鏡とリュートの部屋
「今度はなんだか、やたらゴテゴテした部屋だな」
ジョナサンは部屋を見回して、そう感想を漏らした。
「とにかく成金趣味って感じですね。
金縁に宝石をはめ込んだ鏡が4枚も。
それにあれ、まるで玉座じゃないですか」
グロリアの言葉通り、部屋の中央にはまるで王族でも座りそうな、やたらと華美な椅子があった。
「感心している場合ですか。
また立札がありますよ。
ええっ、『鏡に映るものを弾け』とあります」
アリーナがそう言うと、ユキナリはうなずいて口を開いた。
「椅子にリュートが置いてあるな。
おそらくはこれを使えということだ。
しかし参った。
私は全く、西洋の楽器を扱えない」
「俺も弾けない」とジョナサン。
「私もです」とアリーナ。
「あたし、簡単な曲ならば弾けますよ」
グロリアが元気よくそう言うと、ジョナサンは満面の笑みを浮かべた。
「でかした、グロリア!
これで解決だな」
その言葉は、早速アリーナに打ち消された。
「気が早すぎますよ
まだ、なにもわかっていません」
「そうですよ。
立札の謎を解かないと」
グロリアはそう言って、額に手の甲を当てた。
アリーナは、グロリアに疑問を投げた。
「そもそも、リュートでなにを表せるというのですか?
私は、音楽についてはなにも知らないのですよ」
「これはあたしの予想ですけど、答えはAからGまでのアルファベットで表せる単語じゃないですかね」
「どうしてそう言えるのですか?」
「音階は、ドレミファソラシド。
アルファベットではCDEFGABCって感じで表されるんです。
だから多分、答えの音をリュートで引けば正解だと思いますよ」
「ああ、そうなのですね」
「でも、鏡に映るものって、なんでしょうかね?」
グロリアはそう言って、鏡を覗き込んだ。そして、ふいにあっと声を上げた。
「どうした?」
ジョナサンがそう尋ねると、グロリアは手招きした。
「団長にアリーナさん、ユキナリさん、来て見てください!」
そう言いながらグロリアは鏡の下側、宝石で飾られている部分を指さしている。
「その宝石がどうしたって言うんだ?」
ジョナサンが怪訝そうに言うと、グロリアは付け加えた。
「ここです。
ここに、みんなの名前が書いてあるんですよ!」
「本当か?
おお、マジだ!」
ジョナサンが飾りの部分を見ると、そこには確かに「JONATHAN」と書かれていた。
「でしょ?
で、団長の右がアリーナさんで、左がユキナリさん。
その左があたしです」
指定された鏡に自分の名前が宝石でつづられているのを見て、アリーナとユキナリはそれぞれ驚きの声を上げた。
「グロリア、よく気づきましたね」
アリーナがそう言うと、グロリアは少し得意げな顔をした。
「なんというかこの鏡、ここまで宝石ギラギラじゃなかったらかわいいのにと思ってみていたら、気づいちゃったんです」
「なるほど。
鏡の高さがバラバラだったのは、そういう意味だったか」
ユキナリはそう言って感心した。
「みんな並びましたね。
それぞれ鏡を覗き込んでください」
グロリアのその指示に、他の3人は従った。
「それで映るのは、顔。
つまりFACEというわけなのですね」
アリーナの言葉に、グロリアはうなずいた。
「そうです。
FACEの音、つまりファラドミの音をリュートで弾くと、ドアが開きますよ」
「うわー、これ、グロリアがいなかったら完全に解けなかったぜ」
ジョナサンは悔しがった。
グロリアはそんなことなどお構いなしに、部屋の中央まで歩いてリュートを手にした。
「じゃ、やってみますね」
グロリアはファラドミと鳴るように、リュートの弦を弾いた。
するとどこからか鐘が鳴り響き、カチリと音がして奥のドアが開いた。
「今度こそ本当にでかした、グロリア!」
ジョナサンはそう言って拍手したが、内心ではまた先を越されたと焦っていた。




