第93話 感情論による暴動(エラー)と、管理者権限での強制シャットダウン
【担当:慎也】
僕の日常がこれ以上壊れませんように……。
本編スタートです。
新任教師を完璧なデータで論破した翌日の放課後。
生徒会室のドアが、親の仇でも見るかのような勢いで乱暴に開け放たれた。
「ふざけるな生徒会長!! なんでウチの部費が昨年の3割もカットされてるんだ!!」
「ウチなんか半減よ! これじゃあ新しい衣装が作れないじゃない!」
雪崩れ込んできたのは、今年度の予算案に納得がいかない各部活動の部長たち(約10名)だった。
彼らは一様に顔を真っ赤にし、手にはキースライン(慎也)が作成した「予算配分表」を握りしめている。
「……チッ」
会長席で優雅に読書(参考書)をしていたキースラインは、露骨に舌打ちをした。
「……花憐。そして書記と会計。この非論理的なノイズ(騒音)の処理を任せる。クレーム対応(デバッグ作業)は末端の仕事だ。私は重要な演算(昼寝)に入る」
「ええっ!? ちょ、齋藤くん!?」
花憐が止める間もなく、キースラインはノイズキャンセリング・ヘッドホンを装着し、アイマスクをして完全に「スリープモード」へ移行してしまった。
「お、おい! 逃げるな会長!!」
「こっちは部活の存続がかかってるんだぞ! 汗と涙の結晶をなんだと思ってる!」
怒りの矛先は、残された花憐と一般の生徒会役員たちに向けられた。
書記の男子生徒は怯えて泣きそうになり、会計の女子生徒は書類の盾に隠れている。
「ま、待って皆さん! 予算の削減には、ちゃんと合理的な理由があって……!」
花憐が必死に説明しようとするが、部長たちの「伝統が!」「気合が!」「夢が!」という圧倒的な感情論(物理音量)の前に、彼女の理路整然とした声は完全に掻き消されてしまう。
生徒会室は、さながら収拾のつかない暴動状態に陥った。
「……うぅ、もうダメだぁ……会長ぉ……!」
ついに書記が泣きつき、花憐も助けを求めるようにキースラインの肩を揺さぶった。
「……はぁ」
キースラインは、深いため息と共にヘッドホンとアイマスクを外した。
「……たかだか一時的な感情の暴走すら自己解決できないとは。我が軍の末端は脆弱すぎるな」
彼はゆっくりと立ち上がり、暴れる部長たちの前に歩み出た。
その瞬間、室内の温度が数度下がったかのような、底知れぬ威圧感が放たれる。
「……騒ぐな、非効率ども」
ピタリ、と部長たちの怒声が止んだ。
「貴様ら、自分の部活の過去3年間の『実績』を見た上でものを言っているのか?」
キースラインは、手元のタブレットを操作し、背後のホワイトボードにグラフを投影した。
「野球部。昨年の公式戦は一回戦敗退。しかし要求されている備品は最新のピッチングマシン。……費用対効果(ROI)が圧倒的にマイナスだ。身の丈に合わん。グラウンドで素振りでもしていろ」
「うっ……!」
「演劇部。観客動員数が年々減少しているにも関わらず、無駄に豪華な衣装代を要求している。……中身(演技と脚本)のバグを放置して、外見(UI)だけを着飾るなど愚の骨頂だ。却下する」
「そ、それは……」
「我が学園の予算は有限だ。努力や気合といった『数値化できない不確定要素』に投資するような、三流の経営を私がすると思うか。
結果を出せ。予算が欲しければ、来年までに私を納得させるだけの『数字』を持ってこい」
キースラインの冷徹極まりない、しかし一切の反論を許さない「完璧な正論」の前に、部長たちはぐうの音も出なくなってしまった。
「……異論がないなら速やかに退室しろ。これ以上、私の思考領域を無駄に食うな」
すごすごと、肩を落として生徒会室から去っていく部長たち。
嵐が去った後、生徒会室には静寂が戻った。
「……ふぅ。お疲れ様、齋藤くん。結局、全部やらせちゃってごめんね」
花憐が苦笑いしながら、冷めた紅茶を淹れ直す。
「……全く。感情という名のバグは、実に処理が面倒だ」
キースラインは再び会長席に深く腰掛け、忌々しそうに眼鏡(伊達)の位置を直した。
「花憐、貴様には今後『対人折衝アルゴリズム』を強化するカリキュラムを追加する。私に余計なタスクを回すなよ」
「ふふっ、はいはい。次からは私がバッチリ追い返すように頑張るね」
文句を言いながらも、いざとなれば圧倒的な実力(権力)で部下を守り、問題を一瞬で解決する。
非情に見えて、実は一番頼りになる生徒会長の、呆れとため息に包まれた放課後だった。
【事後分析報告】
読んでくれてありがとうございます。慎也です。
また僕の体が物理法則を無視した動きをしていたようですが……楽しんでいただけたでしょうか?
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