試合開始
約20分後
「両選手!入場!!」
西町谷、蘭花の両選手が入場する。
蘭花の二人は、坂と東。身長165㎝程度と少し小柄な坂と、180㎝にも迫る長身の東だ。
「東、お前と組むのは久々だな!」
「ああ!いつもと一味違った。蘭花の初陣を、西町谷のみなさんに見せてあげよう!」
2人は去年、レギュラーでは無かったので、人生初の都大会決勝だ。それにも関わらず、余裕そうなその姿。余程の自信が伺える。
対する西町谷のふたり。
「あれ、蘭花はいつものふたりじゃないの?」
「監督の読みどおりじゃないのか…」
「でもその方がやりやすいかなあ?付与がいないのは大きいよね?」
2人のいう通り、蘭花の選出は定石通りではない。佐倉の判断だ。
会話を聞いた坂が西町谷のふたりに尋ねる。
「お!西町谷は監督が選出決めするのか?」
「蘭花は違うの?」
「俺たちは生徒のボスが決めるんだ!なんせうちの顧問はシロートだからな!!」
蘭花ベンチの隅に蘭花の顧問、里奈先生はいた。
「わるかったわね!シロートで!でもずっとベンチにいるのにセリフ1つもないなんてあんまりじゃない!」
「まあまあ、いいじゃないですか。」
隣は、副顧問、仙田先生だ。
再びステージ上。
「今年のボス、佐倉の読みは凄いんだぜ!」
「私たちの監督もすごいんだよ!?」
「そりゃ楽しみだぜ!!」
そんなふたりの会話に東が口を挟む。
「そういえば、西町谷のおふたりはいつもみたいにイチャイチャしないのかい?」
「「え!?」」
「誰がこんなちんちくりんとイチャついてるっていうんだ!?」
「誰がちんちくりんよ!!というか大体、あなた今日私たちと初対面じゃない!?」
「そう言われても…どの試合映像見てもイチャついてるじゃないか。」
「「!?」」
「それに同じ目標を目指す若者が共に愛しあうなんて素晴らしいじゃないか!!人目も憚らず愛しあうほどの強い愛!!そんな素晴らしいものと出会えておじさん嬉しいよ!!」
「「??」」
「それに君たちの仲間たちもそう言ってるじゃないか!」
「「!?」」
「そうだそうだー!もっとイチャつけー!」
「はやく付き合えー。とっとと告白しろー。」
「イチャついて相手のペースを乱せー。作戦だー。」
「「はああああ!?」」
「裏切りやがったなあぁぁ…!」
「あの、両選手、よろしいですか?試合、はじめますよ!?」
「「あっ、ハイ!」」
両者の顔つきが変わる。
「それでは西都大会Bブロック代表校決定戦、先鋒 制限時間は15分です!」
会場全体に再びサイレンが鳴り響く。
東が、坂が、 長渕が、富田が、会場の誰もが、その合図を待つ。
会場が、熱気に沸き上がっている。だが、それは、四人には届かない。
そして審判の声が会場全体に響き渡る。
「それでは代表校決定戦、初戦、2on2!! はじめ!!!」
開幕と同時、蘭花の坂が駆け出す。
「よっしゃー!行くぜっ!!」
「特攻だね!最高だっ!僕も武器を作ったら行くとするか!!」
駆ける坂の右手からエネルギーの塊があふれ出し、そのまま剣の形を形成する。
そして前衛の長渕にそのまま切りかかる。
対して長渕は雷剣を形成してそれに応戦する。
長渕は坂の武器に驚きを隠せずにいた。
「ほんとに無属性なのか…!始めてだ…!」
「おめえ、いい太刀筋だな、こりゃ楽しめるぞ…!」
再び坂が切りかかる。長渕が応戦する。
二本の剣が衝突を繰り返す。互角か、或いは…
―観客席-―
「無属性、ですか?」
観客席の日和が一年生に説明する。
「はい、坂先輩の魔法はとても珍しくて、魔力を何かに変換せず、そのままエネルギーとして取り出すんです。」
それにイチが続いて尋ねる。
「それって、なにかメリットことがあるんですか?」
「風や炎のような性質を使っての戦闘はできないですが、そのままエネルギーを取り出すので威力は変換系よりはるかに高いです。それに…ほら。」
次の瞬間、つばぜり合いがとけ、少し間合の広がった両者。その時坂の手元の剣が鈍く輝く。
「どうだ!!」
そして、長渕が槍に突かれる。
(槍…!!!)
それにケイが声を上げる。
「武器が変わった!!!」
「ええ、無属性は形状変化が行いやすいんです。それを活かして様々な武器を使い分けて戦うのが坂先輩の戦闘スタイルです。」
「でも武器の扱いなんて一つ一つ違うんじゃ…?」
「それを使いこなしてることこそ、坂先輩がレギュラーに選ばれた理由なんです。」
その次の瞬間、槍は二本の刀に代わりその二本を使って一気呵成に攻め立てる。
「なにっ!」
(噛み合わない!想像以上に厄介だ!)
その時坂の後方、東が声を上げる。
「坂君ッ!!」
その呼び声に坂は満足げに笑みを浮かべる。
(来るぞ…!)
「さて、行くとするか!」
その声に、長渕が坂後方の東に警戒を向ける。だが、次の瞬間、長渕の視界から東が消えた。
「岩の槌!!!」
その時長渕の全身に影が差す。
見上げると、東の体よりはるかに大きい、巨大な槌が宙に浮いていた。
(!!…まず…)
「どうだ!!!」
岩槌が地におちる。全長5メートルにも迫る巨槌に、大地が揺れる。
間一髪、地におちた岩槌を避けた長ぶ「おらあああああああああ!!!」
「くそっ!!」
間髪入れず、長渕に切り込む坂。胸元まで切り込まれながらも間髪入れず応戦する。
坂は剣、槍、槌と次々に武器を切り替えながら攻め立てる。武器が切り替わるたびに威力、リーチ、軌道が変化する。変則的な攻めに手元乱される。
何度か魔装がダメージを受けるがなんとかついていく。
魔装は削れているがクリーンヒットは避けている。それほど両者の実力差は無いのだろう。
(切り替え戦法は想像以上にきつい…が、どのダメージをさして大きく無いかっ!次は、槍か…!)
坂の手元に目をやり、次の武器を予測する。武器を当てることができれば、反撃の兆しが見える。
だがその予想は大きく外れることになった。
突如坂の手元に現れたのは強大な柄。
(しまっ…斧か!!)
「おらあ!」
「ぐっ!!」
長渕の全身に鈍い痛みが走る。だが、何とか受け身を取る。
そこで、坂が叫ぶ。
「東!!」
「任せてくれ!!」
それに東が応える。
再び東が飛びあがる。
長渕と坂の全身が陰に包まれる。
その時、坂が長渕の左手を掴み、ニヤリと笑う。
(自分も下敷きになるつもりか!?だがそれなら!)
「富田!!」
「行くよ!!」
富田が炎弓を引き、射る。狙いは坂だ。
その時、長渕が坂を強引に掴み返す。
それに坂が呟く。
「それは甘いぜ」
その時坂は長渕を掴んでいた右手を強く握りしめる。そして坂の左手が光る。そして槍があらわれる。
槍が生成の勢いそのまま長渕の腹に押し込まれる。手を掴んでいたがためにその衝撃がさらに大きくなる。
「ぐッ!!」
吹き飛ぶ長渕。手を放し矢を避ける坂。坂はそのまま槌の射程圏内を離脱する。
槍を押し込まれた痛みに転がりこむ長渕。まだ槌の射程圏内だ。
(…まず!避けな)
「岩の槌!!」
岩槌が再び地におちる。




