の力と魔法は別物らしいからね。」
御伽噺を読み終えた先輩はエリナに向かって俺ですら初耳な活動内容について語っていた。
いや違うな、入会当初に聞いた気がするが、活動しなさすぎて忘れてたんだ。
そんなこんなでエリナは、神の力研究会の洗礼(洗脳ともいう)を受け、入会1日目を過ごした。
研究会が終わった後、まだ用事があると言っていた先輩を1人研究室に残し、俺とエリナは帰路に着くため校門へと向かって、だだっ広い学園の敷地をとぼとぼ歩いていた。
「素晴らしい研究会だったわ!」
この女はもうダメかもしれない・・・。
なんの脈絡もなく突然にそう言い出したえりなに俺はそう思わずにはいられなかった。
いったい今日1日でこの女は何を見ていたというのだろう、御伽噺の読み聞かせをされてお菓子を出されて帰されただけだぞ。
まぁ確かに、保育園としてはハイクオリティであるかもしれないが・・・
「お菓子を貰えてそんなに嬉しかたのか?」
おっぱい以外は保育園児レベルのこいつからしてみれば満足だったのかもしれないと思いつつ聞いてみる
「ちっがうわよ!!研究テーマが素晴らしかったって言ってるの!」
研究テーマ?
「なんだ、全知全能に興味でもあったのか?」
全能者が世界を創造した力がウンタラカンタラとか言ってたので多分そのことだろう
「そうじゃなくて!魔法による限界を魔法以外の力で越えようとする試みが素晴らしいって言ってるの!」
魔法の限界を魔法以外の力によって超える?あの御伽噺の中にいつそんな話が出てきたのだろうか
「そんな話ししてたか?」
「直接はしてないけど、あれってつまりはそういうことでしょ?研究会で研究してるくらいなんだから、魔王を倒しうる新しい可能性を探ってるとかそういう感じじゃ無いの?」
こ、これが、イケメン補正というやつか!?
凄い、凄いですよ先輩!御伽噺の読み聞かせをしてただけなのに勝手に明後日の方向に話を深読みしてくれるなんて。
あのミステリアスな雰囲気を纏った先輩にだからこそできる高等テクニックだな、これは
この分なら、新興宗教の教祖になれる日もそう遠くは無いかもしれませんよ先輩!
「入学から2週間で俺がしてきた活動成果を教えようか?」
まぁ、教祖になるかならないかはともかく、エリナには一応現実を見せておく必要があるだろう
「へぇ、どんな成果をあげたの?」
「紅茶飲んでお菓子食べてた」
エリナの顔から称賛と期待の色は消え去り、ゴミをつつくカラスに向けるような不快指数高めの蔑みの視線を向けてきた。
いや、そんな目で見られても・・・。
得てして、現実と理想の間には大きなギャップが立ちはだかるものである。
イケメン・優男・王子という、最強のモテ男要素3コンボを決めているソーマですら、王子の王子はだいぶ早いらしいということで有名だ。以前エリナが愚痴っていたので、面白半分に俺が広めたら普段温厚なソーマが鬼の形相で殴りかかってきてボコボコにされた。
目の前にいるこの女もミステリアスな雰囲気の上級生になにがしかの期待をしていたのだろう。
初対面でよく知りもしない相手とはいえ、あの悪名高いリクトさんを研究会に迎え入れてくれるという素晴らしい人格者なのだ、さぞや素晴らしい研究に心血を注いでいるのではないかと思っていたんじゃないだろうか。
その期待を大きく裏切った責任が半分くらいしかないはずの俺は、結局帰り道では口をきいてもらえなかった。
ちなみにではあるが、学園の中庭を通り抜けるときに一応後者の方を振り返って、窓から研究室の扉が本当に見えるのか確認した。
結果は言わずもがな、もちろん中庭からは扉が角度的に見えなかった




