第五十八話 二章第二十二話 落とし前の方法
異世界を舞台としたハーレム冒険小説の通算第五十八話です。
屋敷を出たマサキ達は別行動をとっていたネイリーンと合流を果たす。
初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!
読んでくれたら、作者のやる気が出て頑張れます!
「皆! 無事でしたか!」
裏門からヘイズル邸を出た俺達をネイリーンが出迎えてくれた。
元々、彼女とは可能な限り早く合流することになっていたが、後ろに二人の人影を従えているところを見ると、ネイリーンはウリクス卿との交渉に成功したようである。
「彼女がランスの妹さんですね? 救出に成功したようですが、警戒することなく出て来たということは・・・ヘイズルを倒したのですか?」
見慣れぬ少女の存在にネイリーンは察したかのように質問を続ける。
今回のヘイズル邸への侵入はランスの妹であるマイラの救出を目的としていた。ヘイズルの殺害は考慮していない。隠れる素振りも見せずに、悠然と屋敷から出て来た俺達の行動に彼女が戸惑うのも無理はなかった。
「敵に見つかってしまってね。戦闘になったんだ、それでマサキが気絶したので時間稼ぎのためにヘイズルと交渉することになった」
「交渉したってことは、ヘイズルを殺してはないんだね?」
それまでネイリーンの後ろに控えていた人物の一人がアリサに問い掛ける。どこかで聞いた声だと思って良く見ると、ウリクス卿の娘であり、以前のウンディーネ退治で世話になった〝白き翼号〟ミゼリア船長だった。
「・・・ああ、それは間違いない。もっとも、せっかくの機会だったんで〝落とし前〟はつけさせたけどね!」
ミゼリア本人がこの場にやって来ていたのは予想外のことだったが、アリサは質問に頷く。
「それを聞いて安心したよ。政敵とはいえヘイズルはメーゼレの評議会の一人だからね。奴を殺してないならウリクス家はあんた達を助けてあげられるよ!」
「ありがたい! ネイリーンは上手く交渉を纏めてくれたようだね」
「ええ、ウリクス卿はヘイズルを直接手に掛けないのなら私達に協力してくれると約束してくれました。いずれにしても、とりあえずは場所を移動しましょう!」
「ああ、匿う場所は用意してある。案内するよ!」
積もる話はあったが、俺達はミゼリアの案内に従い移動を開始した。
夜の闇に紛れながら俺達が連れて来られたのはウリクス卿の別邸と思われる、やや小振りな屋敷だった。
ネイリーンが交渉を成功させたとはいえ、さすがに本邸に見ず知らずの冒険者を匿うほど信用はしていないらしい。
もっとも、それは当然の判断であるし、俺達としてはヘイズルが手を出せない安全な寝床を用意してくれるだけでも有難いので、感謝こそすれ不満は何もなかった。
まあ、既にヘイズルには俺達に報復する余裕はないはずなのだが・・・。
「で、ヘイズルに落とし前をつけさせたそうですが、何があったのです?」
食堂で振る舞われた食事を終えると、早速とばかりにネイリーンが話を切り出す。別行動を取っていた彼女からすれば気になって仕方がないのだろう。
監禁されていたマイラも兄のランスに寄り添いながら見守っている。当事者の全員がこの場にいた。
「うん。一応、順に説明しようかな・・・」
アリサはネイリーンの求めに頷くと、もう一人、状況を見守っていた人物ミゼリア船長に視線を送る。協力を求めた以上、彼女にも詳しく知る権利があるのだ。
「お願いするよ」
「ウンディーネ退治を終えた私達はしばらくメーゼレで・・・」
ミゼリアが頷くとアリサは事の発端となったグルメツアーから説明を開始した。
「・・・監禁されていたマイラを見つけ出し目的を果たした私達は直ぐに脱出を図った。だが、一階に戻った辺りで私達に気付いたヘイズル側に見つかってしまい戦闘となる。その戦いでマサキは敵の魔法〝ライトニング・ボルト〟を受けてダウンしてしまう。即座に私が回復魔法を使うが、マサキが負った傷は思っていた以上に深く気絶したままだった。その間に屋敷中の兵士を連れたヘイズルが援軍に駆けつけ状況は悪化する。・・・今思えば、本当に危ない状況だったね。それで私は例の魔導具を使って時間稼ぎをすることにした。マサキはダウンしていたが、回復魔法の手応えで生きているのは知っていたから不意を突いてくれれば、まだ私達にも勝機があるはずだった。それに切り札の魔道具も手にしていたからね!」
話が佳境に辿り着きつつあったが、アリサは一度言葉を切ると、乾いた喉を麦酒で潤した。
俺自身も当事者であるが、気絶した理由を聞かされて背筋が凍る。〝ライトニング・ボルト〟は古代魔法スキルで覚える攻撃魔法だ。アリサの警告がなければ無抵抗のまま喰らっていただろう。
肝心のミゼリアも続きが気になって仕方がないのか、アリサが再び語り出すのを興奮した面持ちで待っている。また、海賊に打撃を与えた場面では海軍の幹部としては思うところがあったようである。
「それで私は交渉を開始し、ヘイズルに解毒剤を要求した。さっき話したとおり、この時点では魔道具を使って呪いを解除していたんだけど、ヘイズル側を油断させるためにね。この考えは的中し手強いと見ていた敵の魔術士が解毒剤を取りに現場を離れた。その絶好のタイミングで様子を窺っていたマサキが起き出したので、私達は攻勢を掛ける。不意を突いたこともあり、私達はヘイズルの制圧に成功する。もちろんヘイズルに直接的な危害は加えなかった。ただ、幾つかの約束をさせて、ついでに魔道具で創った薬を飲んでもらっただけ。その後は屋敷を出て・・・船長達を連れたネイリーンと合流を果たしたってわけだね!」
「なるほど・・・あんた達はヘイズルの影響から逃れるために、私達ウリクス家を頼ったけど、殆んど自力で解決してしまったわけだね・・・それでヘイズルにはどんな薬を飲ませたんだい?」
語り終えたアリサにミゼリアは苦笑を浮かべながら問い掛ける。ここまでの話を正しく理解していればある程度の予想は出来るはずだが、やはり直接確認したいのだろう。
「ふふふ、いわゆる〝ギアス〟の効果を持った薬だよ。約束を破ったり、そもそも守るつもりがない約束を交わしたりしたら、ペナルティーが発生するよう念じて創り出した。もっとも〝ギアス〟とは違い与えるペナルティーは激痛ではなく、単純に死とした。これでヘイズルはもう一生、嘘は吐けないね!」
「やはり、そうか! 強引な恐喝と策略で急激に力を延ばした奴からすれば、死刑宣告を受けたのも同然だ! これでヘイズルの派閥は力を失うだろう。そうすれば二つに割れていたメーゼレ評議会は父が掌握して意志統一が可能になるだろう。これで弱体化した海賊を一気に殲滅出来る!」
アリサが最後にヘイズルに突き付けた事実を知ったミゼリアは歓喜の声を上げた。彼女にとってはかつての求婚者ではあるが、感傷よりもメーゼレに与えている悪影響が払拭される喜びの方が強いようだ。
「だけど、問題が一つ残っているんだよね・・・」
喜ぶミゼリアに水を掛けるつもりはなかったと思われるが、アリサのこの言葉に彼女は表情を堅くする。
俺達はヘイズルに落とし前をつけさせたことで、彼がこれから魔道具を使って起こしたであろう悪事と野望を食い止めたが、魔道具そのものの脅威は依然として残されていた。
下手をすると、協力を求めたウリクス卿が第二のヘイズルとなる可能性がある。アリサはそのウリクスの娘であるミゼリアに魔道具をどうするべきか問い掛けたのだ。
「・・・その魔道具はどこか遠くの海に捨ててしまうのが良いでしょう。話を聞く限り、人の手には余る代物だと思います。私の父は野心家ではありませんが、この魔道具の存在を知れば、ヘイズルのように何としても手に入れようとするでしょうし、果てしない野望を抱くかもしれません!」
意外なことにミゼリアはそれまでの口調を改めると、俺達に懇願するように魔道具の処分を求める。肝っ玉母さんのような女性だったが、やはり本来は良家の子女なのだろう。使うべき態度と言葉は心得ているようだ。
「うん、実は私達も処分するつもりでいたんだ。ミゼリア船長が同じ考えに至ってくれて良かったよ!」
ミゼリアの言葉にアリサは俺達を代表して満面の笑みを浮かべて受け答えた。
ご愛読ありがとうございました。二章からは一日ごとの更新を予定しております。
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