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あと15日 ①

―10日後―


季節は7月に差し掛かり、夏真っ盛り。ここ、東京郊外の住宅街も、体も溶けそうな猛烈な暑さが続いていた。


そんな住宅街の隅、蘭花中学校は今日、テスト最終日を迎えていた。




 蘭花中学校 1-4 クラスルーム





「あぁ………………ぶかつ、れんしゅう、ぶかつ…………ぶかつ、ぶかつ、れんしゅう、ぶかつ、ぶかつ、ぶかつ……………」



「まだぶつぶついってんのか?ティー?」





1年4組のクラスルーム、最後のテストを終えた1年生たちは誰しも少し晴れ晴れした顔でテスト終わりのホームルームを聞いていた。



ただ一人を除いて。






「れんしゅう、れんしゅう、れんしゅう、れんしゅう………」



机に突っ伏し、ぶつぶつ呟き続けるティー。隣の席のケイはそれを呆れた顔で見ていた。


魔闘部一年の中でもティー、マツ、ケイは1-4、同じクラスだ。あとはセラとユリが1-2、それにカイトとイブが1-1でそれぞれ同じクラスだ。



呆れるケイが前の席のマツに話しかける。



「なあ、マツ、ティーになんとかいってやってくんねえか。」



「ホームルームが終われば治るんじゃないかなあ……。それよりケイさん?英語、ちゃんと点数取れたよね??」



「だ、だ、だ、大丈夫だって!!」



「ぶかつぶかつぶかつぶかつぶかつぶかつ」




 そんなこんなしてるうちにホームルームが終わりを迎える。


「これで、今日のホームルームは終わりだ。」


「起立!気を付け!礼!」


「「ありがとうございましたー。」」






「終わったああああああああああああああああ!!!!!部活だあああああ!!!!!きたああああああああああああ!!!!練習じゃあああああああああああ!!!!」




ホームルームが終わった瞬間、ティーがクラスの外に駆け出して行った。


それを見たクラスの竹田くん(魔闘部ではない)は困惑してケイに尋ねる。


「なあ、ケイ、あれ、今叫んでたの、ホントにティーか?」


「…ティーは狂っちまったんだ。」



普段クラスではティーは割と一般人だ。そんな普通なティーしか知らないクラスメイト達は一同揃ってドン引きしていた。


 


「……マツ、俺たちも行くか。」


「………うん。」






レギュラー選抜戦まで あと15日







「それで…本当に私と戦うんですか?」



「はいッ…!よろしくお願いします…!」




 遂にテスト終わりの練習が始まった。テスト終わりの日のホームルームは昼過ぎには終わり、今日の練習はいつもよりも長い。


 久々の基礎練習を1時間少々流した後、さてこれから実戦練習、という場面で、ティーは日和先輩に勝負を申し込んだ。



「例年より少し早いですが…いいでしょう。今年は状況が特殊ですし、ティー君の実力も十分でしょう。」




日和先輩は一年生の練習担当だ。だが、これまで、入部してからの間、日和先輩と戦ったことは一度も無い。




「お!先輩と戦うのか!?ティー!」



話を聞いたケイがティーにそう尋ねる。



「ああ。これはいい練習になるぞ。」


「さっきまで狂ってたのが嘘みたいだなっ!」


「え……狂ってた…?」


「えっ…………」


「えっ…………?」



そう話す2人のところにカイトがやってくる。


「ケッ、ティー。セラの次は日和先輩か。どうせ勝てない試合ばっか挑んでどうすんだよ?」



「ああっ?文句あるか?練習だから負けてもいいじゃねえかよ。」


「あー、確かにそりゃそうかもな。けど、その調子じゃレギュラー選抜戦でも恥かくんじゃねえか?」



「そんなお節介要らないよ。それに、今回も俺が勝つからなっ!」


「…。そういって何回セラに負けたんだよ?」



「なっ、今回は勝つっ!!」


喧嘩するティーとカイトにケイが割り入る。


「まあまあ。……でもさ、ティー。オレもティーの勝利宣言はあてになんないかなあ…」


「なっ!!」






§





―魔闘用コート―


 一年生たちと日和先輩が魔闘用コートに移動する。普段は魔闘用コートを利用しているのはレギュラーの先輩と、レギュラーの試合相手をしている2年生の先輩だ。1年生が利用できるチャンスはほとんどない。


 だが、今年は状況が少々特殊だ。7月末にレギュラー選抜戦が開催される。レギュラーやレギュラーと実戦練習をしている2年生だけでなく、1年生や日和先輩にも実戦練習が必要だ。チャンスはできるだけ平等に与えられるべきだ。そのため、一日のうち少しの時間を1年生が利用できることになったのだ。



魔闘用コートの中心では、日和先輩とティーが準備を終えていた。



「さて、ティー君、準備はいいですか?」



「はいっ!!」




それをコートの端で残りの1年生たちが眺めている。




「それにしても、ティー、珍しいよな。セラじゃなくて日和先輩に試合を申し込むなんて」



ケイが疑問を発する。その疑問にユリが答える。



「選抜戦ではセラちゃんだけじゃなくて、2年生にも勝たなあかんからなあ。先輩とも戦っときたいと思ったんちゃう?」


「あ、じゃあ日和先輩もライバルってことか…って、それ、勝ち抜くの、きつくね?」


「せやなあ…」


そう話す2人にカイトがいう。


「まあ、この試合みれば俺たちが目指すモノが見えてくるんじゃねえか。日和先輩は自分は2年生の中だと強くない方だって言ってたけど、それでも参考にはなんだろ。」


「つまりティーちゃんは、私たちの到達すべきラインを見極めようとしてるんかな?」


「そこまで考えてるかは知らねえがな。」



「多分ティーが日和先輩に戦いを申し込んだのは、それだけじゃないよ。」


そういうのはイチだ。


「ん?どういうことだ?」


「日和先輩の戦い方を見れば分かると思うな。」








§






「それではルールを確認しますね。」


「はいっ!」


フィールド上の日和先輩が、コート外にもきこえるようにメガホンを通して喋る。



 「ルールは準備時間1分間、試合時間5分の一本勝負。さらに試合の開始位置は遠距離戦闘の選手が不利にならないよう通常の開始位置より中心から後方になっています!これは7月末のレギュラー選抜戦と同様のルールです!」




日和はルールを発表しながら、今回の選抜戦に思いを馳せていた。



今回の試合のルールはレギュラー選抜戦に則ったもので、準備時間を1分間とるタイプだ。1on1で不利な遠距離選手の魔法の溜め時間を確保するルールで、遠距離選手と近距離選手が闘う上でさほど珍しくないルールだが、問題は覇王がいるケースだ。



覇王のため時間は約1分。これが正に準備時間1分と重なる。通常の2on2や3on3ではこの一分をどう凌ぐかが問われるが、この準備時間があることで、ノーリスクで覇王を展開できてしまう。この結果、覇王を使えるものがほぼ確実に勝利することになるのだ。


そのため(余りメジャーではないが)覇王を使える者がいる場合、この準備時間を30秒にしたり、準備時間中の覇王溜めを禁止するルールもある。


先のティーとセラの試合ではティーきっての希望で準備時間1分覇王溜めありのルールで試合をしたが、選抜戦のルールを覇王溜め禁止のルールにする選択肢もあったはずだ。


これはこれで覇王を使える選手が覇王を使えるアドバンテージをほとんど活かせなくなるので問題だが、覇王があるだけでワンサイドゲームが展開されることは想像に難くないだろう。


そして、それでも覇王有りのルールが採択されたということが意味するのは一つだ。



(佐倉先輩…セラちゃんをレギュラーにするつもりなんですか…?)


このルールはセラに圧倒的に有利だ。十分に鍛錬を積んでいる2年生は兎も角、セラ以外の1年生に勝ちの目は無いと言っていいだろう。


(それでも…私は私のできることをやるしかありませんね。)



日和たちの、魔闘部の目標は全国優勝だ。レギュラーを狙っている1年生たちには申し訳ないが、それでもこの選抜戦は来年に向けての飛躍のチャンスになるはずだ。



まずはこの一戦、ティーくんのさらなる飛躍のため、全力を尽くそう。


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