地下
「次は左向いて200歩。そんで次は上に256歩…………」
ケイが持ち込んでいた地下室への行き方に従って、旧校舎内を練り歩いていた。ケイ曰く、旧校舎の下駄箱からスタートして、この手順に従って歩くと地下室の入り口に辿り着けるという。
「突き当ったら次は右に63歩、その次は上に363歩……」
「ティーちゃんなんかこれ、アレに似てへん?」
「アレって...?」
「ほら、昔ゲームであったやん。真っ暗な場所、こうやって歩いていくやつ…」
「ああ。あったな…」
「あれって一歩でも間違えたらあそこから出られなくなるやん?これもそうなんかな?」
「!?!?…そんなわけ……………そんなわけないよなっ!?」
「ふふっ。ティーちゃんおもろいなっ!!」
「なあケイ!!コレ、ホントに合ってんだよな!!」
「さあな。オレも噂で聞いただけだからなっ!!」
「なっ!!」
「次は左に722歩、右に18歩…」
そうして、旧校舎の中を進んでいく。
「ここだ!」
遂に噂が記した場所へたどり着く。
「ってここ、部室の中やない!」
そうして彼らが辿り着いた場所、そこは職員室の隅の方、つまり彼らの部室の中だった。
ユリがケイに尋ねる。
「ケイちゃん、ほんまにここであってるん?どう見てもいつもの部室やで?」
「う~ん、とりあえず、地下に繋がってる道がないか、探してみようぜ。」
§
「あ!みんな!!ここ、ヘンだよ!!」
部室である旧校舎の職員室で地下へとつながる道はないかと探す一年生たち。地下へとつながる道を探す中で、先生用の机の一つに潜っていたセラが、唐突に大きな声を上げた。
「どうしたの?セラちゃん?」
セラの声に皆が集まってくる。
「ホラ、ここの床、他のところと叩いたときの音が違うんです!!」
「ほんとか!?」
それを聞いたケイたちは机をどけ、床をたたいてみる。
「ほんとだ!ちょっと音が違うぞ!もしかして、この下にあるのか!?呪いの甲冑が!!」
それを聞いたティーが少し驚く。
「じょ、冗談だろ!?そんなの、いるわけ…!」
それにカイトが同意する。
「ティーのいう通りだ!呪いの甲冑なんているわけ……。それに、音がするつっても、取っ手とかねえし、これじゃ入れないから、調査はここで終わりだな!な!?」
カイトのいう通り、音が違う床を開く方法が存在しなかった。これでは下がどうなっているか調べようがない。
カイトの言葉に、セラが応える。
「大丈夫!私に任せてください!」
「セラ?」
そういうと、セラがみんなに少し離れるように促す。そしてこう叫ぶ。
「火球の雨!!!」
「「え!!!???」」
職員室を、光と爆音と炎熱が飲み込んだ。
§
―同時刻 旧校舎の屋上―
「う~ん、いないみたいだね。一年生たち。」
一方の三年生と顧問たち。彼らは一年生を探しに屋上まで来ていた。だが、一年生を見つけられず、屋上に集まっていた。
「やっぱり都市伝説を追ってるなんて、そんなことなかったんじゃねえのか。」
「そんな馬鹿な…。夏の夜の学校と言えば肝試しに決まってるじゃないかあ!!!」
「でも、少なくとも屋上にはいないみたいだぞ……どうする?」
「うーん…。」
一年生の行く先の当てがなく、困り果てている一同。
その時、階下から巨大な爆発音が響き渡った。
突然の爆発音に、驚く一同。そして、嫌な予感が背筋を走る。
「なんだ!?今の!!」
「一年生たちなのかな!?」
「何かあったのかも知れない!!早く行こう!!!」
§
―再び 職員室―
「ちょ、セラちゃん!?いきなり何やってんの!?」
突然魔法を放ったセラに驚く一年生たち。だが、セラの顔は少し満足げだ。
「えへへ、ユリちゃん、ごめんなさい。でも、ほら……」
セラが床を指さす。セラの魔法によって職員室の一角は焼け焦げていた。もとが職員室だったことも分からないくらいに燃え、焦げている。だが、そのセラが指さした中心には地下へと続く階段があった。
「これ!階段やん!!」
率先して甲冑を探していたケイとイブも、とても驚いていた。
「!?マジかよ…!ホントに階段が…!」
「凄い!!やっぱりこの都市伝説は、ただの噂じゃなかったんだ……!!」
そして、ケイが息を飲んで言う。
「行こう。旧校舎の地下へ……!」
そうして、旧校舎の地下へ降りていく一行。かなり長く続く階段を下っていくと、突き当たりに扉があった。
先頭を行くケイが扉に手を掛ける。
「開けるぞ……!」
ケイが扉を開く。そして一行が扉の中へ入る。
「ここは……?」
一年生たちが入った部屋は、異様な空気に包まれていた。
学校の教室2つ分はあるであろう広さに、天井も地上2階分はあると思われる高さの部屋。その部屋の全体に、見慣れない紋様が描かれている。まるで、古代遺跡の一室に入ったかのような気味の悪さだ。
そして、部屋の正面には、閉ざされた巨大な扉がある。
ケイが思わず呟く。
「なんだこの部屋……。」
それにユリも同意する。
「これは、ティーちゃんとカイトちゃんやなくても、気味が悪いなあ……。そういえばティーちゃん、カイトちゃん、大丈夫?」
「なあ、カイト……おれたち、ゆめ、みてるんだよな………………………?」
「ああ、まちがいない。がっこうのちかにこんなもん、あるわけないからな……………」
「やっぱダメそうやな。」
突如として現れた古代遺跡のような一室に困惑する一同。その時、部屋の入り口の方から声がした。
「あ!みんな!!無事だったんだね!!!」
ユリたちが後ろを振り向く。
「佐倉先輩!!それに、里奈先生に仙田先生に先輩方まで……どうかしたんですか!?」
§
「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!一年生のみんなが無事で!おじさん!!!!嬉しいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
「ちょっと東、てめえは静かにしとけ。まあ、無事でなによりだ。つっても部室は無事じゃなかったが。」
「ははは……。」
ぼやく大阪に、パニック状態から復活したティーが苦笑いで答える。
一年生を追いかけていた三年生と顧問の二人が合流した。三年生たちは一年生たちに少し遅れて職員室に飛び込んだ。爆発跡と地下へと続く階段を発見し地下に一年生たちがいることを確認し突入。そして今に至る。
一年生たち全員の無事を確認した後、大阪先輩をはじめ、一同の関心はこの奇妙な部屋に移っていた。
「それにしても何なんだ、この部屋は…………」
古代遺跡にも似た異質な紋様が壁中に描かれた一室。そして部屋の一面の大きさに迫る巨大な扉。何の知識のない大阪先輩やティーが見ても、明らかに何か、特別な部屋であることが分かる。
顧問、副顧問の里奈先生、仙田先生の二人も、この部屋の存在には驚きを隠せないようだ。
「里奈先生、旧校舎にこんな部屋があるなんて、聞いたことありましたか?」
「無いですね。それより、一年生の無事を祝って一杯やりたいので、早く帰りません?」
「…里奈先生…………。」
(それにしても、教師にも存在が伏せられている部屋があるなんて……)
不用意に触って、何かあったら事だ。そのため、基本的に皆、部屋の中心で待機している。だが、佐倉先輩だけは壁に近寄り、扉を調べている。この部屋の正体に心当たりがあるという。
扉を入念に調べている佐倉先輩に、大阪先輩が尋ねる。
「佐倉!何か分かったか!?」
その声を聞いた佐倉先輩が振り返り、その問いに応える。
「うん。この部屋、『結界室』で間違いないと思う。」




