表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡な世界から君がすくい出してくれたこと(登場人物は全員モブ顔です)  作者: 楓真パパ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/21

第19話「文化祭の打ち上げと、揺れ動く四人の心」


文化祭2日間が終わり、家庭科室には心地よい疲労と達成感が満ちていた。

「みんな、本当にお疲れさま・・・!」

真智が笑顔で言うと、 五人の間に温かい拍手が広がった。

「クッキーもカレーも完売だし、文句なしだな!」

悠斗が腕を組んで満足げに言う。

「うん・・・!すごく楽しかった・・・!」

ひよりは、今日一番の笑顔を見せた。

しかし―― その笑顔の奥にある“痛み”に気づいているのは、 和馬だけだった。

(・・・佐伯さん、頑張って笑ってる。本当は・・・辛いのに)

胸がきゅっと締めつけられる。

片付けが始まると、自然と二人ずつに分かれて作業が進んだ。

壮真と真智。 ひよりと和馬。 悠斗は一人で大きな鍋を洗っている。

ひよりは、壮真と真智が並んで笑い合う姿を見て、 胸の奥がじわりと痛んだ。

(・・・やっぱり、二人はお似合いだよね)

そう思えば思うほど、 自分の想いがみじめに感じてしまう。

「佐伯さん・・・大丈夫ですか?」

和馬がそっと声をかける。

「えっ・・・あ、うん。大丈夫だよ」

ひよりは笑顔を作るが、 その目は少し赤かった。

(・・・嘘だ。全然、大丈夫じゃない)

和馬は気づいていた。でも、何も言えなかった。

(・・・僕じゃ・・・佐伯さんを笑顔にできないのかな)

胸が痛い。 でも、その痛みを押し殺して、 ひよりの隣で黙って作業を続けた。

一方で、真智もまた、胸の奥が落ち着かなかった。

(・・・佐伯さん、やっぱり高杉くんのこと・・・)

ひよりの涙の理由を知ってしまったからこそ、壮真と話すたびに、どこか後ろめたさを感じてしまう。

「田辺さん、これ運びますね。」

「ありがとう、高杉くん・・・」

壮真の優しさが、 真智の胸をまた跳ねさせる。

(・・・どうしてこんなに嬉しいんだろう)

でも同時に、 ひよりの顔が浮かんでしまう。

(・・・私がこんな気持ちになっちゃいけないのに)

胸が痛い。 でも、痛いほどに気づいてしまう。

(・・・私・・・高杉くんのこと・・・)

片付けが終わり、五人は家庭科室を出た。

「じゃあ・・・また明日な!」

悠斗が手を振り、 和馬もひよりに声をかける。

「さ、佐伯さん・・・今日も送ります。」

「うん・・・ありがとう。」

二人は並んで歩き出す。 しかし、ひよりの視線は―― 最後まで壮真のほうへ向いていた。

(・・・佐伯さん・・・)

和馬はその視線に気づいてしまう。

胸が、痛いほどに締めつけられた。

(・・・僕じゃ、ダメなんだ)

ひよりと和馬が去り、悠斗も別方向へ。

残ったのは、 壮真と真智の二人だけだった。

「・・・今日も、一緒に帰ってもいい?」

真智が小さく言う。

「もちろんです」

壮真は自然に微笑んだ。

その笑顔に、 真智の胸はまた跳ねた。

(・・・どうしよう。  こんな気持ち、止められない)

でも―― ひよりの涙が、胸の奥で静かに疼く。

(・・・私が高杉くんを好きになったら・・・  佐伯さんを傷つけちゃう)

夕焼けの中、 二人の影が並んで伸びていく。

その影の後ろで、 ひよりの小さな恋と、 和馬の切ない想いが、 静かに揺れていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ