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都大会

同日 蘭花中魔闘用コート


「今日の練習を終わりにします!ありがとうございました!」


「ありがとうございました!」


同日、蘭花高校魔闘用グラウンドでは魔闘部26期、一年生が練習を行っていた。


都大会本戦は基本的に土日に決行されるが、例年、半数程度の試合は平日に開催される。都大会の公欠はレギュラー他数名しかとれないので一年生はこうして学校で居残りだ。


蒸し暑い季節が近づき、日も随分長くなってきたが、練習を終える頃にはもうほとんど真っ暗だ。


一年生は今日の練習を終え、普段なら我先にと帰路につくところだが、今日は誰一人帰ろうとしない。部活の延長時間込みでももう下校時刻は過ぎているが、誰も気にしていないのはいつものことだ。


練習を終え、少し緊張した顔で、携帯を覗く日和にマツが尋ねる。


「日和先輩、試合結果はまだ来ませんか?」


「もう来てもいいはずなんですけど…」


 皆、レギュラーの試合結果を待っているのだ。


「あの、俺、練習してていいですか?試合結果が来たら教えてください!」


「いいですけど…」


少し困った笑顔で日和が答える。答えを聞くとティーが駆け出していく。


都大会序盤はテレビ中継は一部の試合しか行われない。試合数が多いからだ。最速で結果を知るにはこうして現地のチームメイトからの連絡を待つのが一番なのだ。


未だ来ない試合結果にケイが呟く。


「まさか、負けたんじゃ…」


それにマツが答える。


「そんなことないと思うけど…」


その話を聞いた日和が少し明るい顔で二人に告げる。


「大丈夫、だと思いますよ。今回の相手はそれほどの敵じゃありません。予選の対戦相手と比べても特別強敵ではありませんから。」


「ほら、先輩もこういってるんだから、大丈夫だよ…!」


「そう、だな!」


予選を全試合7-0で突破している蘭花にとっては格下なのだろう。





 だが一連の会話の後、一年生に沈黙が再び訪れたのはこれからの試合の重みを理解しているからだろう。


 自分たちは試合に出ていない。だが、一度でも負ければ蘭花の都大会はここで終わりだ。


 先輩の戦いはここで終わりなのだ。





 その少し後、日和の携帯が鳴る。メールの着信音だ。


「日和先輩!!鎧井先輩からですか!?」





「7-0……!良かった!蘭花の勝ちです!!」


「「やった!!」」


 先輩の勝利に安堵の歓声が上がる。これで一勝、二回戦進出だ。


 勝利に喜ぶ一年生をよそに、日和はメールの続きを見ていた。


「……え?」


日和は小さく声を上げたが、歓声に練習を中断して合流しようとしていたティーには、その声が偶然聞こえていた。


「日和先輩、どうかしたんですか?」


「…それが佐倉先輩が裏で行われていた西町谷の試合を見ていたそうなのですが……」







西町谷の試合を一人見終えた佐倉。チームメイトへの連絡を終えたのち、一人目を塞ぎ思案する。


(信じられない…あの西町谷が主力級を温存していた…いや、あれは、エース…)


(…今年の西町谷には覇王が二人いる……!!)





§




―いつか、どこかの住宅街―



桜舞う季節。都心を少し離れた郊外の一角。雲一つ無い晴れ模様に暖かく包まれた住宅街。整然と立ち並ぶ一軒家。



その一つの前に二組の家族が立っていた。一組の家族の両親の手には少し大きめのキャリーケース。



別れの季節だ。



 そして2人の少女が最後の言葉を告げていた。


「もう、行くんだね。なのは。」


「離れだぐないよぉぉぉ……××ちゃぁぁん…!!!」


旅立つ少女が泣きながらもう一人の少女に縋りつく。もう一人がそんな少女の髪をくしゃくしゃになでる。


「ほらほら、泣くなっつーの。だいたい、携帯の番号だって交換してるし、今世の別れじゃないんだからさあ。」


「…………こんじょう…?」


「…………あーーー。とにかく、ほら、なのはのところでも魔闘の大会なら見れるでしょ?あたしが出たら、それで私が、元気にしてるの、分かるでしょ?」


「…………うん。そうだね。それなら私が、どこに行っても大丈夫だね。でも、大丈夫かな…私が行くとこ、決勝とかしか、やらないかも知れないよ?」


「心配すんなって。決勝までいけばいいよ。あ、そうだ。せっかくなら優勝して、一番高いとこから、届けてあげよっか。」


「…ほんとに?」


「ああ。」


「約束、だからね?」


「ああ。約束ね。」


「でも、××ちゃんが元気にしてくれてたら!それだけで私、十分だからね!?」


「うんうん。分かってるよ。」








§







5月末に開幕した西都大会。蘭花高校は軍神、ルミを筆頭に、高い総合力で一つ、また一つと駒を進める。

一方、1年生は平日は練習、観戦に行ける土日は他校の試合を観戦し、情報集めに努めた。

そして、6月中旬、西都大会準決勝。


「勝負あり!勝者、蘭花高校!」


「ふう、やったな、軍神、高石。」


最終戦3on3が決着。7-0、完全勝利で準決勝を終え、ベンチに向かう途中。大阪がともに戦った2人をねぎらう。


「ああ、これで後一つだ。後一つで全国だ。」


「あとは問題の、西谷ですね。佐倉先輩の見た通りなら、今年の西谷は全国上位クラスですよね。大阪先輩。」


全国クラスの高校と、都大会クラスの高校とでは大きな壁がある。都大会は全国屈指の激戦区だが、全国上位常連の蘭花にとって都大会の大半の対戦相手は強敵足り得ない。


ただし、都大会にも全国クラスの高校が何校か出場している。そして、今年の西町谷は完全に全国上位クラスだ。


「平均的なレベルはそこまででもないだろうが...覇王が2人いる時点で、間違いないだろうな。軍神もそう思うだろ?」


「ああ。かなりの強敵だろうな。」


「それにしても、西町谷が出し惜しみをするなんて、本当に珍しいですよね…」


そうこうしている内にベンチの残りのレギュラーメンバー、佐倉、顧問達と合流する。


「みんなお疲れ様!」


「あれ、東は?」


「ここ、ここ、もう寝ちゃってるよ」


「ああぁ〜またか、寝るならはしゃぐなっつてんのによ」


 試合を終えた3人を労う佐倉。疲れ眠りこける東。その隣のルミは携帯を弄っている。


「お、戻ってきたー。逆山の決勝はやっぱり星蘭だってさー。」


それを聞いた大阪がぼやくように言う。


「やっぱ星蘭だよなあ。くそっ、逆山は楽で羨ましいぜ」


そんな大阪に、坂が不思議そうに言う。


「なんでだ?都大会でつえーやつと戦えるなんて楽しみじゃねえか!!」


「坂は全国いけなくていいのかよ…」


「俺らが勝つに決まってんじゃねえか!!」


 星蘭高校。蘭花、西町谷と並んで、西東京からの全国常連校だ。星蘭は逆山で決勝戦を戦っていて、すでに全国出場の一枠をもぎ取ったようだ。


「坂君の言う通り、みんなが負けるとは思わないけど、今年の西町谷は相当の実力だよ。」


「そーなんだよねえ。それぞれの実力がめちゃくちゃ高いって訳じゃないんだけど、森原と佐々木。この2人がヤバいんでしょ、佐倉ちゃん。」


「うん。覇王持ちの2人がほんとに強いの…。地区でレギュラーしてた森原さんでさえ、全国で1on1に出ててもおかしくないレベルなのに温存してた佐々木君はそれ以上に強いの。」


「それ以上なのか!?戦ってみてえ!!」


嬉しそうな坂。反面、大阪は少し心配そうだ。


「でもそのレベルだとルミか軍神じゃねえときつくねえか?」


そこにルミが続ける。


「それが私、ちょっと相性悪そうなんだよねえ。私も勝てる保証はないかな〜。まあ軍神ならその程度じゃ負けないっしょ。佐倉ちゃん、任せたよ!」


「うん。うちが負ける可能性があるすれば軍神君を佐々木君と当てられない場合だからね。選出読みは任せて。」


(佐倉ちゃんに任せれば、私たちは戦うべき相手と戦える。あとは私たちが頑張るだけ…)


(全国優勝まで、こんなところで躓くわけにはいかないからね……全国大会まで、あと、ひとつ…)


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