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新たな技

数日後 魔闘用グラウンド


(いよいよだ…今日こそ、セラに勝ってやる…一年で…一番強いのは俺だ…)


「みなさん、準備はいいですか?初戦はセラさん対ティー君、二戦目はユリさん対マツさんですっ!」


審判の日和が声を上げる。


魔闘用グラウンドの隅、4本の銀製仮設ポールから魔力障壁があふれ出す。薄い障壁がティーとセラ、審判の日和を囲う。8本障壁と同じ広さ、高さの障壁が張られる。8本障壁と比べると強度に劣るため、公式戦準拠ではない。だが、1on1 を1,2戦程度なら、これでも十分すぎる強度だ。


今日の基礎練を終えた一年生たち。今日は一年生初の練習試合の日、初戦はセラVSティーだ。


残りの一年生6人はグラウンド隅に置かれた木材に腰を掛け、試合を待っている。その後ろには大量のおにぎりと肉が入ったフリーザーバッグが大量に置かれている。覇王は、使用後、死ぬほどお腹が空くのだ。


試合を待つ彼らの話題は、2人の強さについて、だ。


「いよいよだね!ティーさんとセラちゃん、どっちが強いかな??」


マツが疑問を投げかける。


「マツ。そんなのセラに決まってるだろ。前の試合から1月しかたってないしな...」


 セラの勝ちで当然だと言うカイト。


「ティーじゃねえか。前のあれ、もうプロみてえな動きだったぞ!」


ケイはティーを支持するようだ。


「ティー君、何か新しい技でもできるようになったのかい?」


「うん、ティーはめちゃくちゃ練習してたからね。僕もあんなふうに強くなりたいなあ。」


「けど、1on1は試合前に準備時間が1分ある。1分あればセラは覇王を出せるだろうな。いくら新技があったって覇王相手は厳しいんじゃないか?」




 「そういやあっちの先輩、めっちゃ気合入ってんな。」


 グラウンド中央で練習する先輩達。大規模な魔法が使われてるわけではないが、時々、叫び声が聞こえる。きっと激しい練習をしているのだろう。


 「もうすぐ都大会やしな。都大会はトーナメントやから、一戦でも負けたら、それで終わりやしなあ。」


 「一戦でも負けたら終わり、か…」


先輩の練習風景を眺めながらそんなことを話すケイとユリ。マツが話題を再びティーとセラの試合に移す。


「それにしても、セラちゃんとティーさん、羨ましいです!なんかいい感じのライバルで…」


「ライバルが羨ましいん?」


「だって、ライバル同士が死闘を繰り広げて、戦いの中互いを知って、拳で語り合うなかで認め合って、そしていつしか心の底から分かり合うパートナーになる、なんて、素敵じゃないですか!?」


「…。マツちゃん??」


「…………マツ?…………そうだ、ユリはティーと幼馴染なんだろ?どっちが勝つと思う?」


「私?うーん、私は…」





§



「それでは時間いっぱいです!準備はいいですか!?」


自然体で立ち、少し生真面目な顔で、緩く構えるティー。軽く飛び跳ね小さく笑うセラ。


「ティー君、楽しい試合にしようね!」


(楽しい…?セラにはこれが、楽しいのか…)


「楽しいかは、ともかく、今日こそ俺が勝つぞ…!」


「ふふん。今日の私はなかなか強いですよ!?」


「? 何かあるのか?」


「試合に備えて午後の授業でお昼寝してきましたから!!今日のパワーは万全ですよ!」


「?? それで試合に有利になるのか?」


「それに今日はくまさんのパンツはいてきましたから!!」


「??」


ティーが呆然としている。


「セラちゃん!?何ゆうてんの!!??」


「? ユリちゃん?どうかした?」


「…………いや、あとでええわ…。」


(今度から午後の授業はサボるか…)



ティーはそんなことを考えていた。


「こほん、授業はサボらないでほしいですが、とにかく、試合を始めますよ?」



「ルールは1on1形式、公平性のため、最初に1分間の準備時間があります。準備中は相手への攻撃、足元の円の外に出るのは禁止されていますが、それ以外ならどんな魔法を使っても構いません。それでは、試合を始めますよ。」



「それでは準備時間一分間、はじめ!!」




「風刃!!」


ティーが魔力で風の刀を形成する。十分な長さの薄緑の剣を右手に、軽く構えを取り準備時間の終わりを待つ。近接戦主体のプレイヤーがやる事は余りない。


(遠距離主体のセラには、接近戦で刀を捌く手段はない…相手の懐に飛び込めれば勝ったも同然だが…)


遠距離魔法は強力だが、武器魔法と違ってその都度詠唱が必要だ。前衛がいるのが前提の能力、つまり1on1では圧倒的に不利だ。この準備時間は遠距離魔法を主軸とするプレイヤーが魔法をあらかじめ展開するための時間だ。


 だが、プレイヤーが覇王を使えるなら、この準備時間は別の意味を持つ。



「はああああああああっ!!!!」


「やっぱくるか…!」


 一分弱の溜めの末、セラの頭上に大きな結界が現れる。そして、炎熱とともに爆発が起こる。


フェニックス。再び顕在したその炎鳥は、いつ見ても神々しい。



(ほんと、なんで使える…?3年生だって使えない先輩ばっかなのにな…………けど、)


「…そうでなきゃ倒しがいがない…」


「前よりパワーアップしたニックちゃん、見せてあげる!」



まもなく一分が経つ。緊張の中、日和先輩の呼吸の音が聞こえる。


「はじめっ!」



試合が、始まる。



(さあ、何で来る…?)


両者動かず相手の出方を伺う。


「攻めてこないの?なら私から行くよ!!はあああああああ!!」


セラの魔力が急速に高まり、不死鳥の両翼が煌く。


「おいおい、なんだあれ…」


両翼から生み出される無数の火球。セラの小さな体から生み出されたとは思えない巨球に、ティーの全身を熱風が駆ける。


(熱い!!……1,2、……4球か。あの出力だと1球でも俺の魔装は持たないのにな。)



(来るっ!!!)



「行けっ!!!」


火球がティーめがけて飛び込んでくる。


同時にティーが、火球目掛けて走り出す。





「あいつ!何やってんだ!!あれじゃやられちまうぞ!!」


「ティーちゃん、『風走』、やる気なんや…!」


「マジかよ!けど一発でもあたったら終わりじゃないか!」


「ティーさん!もう当たっちゃう!!」




炎熱も全身に受ける。目前に迫る火炎に、敗北に臆さず小さく息を吸う。



(まだ………まだ…………………………いまっ!!)


衝突する瞬間、ティーがしなるように跳ね、右に方向転換する。流れゆく火球を横目にふっと地に降り立つ。


「避けやがったっ!!」


「でもまだ次が!!」


 次の火球が直前に迫った時、次は大きく左に跳ね急速に方向転換する。次々に迫る火球を時に流れるように、時に跳ねるように次々と躱し走る。



そして4球全てがティーの眼下を流れ落ちた。


「スゲエぞティー!躱しきりやがった!!」


「人があんな風に突然方向転換できるのか…!?ケイ、あれが、『風走』なのかい?」


「ああ、なんでも風で足場を作ってるらしいぜ。その足場で自分の体を跳ねさして加速してるってよ。トランポリンみたいなもんじゃねえか?」


そこにイチがすかさず付け足す。


「それだけじゃない。本来足場のないところに足場を作れるから、地面だけじゃできない自在な動きもできるんだ。あれならティーの機動力を十分に生かせる…!」



 一方セラは自身の火球を全て躱され驚き、そして、何かを期待するように笑みを浮かべていた。


「ティー君!!!すごいよ!!あれを全部避けきるなんて!!じゃあ、これならどう!?」


セラが叫ぶ。


「……光速の炎球っ!!!」


今度の火球は一球だけだ。だが…


「…速い!!!」


瞬間、ティーが大きく空へ跳ねる。


「あれも避けやがった!!」


ティー自身がセラに突っ込むようにして走ったがため、二人の距離は最初から大きく縮まっている。その分有効射程も縮まりほぼラグのない着弾だった。それでも、危なげなく炎球を避け、ゆったり地につくティー。


再び攻撃を避けられたセラが笑みを浮かべながらも一歩後ずさる。


「うそ…すごいよ、ティー君!でもこれからが本番だよ!!」


再び魔力を高めるセラ。あれだけの火球を放とうとも、まだまだ魔力の弱まりは見えない。不死鳥の両翼が再び煌く。


(いける…!いけるぞ!‘風の足場’は覇王にも通用する!!)


「ティー君、行くよ…!」


「ああ…!」


再び、両者が魔力を高める。


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