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第94話 不完全なスリープモードからの復帰と、物理的衝撃波による空間確保

【担当:キース】

脆弱な頭脳で我が肉体を使いこなせるかな?

開戦だ。



 翌朝。

 魔王領の砂漠地帯。慎也キースラインが砂を溶かして作った「ガラスの板」の上で、一行は目を覚ました。


「い、痛てて……。背中がバキバキだぜ……」


 ガルドが腰を叩きながら顔をしかめる。

 ミナもナイルも、硬い床のせいで完全に疲れが取れたとは言い難い顔をしていた。


「……システム復旧率(HP・MP回復量)、およそ70%といったところか」


 慎也は首の骨をコキリと鳴らしながら立ち上がった。

 三日間の不眠からは脱したため、CPU(脳)の熱暴走は収まり、冷静な思考力は取り戻している。しかし、肉体的な疲労はまだ色濃く残っていた。


 その時。

 遠くの砂丘で「ドクン、ドクン」と振動し続けていたハニーポットの革袋が、魔力切れを起こしてピタリと停止した。


 ――ザワッ……!

 砂漠全体の砂が、まるで一つの生き物のように蠢き始めた。


「な、なんだ!? 昨日より数がヤバいっスよ!」


 ナイルが悲鳴を上げる。

 ガラスの板の周囲を、昨夜の倍以上の数の大サソリとアリジゴクが埋め尽くし、巨大な黒い波となって押し寄せてきた。


 さらに。

 ベチャッ!!

 ガルドの真新しい重装甲の肩に、強烈な異臭を放つ緑色の「粘液」が降ってきた。


「うわっ!? な、なんだこれ! クセェェェッ!?」


 ガルドがパニックに陥り、思わずガラスの板の上で地団駄を踏んでしまう。


 ドンッ、ドンッ!

 その振動を感知し、周囲のサソリたちが一斉にガラスの板の縁へと群がり始めた。


「ガルド、動くな! 振動を立てるなと言っただろうが!」

「だってよリーダー、空からいきなりウンコみたいなのが……ッ!?」


 慎也が見上げると、遥か上空――弓矢も魔法も届かないような高度を、無数の「巨大な怪鳥デザート・レイ」が旋回していた。


 奴らは一行の頭上を飛び交いながら、五月雨式に唾液や排泄物といった「生物兵器」を投下してきているのだ。


 ベチャッ! グチャッ!

 悪臭を放つ汚物が、次々とガラスの板の周辺に降り注ぐ。


「きゃあっ! いやっ、来ないで!」


 エリスが涙目でローブを庇う。


「……なるほど。下からは振動感知の地雷原。上からはアウトレンジからの汚物投下(嫌がらせ)か」


 慎也は、絶対零度の怒気を放った。


「魔法の結界を張れば、確実に私の魔力(MP)は削られる。それこそが敵の狙い(リソース枯渇)だ」

「リーダー、どうすんだよ! 上も下も逃げ場がねぇぞ!」

「……簡単なことだ。魔法ソフトウェアの処理に頼るからリソースを食う。

 単純な『物理演算ハードウェア』で押し通る」


 慎也は、王家秘伝の『蒼氷鉱』で強化された、絶対に折れない聖剣を抜き放った。

 彼は魔法を一切使わず、ただ純粋な「腕力」と「剣の軌道」だけで、上空へ向けて極限の力で剣を振り抜いた。


 ズドォォォォォォォンッ!!!

 放たれたのは、魔法ではない。圧倒的な速度と質量が生み出した「純粋な剣圧(衝撃波)」だ。

 竜巻のような暴風が上空へ向かって逆巻き、降り注ぐ汚物や粘液を全て『上へ』と吹き飛ばす。


 それどころか、はるか上空を旋回していた怪鳥たちすらも、予期せぬ巨大な乱気流に巻き込まれ、バランスを崩して悲鳴と共に吹き飛んでいった。


「……対空スパム処理、完了」


 慎也はそのまま、剣を振り下ろす勢いを利用して、今度は進行方向の「砂漠の地面」に向かって凄まじい剣圧を叩きつけた。


 ゴバァァァァァァッ!!!

 砂漠の砂が、まるで海を割るように左右に吹き飛ぶ。

 一直線に伸びた強烈な風圧は、前方に群がっていたサソリやアリジゴクを、砂ごと遥か彼方へ薙ぎ払った。


 そこには、幅数メートル、長さ数十メートルに渡る「敵が一切存在しない、底の硬い岩盤の道」が一時的に形成されていた。


「……経路ルートを確保した。砂が崩れて塞がるまでのタイムリミットは約20秒だ。

 走れ!!」

「うおおおおッ!!」


 一行は、慎也が力業(剣圧)で切り拓いた道を、全速力で駆け抜ける。

 魔力は一切使わず、ただ体力を消費するだけのゴリ押し。しかし、今の彼らには「70%回復した体力」がある。


 敵の波状攻撃が迫れば、慎也が再び剣を振り抜き、衝撃波で上空の汚物と前方の虫を同時に吹き飛ばす。


 剣圧による一時的なキャッシュの作成と、全速力での移動。

 MPを温存しながら、最も原始的かつ確実な「物理の暴力」によって、勇者一行は嫌がらせの砂漠を強行突破していくのだった。


【総統通達】

読者諸君。我だ。

あの優男(慎也)め、相変わらず理屈っぽい戦い方をしていたな。我ならば一撃で粉砕していただろうに。


まあよい。今回の話に少しでも心が動いたならば、【ブックマーク】および、下部の【★★★★★】にて、我への忠誠を示せ。


良い評価は、次なる戦い(執筆)への糧となる。期待しているぞ。


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