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第2話 魔王の最期。

世界を恐怖に陥れた女魔王を、ついに討ちとった。


「悪い。終盤付近まで女だと分からなかった。」


「……。」



「……最期に、話したい事があるなら聞いてやるから。」



甲冑を外してあげると、そこにはイメージしていた魔王とはかけ離れた少女がいた。

驚いて声が出なかった。

そんなユウトを見て魔王が笑う。


長い銀髪は血で濡れ、腹には勇者の聖剣が刺さっており肩で息をしている。それでも彼女は、妙に穏やかな顔をしていた。


「……負けたかぁ。」


魔王はぽつりと呟く。


普通の声だった。

怨嗟も憎悪もない。綺麗な少女の声。


魔王と目が合う。

甲冑を外す際に右眼が露になったせいかまた神眼が勝手に発動する。




__



【感情】 疲労 解放感 幸福感



__



ユウシは眉をひそめる。


解放?幸福?本当にこいつが、 世界を滅ぼそうとしていた魔王なのか。まだ黒幕が居るんじゃないか。


「おいお前、本当に魔王だったのか?誰かに操られてるんじゃ……。」


思わず聞かずにはいられなかった。


魔王はまた少しだけ笑う。

「失礼だなぁ。」


咳き込む。

血がこぼれ落ちる。


「ちゃんとサイゴマデ、わたしは魔王だった。」


その言葉の後、目を瞑り微笑む魔王。

随分と話してみればお淑やかな雰囲気だ。





というか魔王討伐の旅の最中から、ずっと違和感があった。

魔王軍は、噂ほど残虐じゃない。


森が火の海になっても花畑周囲は無事だった。

町外れにあった家が魔王軍によって壊されてしまったが後から調べたら人身売買所だったり。戦争中たまたま教会、孤児院が無事だったり

滅ぼされた村もまるで“後からそう見えるように壊された”みたいだった。


もちろん被害はある。死人も出ている。

けれど、どこか歪だった。


なのに誰も疑問を持たない。

昔からそうだった。俺だけが異世界人だからかもしれないが。


魔王は柱にもたれ、ぼんやり天井を見上げる。


「終わったなぁ……」

その横顔は恐ろしい魔王なんかじゃなく。

ただ、疲れ切った少女みたいだった。


また右眼の視界が揺れた。

脳を掻き回されるような感覚だ。

そして空中に、魔王の頭上に、半透明の文字が浮かび上がった。



__


【個体名】アダリア

【備考】死亡直前。死後、“魔王”として再利用。累計使用回数116回



__


「……は?」


思考が止まる。


……再利用?

使用回数?

ここに来て意味が分からないことだらけだ。


聞くべきか。いや、俺には関係ない。

俺の目的は魔王を倒すことなのだから。




__なのに。




「アダリア。」


「!!」


驚いた顔をする魔王アダリア。それもそうだ。名乗って居ないのにいきなり名前を言われるなんて。


「花は好きか?」



自分でも意味わからない事聞いてる自覚はある。

もし仲間がこの場に居たら 、またユウシのお節介が始まったとか言われてたんだろうな。

ていうか 俺が気にかけているのはこの見た目のせいだ。中身がもっとおっさんだったり老婆とかだったらここまで絶対気にならなかった。甲冑なんて無理に外さなきゃ良かった。そんな事が脳内を駆け巡る。




魔王アダリアは目を丸くして長い沈黙。

聞いた事への後悔とそろそろ気まずいなと考え始めた最中




「……うん。だいすき。」




「!!ハハッ、そーかそーか。やっぱりそうか。」




ヘラッと笑うと 魔王アダリアもつられて目を細め笑っているように見える。




俺は魔王アダリアの前に胡座をかき

その後も俺たちは互いにボロボロで話すこともままならない状態だった魔力が多い者同士だ。タフなのだろうか、少しだけたわいも無い会話をすることができた。




だからなのか終は突然に。



「……ねぇ。」


魔王が小さく呟く。



「…キミは、他の人とは何か違うね。」


「ああ?そりゃあ、異世界人だからな。」


「…異世界?この世界のほかにもあるってこと?」


「ああ、別の世界から来たんだ俺は。」


「…へぇ。」


俺は少しだけ転生前の日本での様子を話す。魔王アダリアは初めのうちは目をキラキラさせて俺の話を聞いていたが、気が付くと微笑んではいるが目線が下を向いている。睫毛が長い。





「…キミの名前は知っている。勇者、相馬ユウシ。」


勇者である俺の名前を知らない奴はいないだろう。魔王軍の傘下にも沢山呼ばれてきた。


「…キミが言っていた通りにさ、」


魔王アダリアの血が、俺の足元まで広がってきていた。


「…もし来世とか、次があるならさ、」



よく見ると肩で呼吸している。

黄金色の瞳が、ゆっくり細められる。



「…次は普通に生きてみたいなぁ。」




その言葉を最後に。


魔王は静かに目を閉じた。




沈黙。




魔王は、魔王軍は確かに強かった。

しかし世界を恐怖に陥れた魔王の最期は、あまりにも人間味溢れていて、そして呆気なかった。




俺は4年間、魔王を倒すことだけを考えていたが何となく話せば和解できそうだった。

そんな事を思っていた直後。



空間が白く染まる。



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