灯火の部屋
「なんか、今度の部屋は薄暗いな。
みんな、大丈夫か?」
次の部屋に入るなり、ジョナサンはそう言った。
「気をつけていないと、なにかにつまづきそうですね。
進むには細心の注意が必要です」
アリーナがそう言い終わるか終わらないかのうちに、あいたっというグロリアの声が部屋に響いた。
「転んじゃいました。
なんかここ、大きな出っ張りがありますよ」
「それよりも、あなたは大丈夫なんですか」
そう尋ねたアリーナに、グロリアは答えた。
「ちゃんと受け身を取りましたよ」
「無事ならいいのですが……」
「壁が明るくなっているな。
燭台に炎が灯ったようだ」
そう言ってユキナリが指した前方を見ると、左右の壁に取り付けられた燭台に炎が灯っては消え、また灯って消えを繰り返していた。
「なんだ、あれ?
それと、そもそもグロリアはなににつまづいたんだ?」
ジョナサンがそう言って、多少暗さに慣れた目を向けると、そこには大きなレバーがあった。
レバーは炎が完全に消えると、ガチャリと手前に倒れた。
「レバーが戻ったようだな」
ユキナリがそう面白くもなさそうに言うと、ジョナサンはガリガリと頭をかいた。
「このレバーを操作すればいいのか?
でも明かりが灯っただけだったぜ」
「もう一度倒すと、なにかわかるかもしれませんよ」
グロリアはそう言うと、レバーを奥に倒した。
すると明かりは左、右、左、左右同時、左、左、左右同時、右と灯って消えた。
「なにかありそうだな、これ」
ジョナサンは、あごを手で撫でながら言った。
「この部屋自体をよく調べてみる必要がありますね。
光よ来たれ、ブライトン!」
アリーナがそう詠唱すると、薄暗かった部屋がいくらか明るくなった。
「はー、なるほど。
こうなっていたと言うわけか」
ジョナサンがそう感心していると、グロリアは言った。
「これまでの部屋みたいな立て札はないみたいですね」
「見てください。
壁にボタンがありますよ」
確かにアリーナの言う通り、左右の燭台の下にひとつずつボタンがあった。
「試しに押してみますかね」
グロリアがそう言って右側のボタンを押すと、突然辺りは暗闇に包まれた。
「間違えると明り取りの窓を閉じるわけか」
ユキナリがそう言うと、アリーナは困った声を出した。
「さっきから試していますが、光魔法も無効化されてしまうようです」
ほぅと声を上げ、ユキナリは続けた。
「そしてここで、しばらく動けなくさせる。
ボタンの押し方に、なにか法則性がありそうだな」
そこまで聞いて、ジョナサンはあっと声を上げた。
「そうだ、さっきの明かりだ!
火がついたとき、妙なつき方をしていた。
多分、あの順番にボタンを押せばいいんだろうな」
「でも、どうしますか?
この状態だと、動けませんよ」
アリーナがそう困り声のまま訴えると、不意に視界が戻った。
「明り取りの窓、開きましたね」
グロリアはのんきにそう言った。ジョナサンはよっしゃと言ってから、指示を出した。
「アリーナはレバー担当。グロリアはそのまま右のボタン、ユキナリは左のボタンを担当してくれ」
「わかりました」
「はーい」
「承知した」
3人は各々そう返事すると、指定された持ち場についた。
「では行きます」
アリーナは掛け声とともにレバーを奥に押し込んだ。
燭台の炎は、さっきと同じ順番で灯って消えた。
「行きますね」
グロリアはそう言うと、ユキナリに目配せした。
ユキナリは黙ってうなずき、ふたりは各々に割り当てられたボタンを押した。
部屋は再び暗闇に包まれた。
「失敗のようだな」
暗闇に淡々としたユキナリの声が響く。
「あたし、ちゃんと押しましたよ」
グロリアは声だけで不服気なのがわかった。
ジョナサンは自分の体さえまともに見えない状態で、しばし考えた。
そして声高に結論を叫んだ。
「よし、俺が号令をかける。
ユキナリ、グロリア、タイミングよく押してくれ」
「はーい」
「わかった」
そうこうしているうちに、また部屋はほんのり明るくなった。
「よっしゃ、今回で決めるぜ。
左、右、左、同時、左、左、同時、右!」
ジョナサンの号令に合わせて、ユキナリとグロリアはそれぞれボタンを押した。
グロリアが最後のボタンを押し終わったとき、またどこからか鐘が鳴り響いて、奥のドアが開いた。
「やった、作戦成功だぜ!」
ジョナサンは満足げにそう言った。
そして自分がようやく活躍できたと、密かに安堵した。




