反撃のために
翌日1-4昼休み
「ケイちゃん、マツちゃん、話がある、って何?」
次の日の昼休み、ケイとマツ、それにユリは、1-4の教室に集まっていた。
「最近ティーの様子がヘンなんだよ。」
「ヘン、ってなんかあったん?部活の時はいつものティーちゃんやない?」
「それがね、いつもは普通なんだけど、昼休みだけ変なんだよね。最近、昼食が終わって昼休みになると、突然いなくなっちゃうの。」
「そうなんだ。ちょっと前は昼休みはオレたちと遊んでたのによ。最近は、探そうとしたときにはもうどっか行っちまってるんだ。」
「テスト期間は教室にいたけどね。」
「ティーちゃん他のクラスに友達でもできんたんちゃう?校庭、ちゃんと探したらおるんとちゃう?」
「そう思って探しみても全然いねえんだよ。クラスの中もこの通りだ。それにな、ティーに昼休みどこ行ってるのか聞いてみても、「うん、まあ」って。うん、まあ。ってどこだよ!」
「ねえねえユリちゃん、ティーさんがどこに行ってるか心当たり、無い?」
「うーん、私は知らんなあ。でもケイちゃんはともかく、マツちゃんまでティーちゃんの行き先、気にしてるなんて、意外やな」
「だって、秘密にされると、気になるじゃない!それに、怪しいだと思わない?わざわざ秘密でどこかに行くなんて。」
「怪しい?」
「ああ、よく考えてみろ。わざわざ行き先を秘密にして行く場所なんて一つしかないだろ?」
「そうです…年頃の男の子が昼休みに姿を消す…これは!好きな女の子のところに違いありません!!」
「行き先も言わずに行く場所なんてこれしかない!!ティーの奴!抜け駆けしやがってえっ!!」
「同級生に隠れて二人だけの秘密の場所で落ち合う…ティーさん意外とロマンティック…」
「えぇー………ティーちゃんに限ってそんなことないと思うけど…」
「ほんとにそう言い切れるか?結構情熱的な恋をするタイプかも知れないぞ!?」
「そうだよ!とっくに猛烈なアプローチをしてて、もうラブラブかもしれないよ!?」
「……」
「ということで、第一回 魔闘部探偵隊を結成する!!」
「……たんていたい?」
「そう!今回我々探偵部隊の任務は、川三法呈の後をつけ!ティーの彼女を!突き止めることだ!!」
「ええ!もしかして、尾行、するん?…って、私もやるん!?」
「ああ。その通りだ。」
「ユリちゃんは、気にならないの?ティーさんの彼女…」(ニヤニヤ)
「え!?ていうか彼女で確定なん!それに私は別にティーちゃんが誰と付き合っててもええし!?」
「そんなこと言って、ユリもほんとは気になるんだろ…ティーがどんな奴が好きか…」(ニヤニヤ)
「……………………………………………行こか。」
翌日 昼休み
いつもと変わらぬ蘭花中学校の昼休み。遊び盛りの中学生で溢れかえる校舎。その一角に、一人の少女が携帯片手に潜んでいた。携帯のバイブ音に気づいた少女は、辺りの様子を確認したのち、電話を取る。
電話の主が声を掛ける。
「こちらエージェントK。エージェントY、ターゲットの姿は確認されたか?」
「うん、ケイちゃん。ティーちゃんなら図書館前を通過してったで。」
「………ティーじゃなくてターゲットだ…それにオレはエージェントKだ。尾行がばれるかもしれないぞ。」
「そうですよ!エージェントY!私のこともちゃんとエージェントMってよんでね?」
「ケイちゃん、マツちゃん、その、エージェントとか、ターゲットとか、恥ずかしくないの?もう中学生やで?」
「なんでだ?カッコイイじゃないか?」
「…………。ティーちゃん二人の方いったんやから。頼むで?」
「任せろ!エージェントY!」
………………
(はあ……)
電話が切れ、一息つくユリ。
(ティーちゃんに限って彼女ってことはあり得へんやろうけど、確かに、何してんのかなあ…)
§
「ティーちゃん、ほんまにこんなとこいったん?」
蘭花中学校新校舎の南端。地上五階建ての蘭花中には、ここ南端にだけ、地下につながる階段がある。
「マツちゃん、ケイちゃん、地下、行ったことある?」
「いや、無いな、そもそも地下なんてあったのか。」
「ティーくん、地下で運命の人と落ち合ってるの…?ロマンティック……」
「…とにかく、行ってみれば分かるんちゃう?」
一行は地下への階段を下り、地下の様子を伺いながら歩みを進める。
「地下って言ってもそんなに変わんねえな。」
「茶道室…美術室…使ってへん時は鍵、閉まってるみたいやしなあ」
「まあ、地下も広いみたいだし、この階にいるのは間違いないんだから!はあ…どんな彼女さんなのかなあぁ…」
そんなことを話す一行、暫く進んだあと、ある部屋の前でユリが立ち止まる。
「…。あ、そういうことかあ…」
「どうしたエージェントY、何か見つけたか?」
ユリが入口の部屋名を指さす。
「ほらここ、ティーちゃんこういうとこ大好きやから…」
「え?……あ、トレーニングルーム…」
§
「ほらやっぱり。ティーちゃん、元気にしてる~?」
「げ、……ユリ。…あれ、ケイとマツもいるんだ。」
「ティー、昼休みも練習してたのか。」
「せっかくティーさんがラブラブなところ見れると思ったのに~」
「?…。ラブラブ?」
「まあ…それはともかく。昼休みもトレーニングって、セラちゃんに勝つ気満々やな。」
「ああ、覇王をもう使える奴に勝つなら…これしかないでしょ。」
「これ?トレーニングがか?」
「セラは俺より強いんだ。セラより練習するしか、勝つ方法はないしね。」
その時、後ろから二人の声が聞こえた。
「ああ、強者超えようとするなら、相応の地獄は覚悟しなければならないな。それに、いつだって強いのは修練を重ね続けた者だ。」
「今日はにぎやかだな。今年の一年坊は俺たちの代より修行熱心らしいな。」
「鎧井先輩、それに軍神先輩!」
魔闘部2年の鎧井先輩、それに部長の軍神先輩だ。
「軍神先輩、この修行熱心な一年坊共にも稽古、つけてやりますか。」
「ああ、それはいいな。それにティー、今日もそのつもりできてるんだろう?イチももう準備を始めてるぞ」
「よろしくお願いします…!」
そこまで話して、先輩二人が立ち去る。
「よっし、行くか!」
「って待てティー、お前先輩と練習してたのか!?」
「ああ、ケイもそのために来たんじゃないのか?練習して損はないだろ?いくぞ。」
§
蘭花中学校 魔闘用グラウンド
グラウンドの中心にはティー、軍神先輩が向かい合う。軽い実戦を交えながらの練習だ。グラウンドの外周にはケイたち、そしてイチ、そして少し離れた位置で鎧井先輩がその様子を眺めている。
「今年の一年はこの時期からトレーニングルームに来るとはな…まだあの部屋のこと、教えられてないだろうに…」
練習前試合前のコンディションの確認を行う二人を眺めながら、小さく呟く鎧井先輩。
かたや一年生たちはイチのことについて話していた。
「そっかあ。イチとティーちゃんはトレーニング仲間やったんやなあ」
それにイチが答える。
「うん、ティーもいつも昼休みはあそこで練習してたからね」
「それでティーと仲が良かったのか。ティーも連れねえなあ。オレも誘ってくれればよかったのによ!」
「そんなこといって、ケイさん、昼休みは真っ先に遊びに行ってるじゃない。」
「みんな揃ってるね。準備できたからそろそろ始まるよ。」
「佐倉先輩!何しに来たんですか?」
「んー、ちょっと頼まれちゃったからね。魔法障壁。」
「?」
その時、魔装用グラウンドの8本の銀のポールから薄緑の魔力が噴き出る。
そして、少しの時間が経つと、鎧井先輩とティー、軍神先輩、そしてケイたちを囲うように魔力の壁が四方を塞いだ。
「魔力障壁って、備え付けのボトルで展開してるとすぐ部費がなくなっちゃうから、こうして普段は私たちの魔力で展開するんだよ。」
「じゃあこの障壁は佐倉先輩の魔力なんですか?」
「そうそう。でもこれ結界術なのに、結構魔力消費大きくて、一回展開すると私だと半日は魔法使えなくなっちゃうんだよね。でも、軍神君や鎧井君が展開するわけにもいかないしね。」
「そんなに魔力使うのに、展開してよかったんですか?」
「私もどんな練習してるか見てみたかったしね、そろそろ始まるよ。」
§
そして、ティーと軍神先輩が模擬戦を終える。ティーの魔装は既にボロボロだったが、軍神先輩の魔装にも小さな傷が入っていた。
「なんだよあれ…!なんだよティーの今の動き!」
「あれが秘策…なんやろな。ティーちゃん、今度こそセラちゃんに勝つ気なんやな。」
呆然とする一年生たちに佐倉先輩が声を掛ける。
「さあ、次はイチ君、その次はケイ君だよ!」
こうして、ティーたちは練習試合の日を迎えた。




