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3話 魔王の魂を握る者


「はーい! 勇者くん、お疲れさま~!」


異世界転生後に脳内で何度か聞いたノリが良さげな軽い声。

いつの間にか後ろに現れた。

若めの女。露出の多い派手な服。張り付いたような笑顔。妙に近い距離感。

見た瞬間、反射的に嫌悪感を覚えた。そして実物は見た事はなかったがすぐに誰だか分かった。


確認の為久しぶりに自分の意思で神眼を使用する。右眼に力を込める。




__


【名称】女神

【感情】 愉快 期待

【備考】 今回も比較的楽しめた



__


いつの間にか魔王軍と戦った傷が全て治っている。息がしやすい。



「……やっぱり。あんた、女神だったのか。」



思わず眉間に皺を寄せる


「さすが選ばれし勇者様!見た事ないのにボクが誰だか解るなんて、すごいねぇ! 」



そう、女神は一度も俺の前に現れたことは無い。というか最初は居ないとさえ思っていた。


異世界に来たキッカケは女神だったかもしれないが国王御一行が俺を魔法陣で直接呼んだし。 そこで世界や魔王について聞いてパーティだって予め募って貰ってた。その他分からない事は大体パーティに聞いてなんとかなっていたし。

ギフトだってそうだ。右眼の神眼は転生して直ぐに発動されていて絶賛体調不良だった俺を見かねた仲間が 魔法で眼帯を作ってくれてなんとかなった。それに俺にほかに何のギフトがありどう使えるのかも調べてくれた。



この世界に来て3ヶ月ほどたった頃に 他の人は聞こえていない声が聞こえ始めた。それがこいつ女神の声。

魔王の様子をコソッと一方的に伝えて消える。会話が出来た時もたまにあったが、信じてその通りに行動すると必ず何かハプニングがある。

一度それでパーティが死にかけてエライ目にあった事がある。その様子を態々聴きに来て怒っている俺に向かい高い声で笑ってみせた。それから俺は基本的にこいつの声が言ってきた事を信じなくなった。


女神はそんなことお構いなしに笑う。


「魔王討伐おめでとう!世界を救った褒美に願いを三つ叶えてあげる!」


「!!」


驚いた顔を見て 女神はニヤッと笑う。ユラユラと身体を微かに揺らしまるで蛇の様。


「僕はね、魔王を倒してくれて純粋に嬉しいんだ。僕の気分が変わる前に願いを伝えるべきだと思うけど。」


女神の少し目が見開く、奇しくも魔王と同様綺麗な黄金色の瞳だ。


「……元の世界に帰ることもできるのか?」


「当たり前だよ♪」


「なら、元の世界に帰してくれ。」


4年間苦楽を暮らした仲間の事は最期の挨拶くらいしたかったな。と後悔は残るが 右眼で確認し皆生きていた。それだけでいい。はやく俺の事なんて忘れて平和な世界で生きてて欲しい。


「構わないよ♪じゃあ、二つ目の願いはどうする?」




「…俺は二度と俺を勇者をしたくない。二度と勇者として呼ぶな。」


「ええ!そんな事でいいの?!魔王はキミが倒したんだよ?!もう居ないのに!!もっとさぁ大金持ちとか、ハーレムとか……!、人間って欲の塊でできてるっていうのに!!」


女神は驚いている様子だ。そりゃそうだ。魔王は倒された筈なのに 、勇者として呼ぶななんて。

俺だって考える時間があったらもっと違う願いを考えたかもしれない。けどそんな時間もなかったし、魔王を倒した際に映ったあの文字… なにより女神が信用出来なさすぎて用心している自分がいた。



「ふーん。まあ、いいか。じゃあ、最後。三つ目の願いはある??無いなら無いでいいよ〜。」


俺が何も言わないのを悟り女神はつまらなそうな顔をし話し出す。喜怒哀楽が激しい。



「…。」


仲間にも何度か言われた。俺は欲がない方だ。

この異世界に15歳で来て早4年。長かったし仲間や顔なじみ、想い出も沢山出来たが4年間ずっと帰りたかった。心の奥底にはそれしかなかった。日本でまた平凡な生活がしたい。

その願いが叶うのなら、特にもう願いはなかった。



――けど、

脳裏に浮かぶのは、魔王の頭上に現れたあの文字。

『死後、“魔王”として再利用』



魔王の最期の言葉

『…次は普通に生きてみたいなぁ。』



考えるよりも先に言葉が出てしまうってこういう時の事を言うんだと思った。



「……最後の願いは魔王の願いを叶えてやってくれ。」




一瞬。

女神の笑顔が止まる。


「へぇ?」


「あんたならどういう意味か分かるだろ。」


魔王の願いはきっと最期の言葉通り 普通の生活がしたいと言うだろう。 この願いが本当に叶うのか分からないが叶うのなら彼女の魔王としての生を終わらせてやりたい。


神眼に力を込める。これが異世界で使う最後の力になるだろう。



――


【名称】女神

【備考】 魂管理。 魔王の魂を握る者。


――


数秒の沈黙。

女神は、すぐに笑った。


「…うん。了解したよ。」


その笑顔を見た瞬間。

絶対信用しちゃいけない奴だと直感で感じる。




ふと魔王の笑顔を思い出す。

(…はぁ、ほんと、女神と魔王。どっちが悪だか分かんねーな。)

そんなことを思っていると次の瞬間。


視界が白く弾けた。

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