暴発
翌日、そんな大事になっているとは露知らず、リクトは昨日の研究会でウィードに貰った魔道具を弄くり回して使い方を調べていた。
しかし、スイッチのような物があるわけでもなく、これといって変哲のないただのカードなのだ。
まるで使い方が分からず途方に暮れていたリクトはある可能性に思い至る。
まさか、これ思念感応方式か?
思念感応方式。
それは、通常の魔道具が魔力を注ぎ込むとそれに反応して発動する魔力反応方式なのに対して、発動を意識するだけで魔道具がその思念波を自動で読み取り、所有者の魔力を吸い取って勝手に発動してくれるというものだ。
思考によって生じる思念波をオートで読み取るなどとは、そんじょそこらの魔道具にできる事であるはずも無く、この世に存在する思念感応方式の魔道具は1つの例外もなく、ある一人の魔導師によって作られた魔道具である。
その魔導師とは、4000年前の英雄”アルキメデス”。
科学と魔術の限界を人類史上唯一突破した人物。人間達は4000年経った今でも、経った1人の天才に追いつけないでいる。
しかし、伝説の魔導師が残した古代秘法が学園の引き出しの奥になど眠っているわけがない。
ということはこれは、”天才に届き得る何者か”が生み出した消失技術の再現品である可能性が高い。
「思った以上にすごい魔道具だな!魔力の外部注入が必要のない思念感応方式の魔道具なんて、完全なる即時発動が可能な、国宝級の魔道具じゃないか」
思わず家中に響くような大声で感嘆と驚愕の歓声を上げる。
・・・ような俺ではなかった。
怪しい、非常に怪しい・・・。もしそんなすごい魔道具だとしたら、製作者は今頃、世界的な科学者になっていることだろう。しかし、思念感応方式の魔道具の再現に成功したなどという話は、今まで聞いた事がなかった。
ということは、これはそもそも思念感応方式じゃないな・・・
「そりゃそうか、そもそもそんな伝説級の魔道具をポイッともらえるわけがない。何を馬鹿なことを考えていたんだ俺は・・・、魔力の外部注入が必要ないといっただけで思念感応方式だと決めつけるなど愚の骨頂、そもそも”攻撃魔法”!なんて、思っただけで魔法が発動するというのは
<ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッッッッッッッ>
突然の轟音。
部屋が吹き飛んでしまった。
突然こんなことを言っても現実味など皆無であろうが、目の前で起きた事実をありのまま具体的に、そして正確に話そう。
部屋が吹き飛んでしまった。
謎の大爆発を聞きつけ、父と家中の使用人達が集まって来る。
「な、なにごとですか!?」
「リクト!?リクト!!大丈夫か!誰にやられた!!」
何者かの攻撃でも受けたのかと、急いで防御魔法を展開させる父。
防御魔法を展開しなくても大丈夫だよ父さん、この部屋吹き飛ばしたの・・・俺だから・・・
「い、いや、ちょっ、ちょっと魔道具が暴走しちゃって」
「何、魔道具?お前が使ったのか?」
怪訝そうな顔で俺を見る父。それはそうだろう、魔力を持たない俺は、通常の魔道具を発動させることなどできないのだから。今の今まで、魔道具の暴発などさせた事がなかった。
しかし、そんな父の表情は俺が手に持っている単語カード状の魔道具に視線を向けた途端に一変する
「そ、それは!?」
信じられないようなものを見たと言った表情だ
「リクト!それをどこで手に入れた!!」
突然の父の怒声に俺は身を固くしてしまう
「せ、先輩から貰ったんだけど、研究会の・・・」
「研究会の先輩?名前は!」
「え!?なんでそんなことをk
「いいから名前を答えろ!!なんて言うんだそいつは!」
「・・・ウィード・ガルルフィン」
やはりそうかと口にすると父は足早にその場を去ってしまった。
父の怒ったような顔など見たことのなかった俺はその場に立ち尽くしてしまう。
すると、我が家の使用人の一人が俺に声を掛けてきた
「あの〜、リクト様。そろそろ学校に行くお時間かと・・・」
恐る恐ると言った口調で言う使用人に目を向けた後、時計にを見ると針はすでに8時半を指していた。
ちなみに遅刻しないための出発時間は8時20分である。
やばいやばいやばいやばいやばい!デッドライン過ぎてんじゃねぇかぁぁぁぁ!
慌てた俺は学園への道を全力ダッシュで走り抜ける。
しかし、背の低い俺はその歩幅も狭いわけで・・・、いくら全力で走ったところで10分のタイムロスを埋められる程俺の足は速くないわけで・・・、そもそも体力のない俺は学園まで全力で走り続けることなどできないわけで・・・
ここまで言ったら皆さんお察し!
俺は、遅刻してしまったわけで・・・
成績も悪いくせに生活態度まで悪いとなれば、もう救いようもないわけで・・・
なんとか遅刻したことをばれずに済ます事は出来ないかと教室の後ろの扉からこっそり入ると、教室前方の教壇にはまだ誰も立っていなかった。
フゥ、どうやら助かったようだな
俺は自分の席に着きながら、この現状に苦言を呈する
「まったく・・・、嘆かわしいな、教師が遅刻とは」
「遅刻したのは、アンタでしょうが!」
鋭いツッコミと鋭いチョップが後ろから飛んでくる。
「痛っ!なんだ、エリナか・・・、それで?なんで先生がいないんだ?まさか本当に遅刻したわけじゃないだろ?」
暴力魔女の殺人チョップを受けた頭をさすりながら聞く俺に、そんなの私が聞きたいわよと言った顔でエリナが答える
「アンタにとっては幸いなことにその”まさか”よ、今日はまだ来てないのよ、先生。良かったわね、遅刻が付かなくて」
なんだかエリナの言葉にトゲがあるような気がする・・・
昨日のことを怒っているんだろうか?
そんなに神の力研究会に入りたかったのか?あそこはお茶を飲んでお菓子を食べて、たまに先輩のうんちくを聞くだけの研究会だぞ。最初の2〜3日だけやっていた神の力とやらについての文献を読み漁る作業も今となっては過去のこと。今あの研究会は、秘密の隠れ家的なカフェと化している。
まさか、あの真面目とおっぱいと回復魔法しか取り柄のないエリナが、あんな怠惰と食欲のみが支配する廃人たちの楽園に、そんなにも入会したかったと言うのか!?
「それよりアンタ、今日こそあの研究会の会長に会わせなさいよね!」
おぉぅ・・・やっぱりそのことで機嫌が悪かったのね・・・
予想どうりではあるが、的中しても嬉しくない予想が的中してしまった。
どうやらこの女、本気で俺の安らぎの空間を奪うつもりのようだ
しかしこちらとて無抵抗で理想郷を蹂躙されるわけにはいかない・・・
宜しい、戦争だ!!
「も、もち、もちろんだよ・・・」
染み付いた習慣というのは恐ろしいもので、どうやら俺の本能は開戦前に白旗を掲げてしまったらしい
弱いものイジメなどしない心優しいソーマと違い、この女は幼い頃より俺に理不尽の限りを尽くして来た。
プロレス技の実験台にしたり、寝技の練習台にしたり。俺のことを弟のように可愛がっている節があるということを以前述べたが、本当の弟じゃないんだからサンドバックにされても困るんだけど・・・
まぁしかし、逆らえないものは仕方がないので、昨日同様に先輩に全ての希望を託すとしよう
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一方その頃・・・
王宮内、光道12星魔導師団が集う”聖天の間”にて2人の男が対峙していた。
1人は煌びやかでいかにも高級そうなマントに身を包んだ、”賢人”という言葉がよく似合う容貌の壮年の男性。
もう1人は学生服を着た、優男といった雰囲気の糸目の男。
向かい合う2人の間には、一触即発といった空気が流れていた
「なぜ、私の息子に手を出した?」
「いきなり呼び出されて来てみれば、その物言いはなかなかご挨拶じゃないか」
怒気を孕んだ声で質問するモーガン・マグナウォーカーに対して、肩を竦めて話をはぐらかすウィード・ガルルフィン。
「私の質問に答えろ!なぜ、あの魔道具をリクトに渡したんだ!!」
「まぁまぁ、そんなに怒らないでよ。”ギフト”を彼にあげた理由?そんなの簡単だよ。それが彼自身の意思だからさ!」
まるで予定調和であると言わんばかりのウィードの言葉を聞いて、モーガン・マグナウォーカーは混乱の海に沈み込んでしまいそうになる。
何が言いたいのか分からない。何がしたいのか分からない。
目の前の男が何を考えているのかが分からない。リクトが望んだ?それはそうだろう、あんな強力な魔道具をちらつかせれば、欲しがらない人間などいない。
問題なのは、なぜこの男があれほどの魔道具を惜しげも無く息子に差し出して来たかということだ。
あれはこの男にとっても、重要な魔道具であるはずだ。おいそれとあげられるようなものじゃない。
あるいは、あの魔道具は最初から・・・
そこでモーガンは、ある可能性に行き当たる。あり得ない運命率、想像し得ない世界数値。誰もが、そんなバカなと言い切り捨てる、そんな極小の可能性に・・・
「まさか、リクトは・・・」
「おや?わかっちゃったかな。だから言っただろう、”あれは彼自身の意思だ”と」
モーガンは戦慄する、目の前の男が告げたあまりにも悲し過ぎる運命に。
息子の死の運命を悟ってしまった男の、威厳と皺の刻まれた頰を涙が伝う。
伏線を張るのに必死で話があまり進みません・・・
あと、近いうちにタイトルを変えることにしました。もうちょっと受けが良さそうな感じに




