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入部テスト



「さあ、ついに入部テストバトルが始まるぞおおおお!!!実況は僕、東紘一だああああ!!」


 叫ぶ東先輩をよそに、日和先輩が試合ルールの説明をする。


「ということでルールのおさらいです。試合は5分間の1on1、つまり一対一形式の勝負です。1年生は先輩に一撃でも入れることができれば勝ち。1年生は5分経過するか、通常の試合の通り、魔装を破られ、そのうえでバンクルを壊されたら負けです。結界の展開はしません。フィールドの制限がない超ワイドルールです!」









 相対する高石先輩とティー。高石先輩がティーに話しかける。


「ティーくん、やっぱり君は来ると思っていたよ」


「気づいてたんですか?」


「ああ。それと、東先輩は手加減ができないから試合はしないけど、それは僕が手加減するってわけじゃないんだ。」


「え?」


「手加減するのはバンクルを壊す一撃だけだ。それも本気でやると怪我しちゃうかもしれないからね。それ以外は全て全力でやらせてもらうよ…!」


「それは…最高ですね……!」


「ああ、その通りだね。」




 審判の日和先輩は二人の準備が整っているのを確認すると、会場全体に聞こえるよう、大声で叫ぶ。



「それでは両者、魔装を展開してくださいっ!超ワイドルールですので武器型魔法や覇王はこの時点で展開しても構いません!」





 高石先輩が氷の槍を形成し、ティーが魔力で風で刀を形成する。




 易々と魔法で剣を作るティーに、試合を観戦するケイが声を上げる。



「ティー、あいつなんで魔法使えるんだよ!?」


「私も知らんかったなあ。ちゅうかティーちゃんもはじめてちゃうんか?」



 そんな会話する2人の後ろから女性が声を掛けてくる。



「大丈夫、大丈夫、君たちもきっともう使えるはずだよ?」


「先輩、ですか?」


「まあそんなとこ。彼が使ってる魔法は魔装と同じ。魔力の形状を固めて剣を作ってるんだろうね。」


「でもあれ、風、ですよ」


「魔装みたいに魔力がそのまま出てきているのが珍しくてね、魔法って普通自分が得意なものの形状になって出てくるんだ。彼は風系の魔法が得意なんだと思うよ。」


 話を聞いたユリが両手に力を込める。


「ほんまや!ケイ君!私もできたで!」


「お!水の魔法!水はうまく使えばかなり強いよ!」



 その女性はユリの出した水の魔法を満足げに眺めていた。


(やっぱりこの二人も藤也君が目をつけてたし、きっと優秀。入部テストを突破してくれるといいんだけど…)


「じゃあ私はそろそろ戻らなきゃだから、また、入部できたら、よろしくねっ!」





§









―実況席―



「さあさあ、我らが高石君は得意の氷槍で戦うぞ。やっぱりいつ見ても高石君はかっこいい!!対するティー君は風の剣を構える!これも初めてとは思えないほどサマになっているぞ!!」



 実況席の東先輩が二人の様子について語る。その話を聞いていた高石は心の中でそれに同意していた。





(東先輩のいう通り、サマになっている…!…魔力剣の出来こそ新入生相応だが…何かの経験者かな?…これは新入生だからと油断してたら危ないな…)



 高石先輩は構えながらティーの様子を探り、開始の合図を待つ。



「ティー君、君は魔装はつけなくていいのかい?それだと一撃で負けだよ?」


「ええ、必要ないです。」


「それならバングルはスイッチを切って断線してつけておくといいよ。魔法の形状が安定するから」


「あ、ありがとうございます。…そんなこと教えていいんですか?今から戦うのに。」



 ティーがバングルをつけながら尋ねる。



「はははっ、僕たちは敵同士だけど仲間でもあるからね。あ、でも、ティー君はまだ入部してないか」


(悪くない判断だ…魔装のデメリットに気づいているか…いや、知っていたのかな?)






「両者、準備はよろしいですか?」



「もちろん…!」


「はい…!」






「それでは、はじめっ!!」



 瞬間、ティーが突っ込む。



(速攻のつもりか!だが武器術ができるのは君だけじゃないぞ!!)







「えっ?」




 接近したティーは、距離を詰めた瞬間、左手の剣を投げ捨て、右手で殴っていた。






「これで、勝ち、ですよね…!」





「殴った!!ティー君の拳が高石君の胸元をあたっている!これは予想外だああああ!!!」




「まさか、“剣で戦う”ってところから誘導されてたって訳か……こりゃ完敗だ。」





「なんと一人目から入部決定だああああああ!!!まさか一戦目から高石君が負けてしまうとはああああああああああ!!!ティー君、能力面での不利さを理解した上、素晴らしい戦略だあああああああああ!!僕らは、いや僕、東紘一が君のことを歓迎しよううううううう!!!川口呈君、入部おめでとうううううううううううううう!!!!」


「先輩、気持ちは分かりますが、もう少し静かに実況してください…」







「高石先輩、東先輩って、めちゃくちゃエネルギッシュですね」


「ははは、先輩はいつもそうだからね。まあとにかく、ティー君、入部おめでとう…!」



 


§






数刻後




「すげえなティー!ほんとに入部しちまったぞ!!」


「これで俺の勝ちだな、ケイ…!」


「うっ、…いや俺も入部できたら引き分けだろっ!まだ新歓期は始まったばかりだぞ!?」




「さっすがティーちゃん!!一撃だけやったらああいう手もあるんやな…!」


「あれならオレでもできるぞ!」


「でも次からは先輩も警戒するやろしなあ」


「確かに…そういえばティー、なんで魔装をつけなかったんだ?」


「…そうだな、アレ、見てみろよ」


ティーは自分の次に入部テストに挑戦している2人目の少年を指さす。


「? なんであいつはテストなのにナメクジみたいに寝っ転がってんだ??」


「俺ももし魔装を使って戦ってたら寝っ転がってたよ。ほら、高石先輩の魔装、よく見てみろよ。関節の魔装が薄いだろ?」


「いや、こんな距離から見えねえよ…」


「つまりティーちゃんがいいたいのは、私らみたいに魔装で覆ってるだけやとうまいこと動かれへんってことやな?」


 「そうそう。本来魔装はその人に合わせて形をカスタマイズするんだ。それ以前に関節の魔装が厚かったら全然動けないわけで…それをできない俺らは当然上手く動けないんだ。接近戦なんてそんな状況じゃできないでしょ?」


「あ、決着ついたみたいだ。」


「ダメやったか…やっぱしんどい試験やな…」


「次はセラかな?」


「そうみたいやな、セラちゃんもセンスあったし受かるかもしれへんで?」


「せっかくだし全員で受かりたいな!」


「それ、一番ケイが危なくないか?」


「なっ!?」






§






「さあ!三戦目は川崎 世良さんだああああ!!世良さんは一発で魔装の装着を成功させたそうだ!!ティー君についで二人目の合格者となるかあああああ!!!」






「セラさん、だよね、よろしく…!」


「はいっ!よろしくお願いします!」





「ついに魔闘ができる…!ワクワク…!」



(やっぱりこの子からはティー君のような何かは感じられない…だけど…)





「両者準備を始めてください!」





「! 君は魔装をつけるのか!さっきの試合は見てたろう!?」


「はい!私は、大丈夫!です!」







「準備はよろしいですか!?それでははじめて下さいっ!!!」




「よしっ行きますよ!……あっ」




ズテン!





「……」





タッ、タッ、タッ


高石先輩が残念そうに目を細め、ゆったりと近づく。




パリン





「あれ?魔装壊れた?」




「悪いね、手加減しないってことになってるから。」





「でも、まだです!」



 すぐさまセラが立ち上がり、さっと距離を取る。さっきまでの動きとは似ても似つかぬ俊敏な動きだ。


「よーし!ふん!!」



セラの両手から火球があらわれる。



「えい!!!」

 

 セラが飛ばした火球を高石先輩がなんなく避ける。


「そんな火球じゃ僕には当たらないよ」



「まだまだ!」



 次は2球、それに火球のサイズも大きい。


 だがこれも難なく避ける。


「じゃあ次ですっ!!!」


 次は4球、その上さらに大きくなっている。


(へえ…!なんの訓練もなしにその魔力量、それもコントロールも悪くない!)


「はあああ!」



 だが、高石先輩はそれも難なく切り抜ける。



(今日はここまで、かな。この調子なら新歓期中には間に合うかな?)



「よしっ」



 槍を握った高石先輩がさっ、と間合いを詰める。


「どうだ!」




だが高石先輩が振るった槍は空を切った。




「まだ、終わってませんよ!!」




するりと槍を躱し距離を取ったセラが態勢を整える。





「そうか、なら終わってないところを見せてもらえるかい?」



「はい!…………………はああああああああ」




「……えっ」




「はああああああああああ……!!」




「え………?」




 突然、セラの辺りの大気が揺れだす。



「はああああああああ!!」



 その大気がゆっくりとセラに吸い込まれていく。



「嘘、でしょ?」






「はあああああああ!!!!」





 砂埃のなか赤く煌く光が放たれる。その光の意味をその場にいる全員がすぐ理解した。高石先輩も、東先輩も、日和先輩も、佐倉先輩も、ケイも、ユリも、そして、ティーも。頭では理解しがたくも、その意味は一つしかない。



 視界が徐々に開けていく。




 赤く燃えるそれはきっと翼だ。両翼が大きく開かれる。そして甲高い叫び声とともに煙が吹き飛ばされる。



「やった、できた…!」



「はおう?」





 赤き炎の巨鳥はその目を据え、高石先輩を見下ろす。両翼は絶え間なく燃え続け、会場中の気温が急激に上がる。









「これは……これは!!赤き炎の鳥、不死鳥、フェニックスだ……!覇王、覇王だああああああ!!!こんなことがあるのかああああああ!!!!まだこの部活でも2人しか使えない覇王をセラちゃんが召喚している!!!!!!!こんなことがあり得るのか!?僕たちは今、奇跡を目にしているかもしれないぞ!!!!!!」 








「なあ、ティー、あれ、オレの見間違いじゃないよな?覇王出してるの、先輩じゃないよな?セラだよな?」




「あ、ああ」




 「どうなってんだよこれ…!覇王って、全国トップレベルの選手しか使えないんじゃないのかよ!!…………?ティー、どうかしたか?」


「……いや、なんでも、ない。」


「ティーちゃん?なんでそんなに顔強張らしてるん?」


「いや、大丈夫、ちょっとビックリしただけだよ。」


「おいおい、どうみても顔色悪いぞ。」


だが、ティーは答えなかった。


(あーーー。ティーちゃん、もしかして……)














「ねえ、セラさん、君は今日初めて覇王を呼び出したのかい?」


 高石先輩が尋ねる。


「はい!出来るような、気がしたので。」


「こりゃ、敵わないな…」


「先輩?何か言いましたか?」


「いや。それより早く見せてよ、その力。」


「はい…!」




 炎の不死鳥の両翼から無数の炎弾があらわれる。その数も、大きさも、煌きも、先ほどまでとは比べ物にならない。




「(バーンウィンド)炎の翼!!」





 そしてそれが高石先輩のいる位置を中心に広範囲に降り注ぐ。




「これがセラちゃんの覇王の力!!これだけの広範囲を焼く魔法を今まで、一年生が使えただろうかあああああ!!!これは高石君、万事休すか!!!!!」





 炎弾の雨が止む。そしてそこから高石先輩があらわれる。





「嘘…先輩、無傷…!!!」





 傷一つ無く表れた高石先輩はゆっくりと手を上げ、小さく笑う。両手で大きく丸を作る。




 「高石君………!この試合、川崎世良さんの攻撃が高石君に命中したため、川崎さんの勝利です!そのため、川崎さんの入部を認めます!!!」



 「なんと初日から2人目の入部決定だあああああああ!!!まさか一年生が覇王を使うなどあり得るのかあああ!!!魔闘部初、いや史上初に違いないいいいいいいいいい!!!セラちゃん!!魔闘部全国優勝のため、共に戦おう!!いや、是非、僕たちととも戦ってくれえええええええ!!!!!!」









「いやー、セラちゃんが覇王使えるなんて、信じられへんなあ!」


「ほんとだぜ。…で、ティー、ほんとにどうした?」


 ティーはまだ顔を強張らせ、固まっていた。その目の瞳孔は昏く、開いていた。だが、声に正気に戻ったのか、ゆったりと動き出す。


「あ、おい、ティー、どこ行くんだ!?」


 ティーは人混みをかき分けその中に消えていった。




「あー、やっぱりティーちゃん、いつもの、はじまっちゃったみたいやなあ。」


「ん?いつもの?」


「まあ、見てれば分かるわ。」










 

 人混みをかき分けたその先、少年は一人の少女に声を掛ける。



「セラちゃん、俺と、戦え。」


「………え?」




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