第17話 「文化祭1日目・クッキー販売開始!そして訪れる予想外の出来事」
文化祭当日の朝。
校舎はいつもと違うざわめきに包まれていた。
調理クラブの五人は、いつもより早く家庭科室に集合していた。
「お、おはようございます・・・!」
和馬は緊張で声が裏返っていた。
「木下さん、早いですね。ありがとうございます。」
壮真が微笑むと、和馬はさらに赤くなる。
「い、いえ・・・! 今日は大事な日なので・・・!」
ひよりも、少し緊張した面持ちで言った。
「うん・・・今日、たくさんの人に食べてもらえるといいな・・・。」
悠斗は腕を組んだまま、にやりと笑う。
「大丈夫だろ。昨日の出来なら、絶対売れる。」
真智は、みんなの顔を見渡しながら言った。
「じゃあ・・・始めようか。調理クラブ、文化祭1日目・・・クッキー販売、開始します!」
五人の声が重なった。
「「「「「おーっ!!」」」」」
開店してすぐ、予想以上の人が集まってきた。
「えっ・・・すごい行列・・・!」
ひよりが驚く。
「田辺さんのレシピ、人気ですね。」
壮真が言うと、真智は照れながら笑った。
「みんなのおかげだよ・・・!」
和馬は袋詰めをしながら、ひよりの横顔をちらりと見た。
(・・・佐伯さん、楽しそうだ・・・よかった)
しかし、ひよりの視線は――
やはり壮真のほうへ向いていた。
(・・・やっぱり、佐伯さんは・・・)
胸が少し痛む。
でも、和馬はその痛みを飲み込んだ。
昼過ぎ。
クッキーはほぼ完売状態だった。
「すごい・・・! もう残りわずかだよ!」
ひよりが嬉しそうに言う。
「この調子なら、1日目は大成功だな。」
悠斗も満足げだ。
しかし――
そのとき。
「すみませーん! 追加ってありますか?」
「えっ・・・追加・・・?」
真智が戸惑う。
「ごめんなさい・・・材料がもう・・・」
「えー! もっと食べたかったのに!」
「明日も来るんですか?」
「明日はカレーなんです!」
壮真が答えると、客たちはさらに盛り上がった。
「カレー!? 絶対来るわ!」
「楽しみにしてます!」
その声に、五人は顔を見合わせた。
「・・・すごいね。」
「うん・・・!」
しかし、その盛り上がりの中で――
ひよりの表情がふと曇った。
(・・・明日も・・・高杉くんは田辺さんと並んで・・・)
胸がきゅっと痛む。
その様子に気づいたのは、和馬だった。
(・・・佐伯さん・・・)
声をかけようとしたその瞬間。
「佐伯さん、これお願いできますか?」
壮真がひよりに声をかけた。
「う、うん・・・!」
ひよりは慌てて笑顔を作り、作業に戻った。
和馬は、その背中を見つめながら、
胸の奥に小さな痛みを抱えたまま、黙って手を動かした。
クッキーは完売。
1日目は大成功だった。
「みんな・・・本当にお疲れさま!」
真智が言うと、全員が笑顔になった。
「明日はカレーだな。気合い入れていこうぜ。」
悠斗が言うと、ひよりも頷いた。
「うん・・・! 頑張ろうね。」
和馬は、ひよりの笑顔を見て胸をなでおろした。
(・・・佐伯さんが笑ってくれるなら・・・それでいい)
しかし、真智はひよりの笑顔の奥に、ほんの少しだけ残る“影”を見逃さなかった。
(・・・佐伯さん・・・やっぱり・・・)
そして、真智自身の胸にも、昨日より少し強い“ざわつき”が生まれていた。
(・・・私・・・どうしたらいいんだろう)
こうして、文化祭1日目は幕を閉じた。
しかし――
五人の胸には、それぞれ違う“想い”が静かに揺れていた。




