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1人脱落

魔闘に勝つのは強い選手だ。相手と味方、力比べをして、強い方が勝つ。シンプルな理論だ。勿論、選手同士の相性はあるし、その時のコンディション、戦略の取り方なども結果に大きな影響を与えるが、それらを全て加味して『実力』というならば、勝つのは実力のある選手だろう。


では、実力が上回っている選手は、格下の選手に必ず勝てるのだろうか?それは『実力差』によるだろう。10回試合すれば9回勝てる実力差かもしれないし、10回やれば6回勝てる実力差かも知れない。一口に実力差といっても実態は様々だろう。




さて、誰しも一度はこんな言葉を聞いたことがあるだろう。甲子園に魔物が棲んでいる、という言葉だ。あるいは甲子園ではなくて、神宮球場かも知れないし、どこかの受験会場かも知れない。いずれにしても、魔物に国が乗っ取られていても驚かないくらい、使い古された言い回しだ。


このような言葉がまことしやかに囁かれるのには、様々な要因があるだろうが、その最大の原因は、本番が「一発勝負」であることが大きいだろう。本番は一度しかないのだ。先のような10回に9回勝てるような相手でも、その9回を引けるとは限らないし、1回を引かない保証もどこにもない。負けの1回を引いたとしても、やり直せるわけではないのだ。


それはたとえ100回やって1回負ける相手と戦うときも10000回やって1回負ける相手とやっても同じことだ。その1回を引かない保証はどこにもないのだ。





§


 



作戦会議を終え、動き出す両者。


前衛の長渕と坂がトップスピードで接近する。東は彼の巨大な槌を抱え攻撃の機会を伺う。富田は大弓を引き構える。先ほどの弓より一回り大きい。弓のサイズは基本的にその威力に直結する。警戒は必須だ。そしてその照準は坂とも東とも合わない、そのおよそ中間地点。発射の際に調整するのだろう。少なくとも現時点ではどちらを狙っているのか予想がつかない。


接近した坂と長渕が両者剣で打ち合う。


その攻防は、坂がやや優勢だが、先ほどより長渕が食らいついてきている。彼もまた、魔力消費をやや高めたのだろう。坂たち普通以上の力を出していることに気づいていない彼らにとってはリスキーな選択だ。だが、そうしなければまともに打ち合うことができない。魔力の消費量は強さに直結するのだ。


そんな打ち合いも束の間。坂がやはり一枚上手のようだ。坂の剣技に長渕がよろめき押し出される。


「もらった!!!」


坂が、一歩踏み込み、切り込む。


それを長渕がぎりぎり剣で弾く。その一撃をすんでのところで避けるが、剣が長渕の手から離れる。


(今だ!!決め―――)


態勢を低くした長渕が坂の懐に突っ込む。タックルだ。


「うお!!」



「どうだ!!」



長渕が坂に馬乗りになる。完全にマウントを取った形だ。




だが、マウントを取られた坂がニヤリと嗤う。


「やるじゃねえか。そうこなくちゃな。」



「なっ!」




「うおおおおおお!!!」



マウントととられた坂が長渕を振り払わんとそのまま大暴れしだす。その姿はさながら闘牛だ。そのすさまじい勢いに、長渕が振りはらわれまいと必死にしがみつく。マウントをとっている長渕が劣勢に見えるほど、激しい振りだ。



それを見る遠距離の二人。蘭花の東と西町谷の富田、両者ともにこれでは狙いが定まらない。味方を巻き込む恐れがあるからだ。特に東は坂を巻き込まず攻めるは難しいだろう。


だが、東がじりじりと距離を詰めだす。


それに感づいた長渕。


(あいつ!仲間ごと吹っ飛ばすつもりか!?……それとも、俺だけ攻撃する策があるのか!?くそっ、これが最後のチャンスだってのに!!)


そうだ。西町谷にとってこれは最後のチャンスだ。こうして坂にマウントを取れているのは坂が長渕のタックルを知らなかったから、奇襲だったからなのは明白だ。二度目は無い。それに、このマウントももう長く続かない。


(こうなったらやるっきゃねえぇぇ!!)


長渕が叫ぶ。


「富田ああぁぁ!!!」


富田が応じる。


「了解!!!これで決める!!!」



富田が矢を引く力を限界まで強める。


(何だっ!!!)


その叫びに富田に警戒を強める坂と東。だが、坂はマウントを取られている。東の攻撃も出の早いものではない。西町谷の策を防ぐ術はない。





「雷鳥の弓矢!!!」




巨大な雷を纏った矢が放たれる。そして、一瞬も待つことなく、着弾する。









「うお……?いてっ…」



着弾したのは暴れる坂のいる場所。坂は痛みのある場所へ手をやる。





肘だ。





それを見た、長渕が、思わずつぶやく。





「外した………。」










富田の一撃で、坂の魔装が破けていた。破けていた箇所は肘だ。だが、その瞬間、その一撃と長渕の一言に、坂と東が全ての狙いを悟る。そして東は脳が冷え上がるのを感じる。






(まさか!西谷の狙いは、『レヤック』!!)



(まずい!!!)



東が駆け出し狙いを富田に絞る。もう一度打たせるのはまずい。咄嗟の判断だ。



「うおおおおおおおおお!!!」



坂もさきほどに増して暴れまわる。レヤックは警戒のされる2度目以降の成功率は極端に低いが、それでも、マウントを取られた状態で撃たれるは回避したい。




そして、少し遅れて蘭花ベンチの大阪が声を上げる。



「おい、あいつ、今、バンクルを狙ったのか…!?」


佐倉が信じられないといったように声を上げる。


「レヤック…!それも遠距離からの…!!」


それに高石が続く。


「レヤックって、どんなに練習しても最後は運任せですよね…。それも遠距離からなんて…」


バンクルの直径数ミリの穴を直接狙い、強烈な衝撃を与え破壊する技、レヤックは基本的に近距離から狙うものだ。魔装を破壊することなく勝てるこの技術は成功すれば大きなアドバンテージを得られるが、狙って決めるのは極めて困難だ。


全国クラスの選手でさえ、レヤックそのものの練習を十分に積んだ上で、近距離から、それも相手の動きが制限されているといったような特定の条件下で、始めて成功できる。一言でいえば、極めて難度の高い技だ。


だからそもそもレヤックの練習などせず、その時間を別の練習に費やす選手が大半だ。一部の適性の高い戦法をとる選手が練習する、そんな技術だ。


ましてや遠距離からとなると、言うまでも無く難度は跳ね上がり、中学生は勿論、果てはプロまで行ったとしても最後は運頼み、そんな技だ。練習すれば多少の成功率はあるだろうが、それでもそんなもの、余程の物好きでもなければ練習しまい。


「くそっ!西谷め!!負けそうだからって、運任せかよ!!!」


大阪が憤るように言う。




そして再びフィールド上。


(長渕くん…もう持たない…これが最後のチャンス…)


再び弓を構える富田。


「させるかあああ!!!!」


弓を構える富田に突っ込む東。


(もう一本ストックを作っていたか!でも打たせるものか!!!)






「うおおおお!!」



「がっ!!」



坂の必死の抵抗に長渕が打ち上げられる。



そして、東が槌を振る。


その同時、矢が放たれる。



「雷鳥の弓矢!!!」


「岩の槌!!!」




槌の一撃と雷鳥の矢の一撃に会場が揺れんばかりの衝撃が走る。


「はあ、はあ。」


 

 富田が会場の端まで吹き飛ばされている。そして魔装が完全に破けている。あと一撃でももらい、バンクルが破壊されれば失格だ。





そして、坂。その左腕のバンクル。坂のバンクルが焼けている。





第一戦 開始5分17秒 西町谷中学校 富田 レヤック成功

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