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2つの会議①

 蘭花中学校 共用コート 


 歓迎会が終わり、翌日の休日が明けた日の共用コート。ティーたち1年生たち。1年生たちは都大会前と変わらずの基礎練習だ。まだ魔闘部に入って3か月。時折練習試合もはさむこともあるが、大半の日は基礎練習や魔闘の技術や歴史の勉強に費やしている。


 基礎練習が重要なことは言うまでもないが、こうしてまとまった時間で基礎練習を積めるタイミングは限られている。1年の後期になれば冬の全国に向けてのチームを主体とした練習が始まるし、それが終わればレギュラー選抜、来年の全国と続く。この1年の前期が終われば、部活時間はそのほとんどが実戦練習に使われてしまう。基礎練習は朝練や各自での練習に限られてしまうのだ。


 だが、基礎の完成度は実戦の結果に直結する。基礎練で得た体力や魔力量、それに魔闘に関する知識は、それ自体が勝敗を決するといってもいい。だからこうして徹底的に基礎を積み、これからの飛躍に備えるのだ。




 基礎練の最中、疲労に眠ってしまっていたティーが目を覚ます。練習の合間の休息をとっていた、マツとケイに合流する。




「ティー、目、覚ましたか。」


「うん、心配かけたね。」


「ティーさん、最近頑張りすぎじゃない?体壊さないか、心配だよ…?」


「ティーが頑張りすぎなのはいつものことじゃないか」




 全国も近くなり、2,3年生が精力的に練習するのに呼応するように、1年生の練習にも気合が入る。その中でも、ティーはより精力的に練習していた。



 ティーの実力を上回り、さらに覇王まで使えるセラに打ち勝つには、並大抵の努力ではいけない。それに、セラの使う高速かつ無数の炎球を攻略する手も考えなければいけない。その中で、少し無理することも増えてきている状況だった。


 マツのティーへの心配を聞き、気を付けなければいけないな、と思いながらも、手を抜きすぎればセラに追い付くのは難しくなることが頭をよぎる。セラはあまり、トレーニングルームで見かけたりはしないが、日々強くなっていることは間違いない。前進するライバルに追い付くのは簡単じゃない。同時に、練習も、すればするほどいい、というものでは無いことも理解している。



だが、それでも、セラを超えると決めたのだ。その道がどんなに険しい道だとしても。そして、いつの日かはルミ先輩、それに軍神先輩も…


 目指すのは世界で最も強い魔闘士だ。こんなところで立ち止まってはいられない。



「マツ、心配ありがとう。気を付けるよ。適度に。」


「ティーさん!?適度に、って、それ、気を付けないやつ!!」


「ははっ!ティーを止めても無駄だな!……あ、そういや、ルミ先輩の代わり、だれがやるんだろうな。」


「今日も会議、してるよね。」



 どうやらルミの代わりのレギュラーを決める会議は難航しているらしい。部長と副部長以外のメンバーは普通に魔闘用コートで練習しているようだが、部長、副部長の姿は見当たらない。それもそうだろう。今の蘭花にルミの不在は余りに大きい。そしてその代わりになる戦力が蘭花に無いことも言うまでも無い。



 「どうするんだろうなあ。やっぱり2年生の先輩だよな。2年生だと誰が強いんだろ?」



 「私もあんまり知らないかも。ティーさんは何か知ってる?」


 「サチ先輩は結構強いって聞いたよ。」



 サチ先輩。決勝戦会場で威勢よく応援していた個性的な髪形の先輩だ。1年生とはあまり関わりがないが、それは普段の練習でレギュラーメンバーの練習相手をしているからだ。


レギュラーメンバーの練習相手は実力ある部員が主になって行う。結果的に実力ある先輩ほど1年生とのかかわりが少なくなる傾向にある。



 更に、ティーが思い出したように付け加える。


「あと、鎧井先輩も結構強いらしいよ。」


「でも、鎧井先輩、公式試合には出れないって聞いたぜ。」


「試合に出れないって……不祥事とかだよね…?あの温厚でかわいい鎧井先輩が!?」


そんなことをぼやくマツにティーが答える。


「鎧井先輩がかわいい!?…まあでも、確かに鎧井先輩がなにかやらかすとは思えないよな…」


「じゃあやっぱサチ先輩か!?」


「ふふ、私、もう一人候補知ってるよ。」


「ん?」


「それがね、先輩が話しているの聞いちゃったんだけど……セラちゃんが選ばれるんじゃないか、って。」



「「セラが!?」」


「しーっ!ホントかわかんないし、セラちゃんに聞かれてがっかりさせたくないから。」



 マツが驚く二人に寄り、小声で話す。



 「なんでも、他のメンバー入れても大幅な戦力ダウンは避けられないから、ここは一か八か、覇王を使えるセラちゃんを入れるかも知れないんだって。」


 「マツ!?それホントかよ!?」



 驚きにケイの声が大きくなる。セラは覇王を使えるといっても、まだ1年生、魔闘を始めて3か月だ。試合をしたという意味ではもっと少ない。


いくら覇王を使えるといっても、まだまだ経験は足りないし、先輩との連携も容易ではないだろう。それに、覇王込みでのセラの扱える魔力量は規格外だが、それは1年生にしては、という話だ。


全国大会では、戦うのは2年生や3年生の選手、覇王抜きでもセラに匹敵する魔力を持った選手もいるだろう。その中にも覇王を使う選手もいるわけだ。そのような選手とセラが戦った時、どちらに軍配が上がるかは言うまでも無いだろう。



「そうか…セラが…確かにセラ、強いもんな…」


「ティー?」



「例えば俺がさ、大会までにセラに勝ったら、レギュラーになれるかな?」



「え?ティーが!?」


「うーん。どうだろう、蘭花は普通一度決めたレギュラーは変えないはずだし、厳しそうかなあ。っていうか、ティーさん、レギュラーになりたいの!?」


「いや、別にレギュラーになりたいって訳じゃないんだけど、セラが選ばれるのが……悔しいんだ。」



 下を向いてそう言うティー。セラがレギュラーに選ばれる。その事実はセラが上手であることを認めるようなもの…そう感じてしまうティーがいた。



 「でも、部長たちの決定だろ。オレたちにはどうしようもないんじゃないか?」



 「そうだよなあ…」





 その時、3人で集まり、ひそひそ話をしているティーたちに気づいたイチがティーに声をかける。



 「ん、ティー、何しているの?」


「あ、イチか。実はな…」



合流したイチに状況を説明する。



「そうか…ティーは相変わらず、セラに勝ちたいのか…」


「ああ、レギュラーにはならなくてもいいんだけど、セラより俺の方が強いって、証明したいんだ。」


「まあそのためにはセラより強くなんなきゃいけないけどな。」






少し考えた後、イチが言う。




「上手くいくかは分からないけど、一つ方法があるかも。」


「ほんとか!?」



「うん。少し、時間のかかる方法になっちゃうけど…」








§







旧校舎 一階 魔闘部部室(旧職員室)


 


 もう下校時間も迫る時間。魔闘部部室では部長、副部長による執行会議が大詰めを迎えていた。


 参加者は部長 軍神、副部長 佐倉、大阪、高石、日和の4人だ。今日はルミは不参加だ。ルミも流石に連日病室を抜け出すわけにはいかない。(意地でも参加しようとするルミを、佐倉が必死で止めた。)


 連日続いた執行会議。だが何日も日数をかけるわけにはいかない。8月の全国大会まで残された時間はもう少ない。



 


 「…というわけで、これがベストだと思うんだけど、この案でいいかな。」


 佐倉が最後に提案した案に同意を求める。



 それに納得した様子の大阪が答える。


 「ああ。いいと思うぜ。リスキーだが、面白そうな案だ。」


 それに日和も続く。


 「はい。私も異論はありません。」


 他の一同も納得した様子だ。


 「じゃあ、この案で行こうかな。」





『 待ってください!!! 』



「!?」



廊下の外から大きな声が聞こえる。



「ティー君?どうぞ。はいっていいよ?」



ガチャリ、とドアが開く。そこにはティー、それにマツとケイ、イチもいた。



「はあ、はあ。……先輩、提案がありますっ!」


 4人は息を上げている。特にイチはだいぶしんどそうだ。新校舎から旧校舎まではそれなりに距離がある。様子を見るに、余程急いできたのだろう。


「提案?」


「はい!ルミ先輩の代わりのレギュラーを選ぶ方法なんですけど…」


「『選抜戦』を行うのはどうでしょう。」


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