会議
―後日 蘭花中学校―
都大会エリア予選を終え、蘭花中学はエリア予選を4戦全勝で終えた。後日、まだ試合を終えていない他校が試合を終え、結果、蘭花中学校は全体1位で通過する。喜びも束の間、一度も負けられない都大会本戦が迫る。それに向け、蘭花中学のメンバーも最終調整…の前に、中間テストがやって来るのだった。
-3年4組 クラスルーム 昼休み―
「お、いたいた。佐倉、佐倉、どうだ?エリア予選のデータ整理は済んだか?」
「今年の!せいやは!!つよそうか!!!!」
3-4の教室に二人の男子が訪れる。佐倉と呼ばれる女子と佐倉と話している女子がそれに気づき、もう一人の方の女子が、その2人の呼びかけに答える。
「坂あ!もっちょっとしずかにしてよっ!」
「ハハハ、坂君も大阪君も、テスト期間でも魔闘の話ばっかりだね」
「それは佐倉も一緒だろ?坂の奴がどうしても気になるみたいでよ」
3-4のクラスルームに訪れたのは坂聖と、大阪優の二人だ。二人とも魔闘部のレギュラーだ。
2人はこれから都大会本戦で戦うことになる西町谷の情報を求め、3-4のクラスルームに訪れた。
坂を注意するのは雨晴ルミ、彼女も魔闘部のレギュラー、そして佐倉奈々、彼女はレギュラーではないがまた、重要な役割を担っている。
「で!せいやは!」
「坂はちょっと静かにしてて!サクちゃん、データはまとめ終えた?」
「うん、テストターム入っちゃたから、まだ全部は済んでないんだけど、主要なところはまとめ終えてるよ。」
佐倉先輩がカバンの中から書類の束を取り出す。
「まってたぜ!はやく見せてくれ!!」
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そのころの1-4 クラスルーム
こちらも昼休み。ティーとケイ、マツのクラスだ。そこに、ユリが一緒に勉強しようとやってくる。
「ティーちゃん!数学教えてくれへん?……って、アンタら、なにやってんの?」
こちらのクラスではケイがロープで手以外の全身を椅子に縛られていた。その両隣にはティーとマツが立っている。
「くそッ!ティー!マツ!!このロープ!!外してくれよ!!」
「駄 目 だ!!お前こうでもしないと逃げるだろ!!」
「そんなことない!!!!勉強ぐらい逃げずにちゃんとやるって!!」
叫ぶケイをマツが笑って諫める。
「あはは、…ケイさん?そうやって今まで何回逃げたと思ってるの…?」
「ひ、マツ、いつからそんな怖い顔…」
「ん?……こわいですか?」
「い、……いや、そんn……あ!ユリ!!たすけて!!!」
ユリ三人に近づく。
「…ティーちゃん、ロープなんてなんであんの?」
「先輩にケイの試験がヤバいって相談したら部室から持ってきてくれたんだ。これが魔闘部の伝統らしい」
「で ん と う??どんな伝統だよ!!」
「ティーちゃん…流石にかわいそうやない?めっちゃ反省してそうに泣いてるで?」
ケイは両目から滝のような涙を流していた。ケイはユリの言ったことに同意するように頷きまくっている。
「ユリのいう通りだ…反省してる、反省してる…」
「すまない、ユリ、男には譲れないモノってのがあるんだ」
「ごめんねユリちゃん、でも私たち、これが嘘泣きだって知ってるから。」
「あ、そうなんや。」
「………うああああああああああ!!!」
「……で、ケイ、ここ『ユー ミズ サトコ』じゃなくて『ユー アー サトコ』だ!…これはさすがに暗記するしかないんだ!!分かるなああああ?」
「ケイさん?せめて『ミズ』じゃなくて『イズ』って間違えてくれませんかああああああ!」
「……アハハ、二人とも楽しそうやな…。数学は今度聞くことにしよかな………あ、セラちゃん、いいとこに!すうが…」
「良い子のみなさん?友達を縄で縛らないようにしましょう!あと、勉強は優しく教えてあげるのがおすすめですっ!」
「…………。セラちゃんまでおかしなってもうた…」
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ふたたび 3-4 クラスルーム
レギュラーの大阪、坂、ルミの三人、それに佐倉は西町谷の情報を机に広げ、隅々まで確認していた。
やはり、一番目を引くのは覇王、天使エンジェルだ。
「『天使エンジェル』か!強そうじゃねえか!!」
「けどよ坂、俺達は相性が悪いぜ。ルミか軍神あたりに任せるのが無難だろ」
「わたし?まあ確かに私ならそんなに厳しくないけど、これは、選出外すと、ヤバそうだよねえ~」
「いいや!!俺がやる!!相性なんて乗り越えてやる!!!」
「そうだね。坂君にも準備はしてほしいけど、軍神君かルミちゃんに当てるのが、一番だね。」
「それに坂、いくら佐倉でも、狙った奴とマッチングさせるのは難しいからな。」
「佐倉!頼みます!!ボス!佐倉様っ!!」
一通り資料を眺め終えた4人。ルミがふとぼやく。
「それにしても、今年の西谷、思ったよりたいしたことないよね。これなら、覇王との試合はなーなーでも、他の試合で勝てば、全然いけそうじゃない?」
「うーん、私もそうかなって思ってたんだけど、ちょっと引っかかることがあってね。」
「引っかかる事?」
「この佐々木って言う選手、去年の選手なんだけど、今年出場してないんだよね。」
佐倉はシーズン前の資料を指さす。佐々木選手について書かれた情報は間違いなく彼が当時エースだったことを示していた。
それを見た四人。間違いなく佐々木選手はエース格、それに今魔闘をやっていないといことは考えられない。つまりこれが意味することは一つだ。
「つまりなんだ、温存してるってことか?…西谷にしちゃあ、珍しくないか?」
「お!まだ強い奴がいるのか?」
「私は、そうだと考えてる。温存はリスクが大きいし、西町谷はうちと同じ安定志向だから、エース級って訳ではないと思うんだけど。もしこのままのメンバーだと、西町谷にしては仕上がりが鈍すぎると思わない?」
毎年、どの学校も出場選手は変わり続けるが、それでも毎年変わらない学校の特色がある。蘭花や西町谷のような強豪校は確実に全国に行くため、リスクを取らず、勝率の高い戦術を取ることが多い。優秀な選手の温存が高リスクなのは、言うまでも無いだろう。
「確かにそれはそうだね。1位通過の私たちと決勝で当たるってことは西町谷は予選4位ってことでしょ?」
「ベスト3が星蘭、うち、西谷じゃねえのって珍しいよな。」
「他の中学に覇王持ちがあらわれるとその通りに行かないことはあるけど、今年みたいに他に覇王持ちがいないのに4位っていうのは、私の知る限りでは、ほとんどないね。」
「じゃあその佐々木っていう選手も対策しとかなきゃって訳か。」
「うおおおおおお!!!やっぱ大会は燃えるぞおおおお!!!!!」
燃える坂を大阪が諫める。
「テストタームからそんなに燃えて、そのまま燃え尽きるんじゃねえぞ」
「うおおおおおおお!!!」
「テスト明けは初戦の元町と、西町谷対策だね。それより、坂君、テスト落としちゃダメだよ?」
「そうそう!居残りくらって部活出れない!とかダメだからね?」
「おう!テストも100点だああああああああ!!」
そうして、休み時間が終わる。坂と大阪が自らのクラスへ帰っていく。
「いやー、坂阪コンビは魔闘のことばっかだねえ~」
「そうだね。」
(……………今年の西町谷、何か変……………でも、彼らならきっと、どんな敵が来ても勝ってくれるよね。)
§
―5月中旬―
テスト勉強に励む者、励まない者。何はともあれそんなこんなで一週間と少し。彼らはテスト期間を終える。2年生、3年生が迫る都大会に思いを馳せながる中、そんなこと知る由もない魔闘部26期、1年生の8人にも、変化の波が訪れようとしていた。
テストを終え数日。
入部から暫く経ち、随分慣れてきたところ朝練が始まる。ランニングのような基礎練は朝にやることが多い。
今日の朝練もランニングだ。
「マツちゃんガンバ!!あと10周や!!」
「あと10周!?1周じゃなくて??……死ぬうううううううう!!」
「だいぶ体力ついてきたんちゃう?先月よりええ感じちゃう?」
「あれだけ、走らされたら!流石にね!!!」
そんな二人の後方、グラウンド中央から日和先輩の声が聞こえる。
「皆さん、いい感じですよ!頑張ってください!!」
「それにしてもビックリやったなあ、日和先輩、あんなに速いなんてなあ」
「まさか、セラちゃんとティー君より速いなんてね」
「あれで、2年生のなかでは、遅い方なんて、信じられへんなあ。」
今日のランニングには日和先輩も参加したのだ。結果は日和先輩の勝ち。ティーやセラとは僅差ではあったが、それでも2年生にはもっと速い人が多いという。
既に完走したティーは、日和先輩にも対抗意識を燃やしていた。
「日和先輩!!次回こそ!勝ちます!!なので、また走ってきていいでしょうか?」
「ええ!いい心意気です!ですが次回も負けませんよ!」
「日和先輩!今度勝つのは私ですっ!!」
「セラさんも、その調子で頑張ってくださいね?」
「はい!私も!走ってきます!」
(ミニ新歓の時からそんなに期間もたっていませんが…タイムが上がっているのはマツさん、ケイさん、それにイチくんといったところですね…長距離の経験がまだ少ない方のタイムが上がっているといったところでしょうか…)
魔装闘技を行うのは小学生は禁止だ。魔装の扱いを誤れば重症、最悪死にえる競技であり、魔法の扱いが安定しない若年期に行うのは余りに危険だからだ。大会が中学生までに拡張されたのも大昔と呼べるほど昔の話でもない。
つまり、中学新入生はみな未経験からスタートするわけだが、それは当然、1年生の持つ能力がその時点で同じということを意味するわけではない。それまで積み重ねてきたものの差が、こうしてはっきりと表れている。
(といってもまだまだ本気をだしていない人もいるみたいですけどね…そろそろアレの、時期のようですね…)
「…ケッ、元気なことだねえ、あんなに走ってなんになるんだよ。」
「カイトは走ってこなくていいのかい?キミもまだまだ元気そうじゃないか。」
走り終え、グラウンドに寝転がるカイトの隣に座るのはイブ。穏やかな金色の短髪をなびかせ、青い目を輝かせる彼もまた、魔闘部1年生の一人だ。
「オレは無意味に走ったりしねえよ。無意味なことはやらない主義なんだ。それならイブが走ってくればいいんじゃねえか?」
「はは、ボクは今走り終えたばかりだよ。カイトこそ、ティーに負けてしまうかもしれないよ?」
「負ける!?俺はあんな奴に負けねえよ。それにもし、負けたところで、何にも困りゃしねえよ。」
「そうなのか?僕にはそうは見えなかったけどな」
「……そうか?俺は“プロ”になれれば何でもいいんだよ。」
それから少し経ち、間もなくユリが、そしてしばらく遅れてマツが、完走する。
「そういや今日はケイ君おらんかったなあ。いつもマツちゃんと一緒にヒイヒイゆうてんのに。」
「ケイさん、ダメだったの…」
「ダメ?」
「試験、やっぱり赤点だったのから…ケイさん、補習受けてるの…」
「…ああ…」
それに暫く遅れてイチがなんとか完走する。これで全員がランニングを終えたことになる。
「皆さん走り終えましたね。それでは朝練は、ここまでです。放課後は、いつもと違って、魔闘用グラウンドに集合してください。」




