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軍神

―1年前―


「6-1!勝者!蘭花中学校っ!!!優勝校、蘭花中学校の全国大会出場が決定です!!!」



 声援が鳴り響く。喜びの声が会場を埋め尽くす。大会の終わり。そして、「彼ら」の敗退が決まった瞬間だ。


 その年二年の佐々木は、声援を浴びる勝者たちからそう遠くない場所で、バンクルを砕かれ、ぐったりと倒れ伏していた。


(俺たちは…負けたのか…。)


 一年前の決勝戦、西町谷中学校は蘭花中学校に完膚なきまでに叩きのめされていた。


 西町谷の期待の新人ともてはやされ、森原とともにレギュラー入りした佐々木。3年生の実力も高く、今年こそ全国に、と言われた。だが、その実力は蘭花に遠く及ばなかった。


 呆然とする佐々木に勝者たちの会話が聞こえてくる。



 「村野せんぱい、おつでーす。約束どーり、アイス奢ってくださいね?あ、軍神もお疲れー。最後のめっちゃ良かったじゃん。」


 「ルミも相変わらず、無駄のない動きだ。見習いたいものだな。」


「へへっ。まだまだこんなもんじゃねえよ?」


「全国でも頼むぞ?」


「任せときなっ」



余裕そう、だ。



 文字通り完全敗北だ。沸き上がる観客に目もくれず、早々に引き上げる蘭花の三人は、息一つ上げていない。全く持って地力が違っていた。


その上、内二人は自身と同じ2年生だ。同じ2年生にも関わらず、彼らは全く別のステージに居た。特に軍神と呼ばれる男。正に別格だ。


倒れ伏す佐々木に西町谷の先輩が手を貸す。


立ち上がる佐々木。来年はここで最後まで立っていられるのだろうか?思わずそんなことを考えていた。




数日後 西町谷中学校



「ああ、今年も駄目だったか。」


「毎年いいところまで行くのになあ。」



昼休み。廊下で聞こえた何気ない声。聞こえないふりをしていた。



「来年はいけるかな?」


「さあな。来年も佐々木はいるけど、蘭花も星蘭もヤバいって話だろ。」


聞いてないふりをしても、聞こえる声。期待か、失望か。どちらも今の佐々木には欲しくないものだった。


「おい、佐々木。」







「おい!佐々木!!」


「お!?なんだ、長渕か。」


「くそっ、何回呼んだと思ってんだよ。てめえ、最近ぼーっとしすぎだぞ。」


「わ、わりい。でなんか、用か?」


「それがな、今年赴任してきた後藤先生!昔、魔闘のプロだったらしいぜ!?しかも、覇王の即召喚もできたらしいぜ!」


「まじかよ!てことは…俺ら、魔闘教えてもらえるかもしれないってことか!?」


「ああ!そうだ!」


「これなら、来年こそは…早く、頼みに行こうぜ!」



―職員室―



「無理、だな。」


「へ?」


魔闘を教えてもらえないかと頼みに行った2人。だが、開口一番に帰ってきた言葉はそれだった。


「俺がお前らに魔闘を教えてやるのは構わん。ちょうど少し退屈していたところだ。だが、お前ら、来年、全国に行こうとしているんだろ。」


「……はい。」


「それは、無理だ。当然、お前らは本物だ。特に佐々木。お前なら順当にいけば、プロでも食いっぱぐれないだけの結果が出せるだろう。だが、来年の全国だけは無理だ。星蘭の立崎も、蘭花の軍神も、余りに別格だ。やつらがいる世界は、努力すればたどりつけるとか、そういう世界じゃない。それは、佐々木、お前が一番よく分かってるんじゃないか?」



佐々木が答えに詰まる。その通り、佐々木自身が一番よくわかっていたからだ。



「……………それでも、それでも全国に行きたいんです……!どんな厳しい練習だってやります…!だから!」



「そう、か。なら望み通り死ぬほど厳しい訓練をくれてやろう。だが、それだけじゃ足りないな。」


「?」


「覚悟だ。全国のために、全てを捨てる覚悟だ。」





§



そこからの一年間の練習は凄まじいものだった。ただひたすら練習するのではない。完全に管理された練習だ。練習のハードさも凄まじかったが、食事管理、休息の管理まで、綿密に管理された練習だ。勿論、今までもそういうことは当然行ってきてはいたが、その精度や厳密さは流石元プロというべきか、まるで程度が違っていた。


そして大会が始まってからは、相応のリスクを冒しながらも、ターゲットを蘭花と星蘭に絞ってきた。出せるカードギリギリの切りながら勝ち進み、出来るだけ戦力を知られないよう勝ち上がってきた。


唯一、失敗したのは、下馬評トップの蘭花との試合を避けることだ。予選の勝敗を調整して、蘭花と逆山に入るつもりだった。だが、星蘭と蘭花が同率一位だったこともあり、決勝は蘭花との試合になってしまった。とはいえ、星蘭も蘭花と引けを取らない実力だ。乗り越えなければいけない壁に違いない。


そして、蘭花との試合の3日前。


グラウンドのベンチでぐったり休む佐々木に来客が訪れる。


「お!いたいた、佐々木生きてっか!?」


「なんだ、お前か。こんなとこになんか用か。」


佐々木の元を訪れたのは、彼のクラスメイトの一人。魔闘部員ではない。仲は良くもないが悪いという訳でもない。そんな仲だ。


「お前に用だよ。佐々木。ほら、差し入れだ。今週決勝だろ?」


佐々木にビニール袋を渡す。


「そうだが…」


「お前ら最近めちゃめちゃ強いじゃないか!予選見てるときは今年も無理そうだと思ってたのによ。今年はいけるんじゃないか、全国。」


「さあ、次の試合次第だな。」


「あんだけ強いならいけるだろ!今のうちサインでももらっとこかなっ!」


「ちっこんな時だけそういうこと言いやがって。」


佐々木が呆れたように笑う。


「とにかく、今年は期待してるぜ。全国。」


「おう、期待しててくれ。」


去年の夏には絶対聞きたくない言葉だったが、今はそれほど悪い気がしなかった。


(そうだ。俺たちは、全国に行かなきゃならない…)








そして、現在。




第一試合2-0。汚い手だが、あの蘭花に一勝をもぎ取った。ついに全国への道が見え始めた。そして、第2戦のフィールドに向かう佐々木。


やはり、奴が来た。


一年ぶりに相対した、軍神。一切の隙が無い。去年以上の化物に成長していることが、その立ち姿を見るだけで、分かる。



そして、試合が始まる。


覇王を展開するため、力を貯めるのかと思いきや、動きは無い。こちらの動きを伺っているのか。


そうして数刻、軍神が言う。



「すまないが、下がっていてくれないか。俺が一人でやる。」



「は?お前、今なっていった?」


戦いの中で、冷静さを失ってはいけない。分かっているつもりだった。



「聞こえなかったか?お前ら二人、俺一人で十分だって言ったんだ。」



だが、瞬間、今までの一年間が去来する。頭に血が上っていくのを感じる。



その瞬間、軍神が視界から消えた。


「は…?」





「がっ!!!」


鳴り響く痛みの声。声の主はもう一人の西町谷の選手、今間だ。今間が、軍神に、切られている。











「はあああああああっっ!!!」



軍神が2本の炎の剣を手に今間の魔装を切る。軍神の挑発に覇王持ちの佐々木が気を取られた一瞬、軍神は即座に切りかかった。


今間はガードする間もなく打ち上げられる。


そして、軍神は立て直す隙さえ与えない。



切り裂く、切り裂く、切り裂く。一撃毎に魔装が削れていく。そして、魔装が部分的に崩れ始めていく。


まだ、バンクルの着いている左手は狙わない。強度の高い左手は他の部分を破壊し、魔装の耐性を下げた後だ。


今間がようやく状況を理解する。



「ぐうっ!!」



瞬間、軍神が右手を剣で殴りつける。反撃の隙さえ与えない。一瞬光った右手も光を失う。








「ふざけるなああああああああ!!!!!」




佐々木が炎の大槍で突っ込んでくる。




だが、もう手遅れだ。






軍神が炎の双剣を振り下ろす。そして、今間の魔装が砕かれる。




あとは一撃、軽くバンクルを切る。これで、終わりだ。





そして軍神は軽く跳ね、突っ込む佐々木をいなす。








そして両者が少し再び相対する。


「はあ、はあ、くそ、やられた!!」


佐々木が叫ぶ。




軍神は一言、ある名前をつぶやく。


「炎帝 スス」


軍神の後方、火炎が燃え上がる。地獄の如く業火が焼き払われた後、全身の燃える大男が現れた。


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