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無能貴族の卑怯無双  作者: 雁嵎寺 豪雪
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12/16

事件の始まり

今日は毎日更新の成果が出て来たのか、いつもよりちょっと長めに書けました

「ッ!!リックトォォォォ〜〜」


満面の笑みで迫って来る。巨乳の悪魔が・・・


「もぉう!捜したんだからぁぁ!どこ行ってたのよぉぉ、リクト〜」


言いながら俺の頭をワシャワシャグリグリしてくる

「くおぉぉぅぅぅ・・・離せぇぇぇ!」

必死にそこから逃れようとしてもがく俺を、まるで小動物を愛(いつく)しむかのような目で見るこの女は今とても不信な発言をした。

俺を捜していた?嫌な予感などという次元ではなかった。この女が俺に用があると言った時で俺が痛い目に遭わなかった時はなかった。ド下手クソな攻撃魔法の実験台にされたり、クソ不味い手作り料理を食わされたり、背も低く中性的な外見を利用されて着せ替え人形にされたりと、俺のことを人造人間(ホムンクルス)か何かと勘違いしている節のあるこの女に関わるとろくな事がないという事を経験則で知っている俺は、何としてもこの女の腕の中から逃げ出さなければならなかった。


まぁ、しかしながら腕力で敵うはずも無いわけで・・・、仮に腕の中から抜け出したとして逃げきれるはずも無いわけで・・・

仕方ないので大人しく抵抗を諦めた俺は、次に交渉を試みる


「まっ、待て!さ、捜してた?なんで捜してたんだ?」


「それよそれよ、それなのよ〜!リクト〜!ついに見つけたのよ〜、リクトを入れてくれる、”研究会”を!!!」


ん?何を言っているんだ、この女は?


「け、研究会ならもう入ってるけど?」


「は?」


「え?」


「リクト・・・、誰にも相手にされないからって、とうとう妄想に逃げ込むようになっちゃたのね・・・」

まるで虫けらにでも向けるような視線で俺を哀れんでくるこの女を、俺はただひたすらにブン殴ってやりたかった。


「ちっっっっげぇっよ!!!本当に入ってるんだよ、神の力研究会に!」

何を勘違いしているのか知らないが、俺は妄想になど逃げ込んでなどいない。もう昔とは違うのだ、昔の俺とは。今の俺には居場所がある、俺を受け入れてくれる先輩がいる・・・


しかし、

だからこそこの女には、あの研究会の存在を知られるわけにはいかなかったのだ。

・・・勢いで研究会のことを口走ってしまった事が悔やまれる

もしこの女があの研究会に自分も入るなどと言い出したら、俺の憩いの場が奪われてしまう。それだけは避けねばなるまい


「い、いやでも、あれだよ?名前だけの会員だよ?」


「名前だけの?なら丁度いいわ!私の入ってる医療系魔法研究会がリクトのこと入れてもいいって!良かったわね、これで私と同じ研究会に入れるわよ!」


医療系魔法研究会?またバカの1つ覚えの様に回復魔法か・・・、まぁ、こいつには他に取り柄が無いから仕方ないが。

それにしても余計なお世話だ、俺の唯一の居場所を奪おうなどとは、この女は余計な事しかしない


「や、でも俺には医療系魔法なんて合わないから・・・、それに無理してまで一緒の研究会に入る必要なんてないだろ?」


「えぇ〜?そぅかなぁ〜、合うと思うけどなぁ〜?」

チラチラこっちを見ながら、その程度では諦めないという意思を示してくるエリナ。


「あ!じゃぁ、こうしよう!私がリクトのいる研究会に入ればいいんだ!」

天才的な思いつきをしたとばかりにドヤ顔をこちらに向けてくるエリナ。自慢の豊かな胸を張る様は、リクトの興味を少しばかり引かないでもなかったが・・・、しかしその程度の誘惑では看過出来ない発言だった。


冗談じゃないぞ、そんな事!

エリナ・グライトノートの入会の申し出を断るような研究会はこの学園には存在しないだろう。俺が3年生で研究会の会長だったとしたら、この外面と評判と実績だけはいい巨乳美少女新入生を受け入れない理由など無いだろう。こうして実際に文字として書き起こして見て気づく事だが、本当に入会を断る理由がないな!?

あの糸目先輩が色仕掛けに引っかかるとも思えないが、優しいあの先輩がこれと言った理由もなくエリナの入会を断るとも思えない。

そんなことになってしまったら・・・・、この2週間ばかりの間、俺に安らぎを与えてくれたあの場所が、悪魔(エリナ)のおもちゃ(リクト)遊びの場所になってしまう。

それだけは避けなくては・・・


「さ、さっきも言ったけど、俺は名前だけの会員だから、うちに入っても意味無いと思うぞ?」

俺の頬を冷や汗が伝う。


「まぁ、でもほら!一緒の研究会に所属することに意味があるんだから!それに名前だけの会員はこんな時間まで学校に残っていないと思うけど?」


「いや、でもそれは、 「というわけで、案内して?」

俺の主張など聞く気はないと言わんばかりに、俺の言い訳を言葉を被せて邪魔してくる。


「だから、入ってもsy 「案内して?」


冷たい笑顔ほど怖いのは何故だろう・・・

しかし、何の力も持たない一般市民(おれ)が大魔王(エリナ)の言うことに逆らえないのは仕方の無い事だろう。

こうなったら糸目先輩に期待するしかない!

この笑う悪魔をどうにかして追い返してくれないものかと、望み薄な期待をしながら、おれはエリナを引き連れて先ほど出たばかりの研究室へと戻る。


「せんぱ〜い?入部希望者が、・・・」


エリナに急かされて研究室の扉を開けてみると、そこにはすでに糸目先輩の姿はなかった。

どうやら俺の命は首の皮1枚繋がっていたようだ。


「ア、アレ〜?セ、センパイ居ナイナ〜」


安堵のあまり言葉が棒読みのようになってしまう。

白々しいとばかりに疑惑の視線を向けてくるエリナ


「本当にここが研究室なんでしょうねぇ?」

額に青筋を浮かべ、俺に謀(たばか)られたのでは無いかと疑っていらっしゃるご様子だ。

このままではヤバイな、怒り狂った大魔神(エリナ)が暴れ出しかねない・・・


「まぁいいわ、結構遅い時間だし、もう帰っちゃたのよね。また明日来るわ!今日はもう帰りましょう?」


俺の心配とは裏腹にしょうがない事だと諦めてくれた様子のエリナ。

諦めてくれるのはいい事だが、明日も来るのか・・・

問題の先送りにしかなっていない事に頭を悩ませながら、ふと窓の外に目を向けるともう真っ暗だった。気づかなかったが、エリナの言葉通り、そうとうに遅い時間になってしまったようだった。


急いで家路につく俺とエリナ。王都では最近、有名なテログループが潜伏していると連日連夜ニュースになっている。暗くなってから学生が夜道を彷徨(うろつ)くのは得策では無いだろう。

帰り道、エリナは俺に研究会について根掘り葉掘り聞いてきた。メンバーが俺と糸目先輩の2人しかいない事に不審がってはいたが、事実なのだからしょうがない。


自宅が近づき、エリナと分かれる。

静寂に包まれた夜道を一人歩いていると、柄にも無く孤独を感じてしまう。襟足の髪が首元に張り付くような感じがする。口の中が、水分が全て蒸発してしまったかのようにパサつき、肌を撫でる風は痛みを感じるほどに冷たい。


何かがおかしい・・・、嫌な予感がする。

夜道を1人で歩いていて怖くなったなどと知られたら、エリナかソーマが送り迎えをすると言い出してしまうだろう。

なので絶対にこの得体の知れない恐怖を口に出すわけにはいかないわけで・・・

しかし、俺の嫌な予感は昔からその的中率に定評があった。


<ドサッ>


夜道に鈍い音が響き渡る。

まるで何かが、・・・例えば人が地面に倒れ伏した様な、そんな音が通りの向こう側から聞こえてきた。


「ヒッ!?」


思わず恐怖が口から漏れる。

閑静な住宅街には、思った以上に俺の声が響いてしまった。

するとコツン、コツンといった靴音の様なものがこちらに向かって来るのが聞こえた

あんな小さな声が、通りの向こうまで聞こえたとは考えにくいが、俺の第6感が最大限の警報を鳴らしているので、とりあえず逃げる事にしよう。


俺が走り出すと足音の主は追いかけては来なかった。

おそらく諦めたのだろう、まぁ俺は、ヤバイものを見たわけでも聞いたわけでも無いからな!わざわざ追いかけて来る理由が無い。


家に帰り着くと、いつもの様に父さんが玄関で出迎えてくれた。


「おかえり、リクト」


「ハァ、ハァ、た、ただいまっ、」

俺は、誰も追いかけては来ないのに恐怖のあまり全力ダッシュで帰ってきてしまったから息が切れていた


「どうした?息なんて切らして?」

そんな俺の顔を心配そうに覗き込んで来る父。


「い、いや、なんでも無いよ、ゼェー」

体力のない俺はこの程度の息切れもなかなか落ち着かないが、何があったか父にバレてしまったらソーマやエリナの様にこの父も、明日から学校まで送り迎えするといい出すかも知れない。

なので余計なことを聞かれないうちに自室へと向かう事にする。


「ご、ご飯の時間になったら呼んでくれ、」

まだ調わない俺の息に父が訝しげな顔を向けてくる



===============================


リクトがいなくなった後で、リクトの父”モーガン・マグナウォーカー”はすれ違いざまに、息子の制服から摘(つま)み上げた発信魔力虫(ビーコン)を見て言った


「こんなもの、一体どこで・・・」


息子を追跡しようという輩と、息を切らせて帰宅した息子・・・

騒めく胸中を必死に鎮めながら、魔力回線を利用した部下への緊急通話で、こう指令を出す。


「3時間前まで遡って、この街に異変が無かったかを調べろ」







そして翌朝、マグナウォーカー邸から程なくの場所で男の刺殺体が見つかった。

この事件を切っ掛けにして、光道12星魔導師団は国際的テログループ”アリアドネ”の捜査に乗り出す事になる。

国内最強の魔導師集団が、たかがテロリスト如きを相手にするなど前代未聞のことであったが、事件捜査への介入を強く希望した人物がいたのだ。



光道12星魔導師団団長、”射手座(サジタリウス)”モーガン・マグナウォーカー

世界に3人しか存在しないレベル9の1人


世界最強の一角であるこの男の決定に口を挟める者はいなかった。





なんか最近、風呂敷を広げすぎた気がしてきました。

あと、展開がシリアスすぎる。

リクトの心の声とかで空気を和ませようとしてはいるけど、ここから展開はさらにシリアスになる予定だし、ソーマ視点や、父視点でも書くつもりだからさらにシリアスに・・・


ならない様に気をつけます

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