第88話 王都からの再出撃と、完全耐性による蹂躙
【担当:キース】
脆弱な頭脳で我が肉体を使いこなせるかな?
開戦だ。
王都の正門前。
出立の朝、ソフィア王女は自ら見送りに立っていた。
「……完璧な仕上がりね。王国最高の技術と資金を注ぎ込んだ甲斐があったわ」
ソフィアは、真新しい防具に身を包んだ勇者一行を見て、誇らしげに微笑んだ。
「ああ。要求仕様を満たした見事な生産ラインだった」
慎也は、腰に差した強化版の聖剣を軽く叩く。
「これほどの投資を受けたのだ。……費用対効果として、魔王の首は確実に持ち帰ろう」
「期待しているわ、私の英雄。……道中、気をつけて」
ソフィアの優雅な微笑みに見送られ、一行は王都を後にした。
***
馬と徒歩を交えた魔王領への長旅。
以前は過酷だった道のりも、今回の彼らには全く違って感じられた。
「いやぁ、この新しい鎧、全然疲労が溜まらねぇぞ。関節の動きにピタリとついてきやがる」
ガルドが野営の準備をしながら感心したように言う。
ミナとナイルも、新しいマントの防風・防寒性能のおかげで、夜の冷え込みを全く気にする様子がない。
道中での山賊や野生の魔物との遭遇も、新装備の「実戦での慣らし(エージング)」には丁度良い運動だった。
そして。
彼らは再び、あの大規模な紫の煙が立ち込める「紫の火山帯」の入り口に立っていた。
地割れからはマグマが煮えたぎり、致死量の猛毒ガスが視界を遮っている。
「……到着したな。環境デバフの数値は前回と変わらず、極めて劣悪だ」
慎也が眼鏡の位置を直す。
「すっげぇ! マジで息苦しくねぇぞ!」
ガルドが有毒ガスの中で深呼吸をして笑う。
「それに、この前は立ってるだけで肌が焼けるように熱かったのに、今はただの『ちょっと暑い夏の日』って感じだぜ!」
「……ドワーフの親方が組み込んだ『耐熱・抗毒繊維』と冷却術式が、外部要因を完全に相殺している。エリス、貴様の魔力は支援のみに回せ」
「はい、キースライン様!」
その時。
「グオオオオオオオオッ!!」
マグマの海が大きく盛り上がり、巨大な影が姿を現した。
全身から紫の炎を吹き上げる、あの毒火竜だ。
「なっ!? ウソでしょ!?」
ミナが目を丸くする。
「あいつ、この前リーダーが倒したじゃん!」
「……なるほど。火山帯という環境に紐付いた『再配置型』の個体だったか。
実に非効率なシステムだが、今回は都合がいい」
慎也は不敵な笑みを浮かべ、ゆっくりと聖剣を抜いた。
「……ただの『ベンチマークテスト』だ。蹂躙しろ」
「おうよ!!」
真っ先に飛び出したガルドへ、毒火竜が迎撃の紫炎ブレスを吐き出す。
だがガルドは避けることすらせず、新しい重装甲で正面からブレスを「受け止め」ながら突進した。
「ハッ! ぬるいぜトカゲ野郎!!」
ドゴォォォン!!
ガルドの斧が竜の顎をかち上げ、巨体が大きくのけぞる。
毒ガスを意に介さないナイルとミナが、竜の死角から次々と斬撃を叩き込む。
「……私の剣のアップデートを、その身で味わえ」
慎也が地面を蹴る。
王家秘伝の『蒼氷鉱』が練り込まれた聖剣は、マグマの熱を奪うほどの絶対零度の冷気を纏っていた。
「消去だ」
ズバァァァァァァァンッ!!!
聖剣が一閃される。
竜の首が切断された瞬間、凄まじい冷気が爆発的に広がり、噴き出そうとした紫色の毒血も、周囲のマグマの海ごと、一瞬にしてカチンコチンに凍結してしまった。
ピキ……パリンッ!!
氷像と化した毒火竜の巨体が、粉々に砕け散る。
「……ふむ」
慎也は、完全に凍りついたマグマの上に静かに着地し、剣を鞘に納めた。
「刃こぼれゼロ。耐熱限界エラーなし。……完璧な性能だ」
自らの足で再び辿り着き、かつて死にかけた強敵を文字通り「瞬殺」した勇者一行。
凍りついた火山帯を抜け、いよいよ未知の領域――『幻影の樹海』と『瘴気の谷』へと歩みを進めるのだった。
【総統通達】
読者諸君。我だ。
あの優男(慎也)め、相変わらず理屈っぽい戦い方をしていたな。我ならば一撃で粉砕していただろうに。
まあよい。今回の話に少しでも心が動いたならば、【ブックマーク】および、下部の【★★★★★】にて、我への忠誠を示せ。
良い評価は、次なる戦い(執筆)への糧となる。期待しているぞ。




