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あと15日 ③

 日和先輩はまだ魔力を高めている。こちらから攻めよう。




 ティーが動く。炎の海となった一帯に突っ込む。炎の熱に僅かに魔装がすり減っている。勝敗に影響するほどのダメージでは無いが、長時間ここに居るのは避けたい。



 炎の海となった一帯を抜ける。炎の海を抜けた瞬間、日和先輩が叫んだ。



「火炎砲!!」



 日和先輩が構えていた火球を放つ。魔力を高めるのは中断したようだ。火球は連装花と比べると一球だがそのサイズが大きい。





(行くぞッ!!)




 ティーが足元に魔力を込める。するとつむじ風の足場が現れる。



 足場を使いティーが上空に思いっきり跳ねる。




 大きく宙に浮いたティー。その眼下で着弾した火球が爆発する。




 上空に浮いたティーを視認した日和が、追撃せんと再び構える。






「五月雨火炎!!」





 日和の周りに小さな炎の粒が無数に現れる。炎の弾幕で、空中で無防備になったティーを確実に狙い撃つつもりだ。先ほど使った時と同様、着弾すると爆発するはずだ。それに、任意のタイミングで爆発させることも可能だろう。空中に居るティーに避けるすべはない。



 日和先輩の展開した火球を視認したティー。完全に無防備な状態にもかかわらず、ティーの顔には焦りはない。





(しめた!!やっぱりそう来るか!!)





 空中のティーがバランスを取り、進行方向を日和先輩の方に調整する。ティーの態勢は、ティーの頭が地上に居る日和先輩の方向を向いている状態、つまりほとんどひっくり返った状態だ。そのまま再び足に魔力を込めると、ティーの足側に先ほどより巨大な風の足場が現れる。




 


 風の足場の風の勢いを急速に速まる。ティーが足場を蹴り、日和先輩目掛けて突進する。



「…まずっ!」




 日和先輩がティーの狙いを察した。攻撃を受けてでも距離を詰めるつもりだ。風の足場で加速した、ティーのスピードは凄まじい。既に五月雨火炎の照準は、先ほどティーのいた場所の周囲に絞られている。これでは今から五月雨火炎を放っても、全弾を当てることは不可能だろう。それに多少の爆発をもらってもあのスピードなら、魔装が受けるダメージは大きく軽減される。



 ティーのスピード、技術、判断力は一年生と思えないほど卓越している。一度ティーの間合に入ってしまえば、日和先輩は明確に不利だ。




 かなりまずい状況だが、日和先輩もそれに怖気づくような選手ではない、ほぼコンマ一秒の合間に決断し、構えを変える。






「爆炎花ッッ!!!!」






 ティーが日和先輩の眼前にせまるとはほぼ同時、五月雨火炎の炎の粒が、日和先輩の正面に集まり、爆発する。五月雨火炎を中断し、その炎の粒を活かして爆炎花に切り替えた。炎の爆発がティーを飲み込み、その爆発の反動を使って日和先輩が大きく跳ねる。距離を詰めさせるわけにはいかない。





(これで、なんとか凌いだかしら…)





 爆炎花の反動で飛び距離をとった日和先輩がそう考える。爆炎花の爆発は確実にティーを捕えていた。一時は危うかったが結果的に良いダメージを与えられた。魔装の破壊まではいかないだろうが、これで試合を優位に進められる。





 そう考えた直後、爆炎花の爆発の炎が揺れた。その揺れを見た日和先輩が誤算を悟る。




(来るっ!!)




炎の中心からティーが飛び出してくる。爆炎花でティーを吹き飛ばせたと考えていたが、誤りだった。ティーは爆炎花をもろに受けてでも、距離を詰めるつもりだったのだろう。日和先輩は爆炎花の反動でだいぶ距離を取ったが、これではすぐに詰められてしまう。



 だが、同時にこれは好機だ。ティーは爆炎花をもろに食らったことで、魔装に大きなダメージを受けている。この距離で連装花や爆炎花のような一撃の重い技を当てれば、一発あれば十分魔装を割れる。




 「させないっ!!!連装花!!」


 


 日和先輩が両手に魔力を込める。先ほどまでのような大きな連装花は間に合わない。先ほどまでの連装花よりもやや小さい炎の弾二球が日和先輩の両端に現れる。そしてその二球を放つ。





 その二弾を視認したティー。ティーが咄嗟に作戦を考える。




 (行けるッ!!)





 連装花を確認したティーがチャンスを見出す。二球の炎弾の着弾地点は恐らく日和先輩とティーの二人のいる位置の殆ど中心辺り。そして炎弾が着地地点に接近するにつれて、日和先輩の位置からだと炎弾にティーの姿が隠れ見えなくなる。それを利用する。





 まだ、日和先輩の位置からはティーの姿が見えている。それを確認したティーが少し走るスピードを落とす。




 人間は姿が見えないものの動きをどう予測するか。その最も主な方法は見えていた時の動きから連想するやり方だ。人間はどうしても一定の速度で走っているモノは見えなくなってもそのスピードで走ると、加速しているモノは加速し続けると、減速しているモノは減速し続けると咄嗟に考えてしまう。



 そしてその予想が脳裏にあると、その考えが隙になる。予想と違う動きをされ、意表を突かれた相手は反応が遅れる。視界から外れたタイミングを利用して急速に接近すれば相手は攻撃に対応できない。





 特に今回の場合は、炎弾があるお陰で、炎弾を避ける動きをすると予測するだろう。





 相手の視界に入るタイミング、外れるタイミングを利用して一気に距離を詰める。そして急加速に使う歩法と組み合わせる。ティーが習得してきた技の一つだ。





 炎弾に姿が隠れるタイミングを測りながら、足元に徐々に魔力を集めていく。







 そして炎弾に姿が完全に隠れる。その瞬間態勢を下げ、走り方を加速用にシフト、さらに足元に込めた魔力を爆発させる。




(天現流『雷鳴』!!)





 魔力を爆発させたティーが二球の炎弾の合間に突っ込む。






 炎弾を突破したティーがトップスピードで日和先輩に迫る。それを見た日和先輩から思わず声が出る。




「えっ」





 完全に決まった。日和先輩は完全に無防備だ。




「行けえええええぇぇぇ!!!!」




 ティーが日和先輩の脇腹の魔装を切り裂く。ティーの一撃は完全に日和先輩の虚を突いていた。完全に無防備な状態で攻撃を受けた日和先輩が大きく吹き飛ぶ。







 その光景を見たフィールド外のユリが声を上げる。



「凄い…!ティーちゃん、また『雷鳴』の精度上がってる……」



 それを聞いたケイがユリに尋ねる。




「らいめい?」



「雷鳴は私とティーちゃんが習ってた剣術の歩法の一つや。一気に加速するための歩法なんやけど、ティーちゃんは雷鳴はただの雷鳴やない。相手の隙を見極めて雷鳴の加速を最大限に活かしているんや。技を生かすにはどうすればいいか理解してる、簡単にできることやないで。」



「ティーとユリが前から知り合いだったのは、一緒に剣術習ってたからなのか。」



「まあ………だいたいそんなとこや。でも、ティーちゃん、最初は私よりも随分弱かったんやで。」



「え?そうなのか?」



「せや。最初は私より全然弱かったんや。やけど、負ける度、負ける度私に挑んできて………ティーちゃんはその度腕を上げて、気づいたら追い付かれてて、そのうちティーちゃんの方が強くなってたんや。始めて負けた時はビックリしたなあ。」



 昔を懐かしむように喋るユリ。



「ティーちゃんの本物の武器は技術じゃないんや。強くなるためやったら何があっても諦めへん強い意志や。これさえあれば、ティーちゃんは誰にも負けへんで。」




 再びフィールド上の2人。




 吹っ飛んだ日和先輩。だが咄嗟に態勢を立て直す。


 魔装のお陰で日和先輩本人にダメージはそれほど大きく無い。だがティーの一撃が入った所の日和先輩の魔装は大きくひびが入っている。大きな一撃だ。




(どうだろう…攻めるべきか……。いや!行くべきだ!!)




 ティーが追撃すべく駆け出す。日和先輩は態勢を整え魔力を集める。





「爆炎花!!」




 日和先輩がティーが迫る前に爆炎花を放つ。爆発で、距離を取り、その上爆炎でティーの進路を塞ぐつもりだろう。だが、ここで追撃の手を緩めれば再びチャンスが遠のく。





 ティーが風の足場で宙に跳ねると爆炎からあがる煙の中に飛び込む。そしてその中で待機し、辺りの様子を伺う。




 煙の合間から前方に日和先輩がいるのが見える。風の足場で方向転換すると再びトップスピードで日和先輩に突っ込む。




「なっ!!!」






 日和先輩が突っ込んでくるティーに気づく。だが、遅い。




「喰らえっっ!!」





 ティーが回転切りで再び日和先輩の魔装を切る。今度は日和先輩は咄嗟に受け身を取り、右腕で回転切りを受ける。






 それでも大きく後退した日和先輩。右腕の魔装にひびが入っている。先ほどの脇腹のひび同様大きなひびで、重い一撃であることが伺える。






 まだ、距離はティーの間合いだ。だが、ティーは追撃をやめ、その場で様子を伺う。




(くっ……。流石に魔力の消費が激しい…)




 ティーは一連の猛攻でかなりの魔力を消耗していた。まだ一年生、それも男子であるティーの魔力量はそれほど多くない。


 魔力量は年を重ねるごとに伸びていく。その上、中学生のうちは性差も大きい。年を重ねると魔力量や戦闘面での身体能力の性差はほとんどなくなってくるが、中学生、それも一年生(ただしここで中学一年生は13歳と14歳)となると男子は身体能力、女子は魔力量が先に発達する傾向にあり、その差は無視できない。それに中学生の一年間での成長スピードは凄まじく、日和先輩と比べると使える魔力量は非常に少なかった。


 ティーの武器は風の刀一本で生成や維持に使う魔力はさほど多くないが、距離を詰めるための強烈な身体強化や風の足場でかなりの魔力を使ってしまった。





(残りの魔力で日和先輩の魔装、割り切れるかな…)





 残りの魔力は多くない。これから先の一手、一手が勝敗に直結する。




 日和先輩も無闇に攻めも逃げもせず、こちらの出方を伺っている。日和先輩も理解しているのだろう。ここが正念場だ。




 様子を伺いあう2人。






 先に動いたのは、日和先輩だ。



「はああああ!!!!」




 叫びながら魔力を高める日和先輩。するとティーの正面に炎の粒が現れた。




 五月雨火炎か………いや、違う。




 日和先輩の手元でなく、ティーの目の前に現れた炎の粒。だが、炎が現れたのはティーの正面だけじゃなかった。




 ティーの頭上が輝いている。ティーの頭上に炎の粒が現れた。続いてティーの左右両隣、そしてティー後方。




 ティーの周囲全方向を、炎の粒が包囲した。



 まずい、囲まれた。



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