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第五十七話 二章第二十一話 交渉そして反撃

異世界を舞台としたハーレム冒険小説の通算第五十七話です。

気絶から回復したマサキはアリサがヘイズルと交渉する声を聞く・・・。

初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!

読んでくれたら、作者のやる気が出て頑張れます!

 意識を取り戻した俺は廊下の床に崩れ落ちるように倒れていた。

 おそらくは敵の攻撃魔法を受けたのだろう。相手方に魔術士がいると知っていながら、迂闊に間合いを詰めた俺の判断ミスである。

 死んでもおかしくない攻撃だったが、不思議と怪我による痛みはない。既にアリサが回復魔法を掛けてくれたらしい。

「・・・これが何だかわかるか?!」

 そんな自責の念とアリサに対する感謝の意識の中で、俺は彼女の声を聞く。それは仲間に語り掛ける時の穏やかな雰囲気ではなく、敵に対して挑むような口調だ。

 僅かなニュアンスの差からアリサが敵と交渉を行なっていると判断し、俺はそのまま気絶しているフリを続けた。


「おお!! それだ! それこそが私が求めているモノだ! 早くそれを私によこせ!」

「いや、まずは私達を蝕んでいる呪いを解く薬を用意してもらおう!」

 アリサに続いてヘイズルの興奮した声が俺の鼓膜を震わせる。どうやら俺が意識を失っている間に戦況は悪化していたらしい。

 気配からすると手勢を連れたヘイズルが援護に現れたようである。それでアリサは例の魔道具を使って時間稼ぎを試みているのだろう。俺が意識を取り戻すのを待っているのだ。

 何しろ、敵は俺達が魔道具を使って呪いを解いた事実を知らない。そこに付け入る隙がある。


「ふふ、元よりその約束だったではないか? なぜ、裏切って盗もうとした?」

 思ったとおり、ヘイズルは自身の圧倒的有利な立場に奢ったのだろう、アリサを弄ぶように問い掛ける。俺は二人の交渉の行方を見守りながら、起き上がる機会を待つ。

「あんたが、約束を守る保証はなかったからね。まずは自力で薬と人質を取り戻すべきだと判断したんだ。それに・・・私達はこの魔道具の秘密を知っている。この中に水が満たされているのは見えるよね。触れただけで恐ろしい効果を発揮する毒薬も作れるんじゃないかな?!」

「・・・馬鹿な・・・どうやって秘密を暴いた! いや、そんなことをすれば、自分自身も毒を浴びるかもしれんぞ!!」

「なら、解毒剤を用意して、私達全員をここから解放してもらおうか? そうすれば、この盃をあんたに渡そう!」

「・・・わ、わかった!・・・エザリア、例の解毒剤を持って来い! 青い壷の薬だぞ!」

 更にアリサは魔道具の秘密を仄めかしてヘイズルに圧力を掛ける。

 冷静に考えれば魔道具の正体に気付いた俺達が、それを利用して解毒剤を創り出したことも想定出来るはずなのだが、ヘイズルは渇望していた魔道具を目の前にして判断力が鈍っていたのだろう。渋々と要求を受け入れる態度を示した。

「しかし・・・」

「構わぬ! 言う通りにしろ!」

「か、かしこまりました!」

 先程の女中が主人のヘイズルに対して反対の声を上げようとするが、結局は押し切られて同意する。承諾の台詞とともに、この場を離れる足音が聞えなくなると、俺はそれまで続けていた死んだフリを止めて、一気に立ち上がった。

 敵は倒れていた俺を戦力から外しているはずだし、勝負を掛けるとしたら、敵側の魔術士がこの場を離れた今しかない!

「いいぞ! マサキ! やっぱり起きていたんだな。狙いどおりのタイミングだ!」

 立ち上がった俺にアリサが奨励の言葉を浴びせる。やはり彼女も敵の数が減ったこの機会に事を移すつもりだったようである。

「おのれ! まだ懲りておらぬか! 構わぬ、皆殺しにしろ!」

 敵側も俺達の動きに反応し間合いを詰めてくるが、アリサが盃型の魔道具に入っていた液体を周囲に投げ掛けるとその動きを止める。

 アリサの人柄を知る俺からすれば彼女が本当に毒を撒き散らすわけがないので、そのまま突っ込み多少の水を浴びながら敵を剣で撃ち倒す。これで敵が一人減り、残りはヘイズルを含めて八人となった。


 戦力で上回り解毒剤を切り札としていたヘイズルからすれば、俺達の反抗は予想外であったのだろう。たちまちの間に、ルシェラの弓矢とアリサの魔法でその数を減らしていく。

 もしかしたら・・・俺が突出して敵の魔法を食らっていなかったら、今頃は屋敷から脱出していたのかもしれない。

「〝ショートリープ〟!」

 まあ、今更それを蒸し返して仕方がないだろう。俺は二人目を倒したところでヘイズル達の背後に瞬間移動で回り込む。そろそろあの女中が騒ぎに気付いて慌てて戻って来るはずだった。

「お、お前!!」

 俺の〝読み〟は的中し廊下の角から走って来た女中と鉢合わせとなる。一度は不覚を取った相手だが、接近してしまえばこちらに分がある。俺は間髪を入れずに相手の側頭部を目掛けて肘打ちを繰り出した。

 確かな手応えと骨同士がぶつかった鈍い音とともに、ノックアウトされた女中が背後に倒れる。それを見届けた俺は、急いで背後に向き直った。一番厄介な魔術士を倒したが、まだ敵の多くは健在なのだ。

 だが、体勢を整えた俺が見たのはヘイズル達を圧倒するアリサ達の姿だった。既に立っている人影は二人だけだ。彼女達は俺が敵の背後に回った混乱に乗じて一気に攻勢に出たのだろう。今更だが、恐ろしい女性達である


「ば、馬鹿な・・・こ、こんなことがあってたまるか!!」

 つい先ごろまでは自分こそが指導権を握っていると信じていたのだろう。ヘイズルは悪い夢でも見ているかの如く絶叫した。

「もう、観念したらどうだ!!」

「わ、わかった! げ、解毒剤はやるし、約束の金貨もやる! いや! 金なら好きなだけやるから! だから助けてくれ!」

 最後の護衛がルシェラの弓で倒されると、ヘイズルは命乞いを始めた。どうやら、やっと俺達の実力に気付いたようである。愚かな男だった。

 もっとも、俺達としてもヘイズルをこのまま殺すわけにはいかない。手下達はともかく、こいつ自身は街の有力者なのである。何らかの後ろ盾がないまま下手なことは出来なかった。

「解毒剤はいらないよ、もう魔道具を使って呪いは解いたからね。お金は約束していた金貨200枚だけ頂くとしよう。・・・それから、私達とランス兄妹にはもう決して関わらないと約束してもらおうか!」

「もちろんだ! 金貨も払うし! 約束もする!」

 アリサが突き付けた要求にヘイズルは満面の笑みを浮かべて何回も首を縦にする。何しろ、これまで俺達にした仕打ちにくらべれば生温いにも程がある。

 金貨200枚は大金だが、ヘイズルにとってはそこまでの痛手ではないだろうし、この要求で俺達が彼の殺害までを視野に入れていないことを察したのだろう。この場を切り抜けられると思っているに違いない。

「じゃ、それを証明するために、これを飲んでくれるかな?」

 もちろん、それだけで許すほど俺達は甘くない。承諾の意志を示したヘイズルにアリサは苦笑を浮かべると、液体の入った魔道具を突き付けるのだった。

ご愛読ありがとうございました。二章からは一日ごとの更新を予定しております。

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