第五十六話 二章第二十話 救出作戦
異世界を舞台としたハーレム冒険小説の通算第五十六話です。
目的を果たしたマサキ達はヘイズル邸から脱出しようとするが・・・。
初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!
読んでくれたら、作者のやる気が出て頑張れます!
「光の精霊よ、我らにまやかしの加護を与えよ!〝インビジビリティ〟」
屋敷に侵入した俺達はアリサの魔法〝インビジビリティ〟によって姿を消して屋敷の三階を目指して移動を開始する。
この魔法は以前、一号達サキュバスの目も騙した実績のとおり、術者だけでなく触れている者の姿も一緒に透明化させる。
海賊よりも、ヘイズルの方が敵として厄介なのは皮肉だが、時間が限られている以上、屋敷の中が完全に寝静まる真夜中を待つ猶予はない。多少の障害はこの〝インビジビリティ〟で切り抜けるつもりでいた。
姿隠しで屋敷内を巡回する女中や警護兵を何回かやり過ごした俺達は、順調にランスが目処を立てていた三階の部屋に到着する。その扉の前には完全武装した見張りの男が一人立っているので、重要な部屋なのは間違いない。
現時点ではランスの妹が監禁されている確証はないが、中を確認するためには見張りをどうにかする必要がある。
俺は仲間に目配せで合図を送ると、一気に間合いを詰めて見張りに襲い掛かった。
「な?!」
「〝スリープ〟!」
突然現れた俺の存在に驚きの声を上げようとする見張りだが、その時には俺の突き出した左手が相手の肩に触れていた。今度は俺の〝スリープ〟が成功し見張りの男は床に崩れる。
敵に出会う度に魔法を使っていては精神力が持たないが、ヘイズルの部下とはいえ問答無用で人間を殺すには抵抗があるし、何よりこの男には別の役割もあった。
「ここは任せて下さい!」
見張りを無力化させるとランスは早速とばかりに扉の開錠に入り、控えていたルシェラと俺で眠った見張りに猿轡と噛ませ手足を縛る。この部屋が外れだった場合には、人質の居場所を聞き出すために尋問をするつもりである。そのために生け捕りのしたのだ。
しばらくして、鍵明けに成功させたランスは一瞬の時を惜しむように部屋の中に入って行った。
「・・・マイラ?!」
「に、兄さんなの?!」
ランスを追い掛けるようにして部屋に入った俺が目にしたのは、廊下からの薄暗い灯りの中で抱き合う二人の人影だった。その様子からすると、やはりこの部屋が人質の監禁場所だったようである。
「ああ、マイラ! 酷い事はされなかったか?!」
「ええ、私はなんとか無事! 兄さんは?!」
「今のところは大丈夫だ!」
「良かった!!」
抱擁を解いた二人は改めてお互いの無事を確認すると涙を流して再会を喜びあう。
「・・・言い難いんだけど・・・そろそろ逃げ出すとしよう!」
しばらくは様子を見ていたアリサだが、きりがないと判断したのだろう。ランス兄妹に行動を促した。二人の気持ちはわかるが、俺達はまだヘイズルの屋敷の中に居るのである。
「・・・に、兄さん、こ、この人達は?!」
「大丈夫、味方だ! この人達もヘイズルに脅かせれていたんだが、お前を助けるのに協力してくれることになったんだ!」
「そ、そうなんですね、ありがとうございます!!」
それまで兄との再会で周囲に気が回らなかったのだろう。改めて俺達の存在に気付いたランスの妹マイラが怯えた表情を見せたが、兄によって説明されると泣きながら感謝を口にする。
マイラは元海賊の兄とは違い、擦れた様子の見えない十三、四歳ほどの少女だった。しかも普段からアリサ達を見慣れている俺でも可愛らしいと思うほどの美少女だ。ランスが必死になるのは当然と言えた。
「うん、事情が把握出来たようだね! 行こう!」
「その前に今度は見張りをここに閉じこめてと!」
尋問する必要が無くなった見張りを、俺とルシェラで部屋に放り込む。これで扉を締めれば、しばらくは見張りがさぼっていると思わせることが出来るはずだ。
俺達は再びアリサの〝インビジビリティ〟の効果を得るとヘイズル邸を脱出するために行動を開始した。
それまで順調に運んでいた人質救出作戦だったが、脱出経路である一階まで降りた頃にはヘイズル邸の中が慌ただしくなっていた。
これまでヘマした記憶はないので、運悪く門番がいないことに気付かれたのかもしれない。どうやら、そう簡単には逃がしてくれないらしい。
いずれにしても廊下の先にある屋敷の外に通じる勝手口の前には、武装した兵士を四人連れた女中が立っており、しきりに周囲を見回している。明らかに侵入者を警戒した防衛体制である。
その光景を見た俺は慌てて階段の奥に逃げようと後退するが、アリサを中心に団子状態になっていた俺達にそんな機敏な動きが出来るはずもなく。こちらに振り向いた女中と目を合わせてしまう。
その女中の顔は俺も覚えていた。ヘイズルと面会した時に直ぐ側に控えていた美人だったからだ。あの時は主人の愛人なのかと思っていたが、立場的にはこの屋敷の中でも上位にあるようだ。
「いたわ! 賊は階段の前にいる! 捕まえて! なんなら殺しても構わない!」
おそらく女中は〝ディテクト・マジック〟を使っていたに違いない。〝インビジビリティ〟を感知した彼女は仲間に俺達の居場所を知らせると、攻撃命令を発した。
「くそ! みつかった! 敵にも魔術士がいるぞ!」
俺は警告を伝えると、真っ先に剣を抜いて迎撃態勢に入る。ネイリーンがいない今の状況では俺が第一の前衛を務める義務があった。
敵の先陣は鎖帷子と胸甲で武装した戦士だった。俺の脳天を真っ二つにするつもりなのだろう。長剣を垂直に叩き降ろして来る。体格も俺より上で下手に受ければ剣ごと折られそうだ。
だが、俺は敵の圧力に怯まず一気に間合いを詰めると、最も早い攻撃である突きを繰り出した。先に倒してしまえば敵の攻撃を受けることはないのだ!
俺の剣の切っ先は狙いを誤ることなく、防御の薄い首筋へと突き刺さった。
人殺しは可能な限り避けるべきだが、手を抜けば自分だけでなく仲間を危険に晒すことなる。殺るべき時は躊躇わず殺る! これは俺がエレンディアで学んだ不変的な真理である。
剣を引き抜く直前、俺は既に絶命した敵に向って勢いのまま肩からぶつかり体勢を崩させる。後ろに控える敵への妨害であり、噴水のように溢れ出る鮮血を避けるためでもある。この頃の俺はそんなことも出来るようになっていた。
俺の目論見のとおり寸前まで生きていた敵は味方に向って血液を浴びせかけながら床に崩れる。恐るべき光景だが、今の俺には気にしている暇はない。同僚の死に臆することなく切り掛かって来た二番目の敵に対処しなくてはならなかった。
横殴りの斬撃を剣でいなした俺は素早く体勢を整え反撃に移る・・・移ろうとするが、その瞬間に敵の胸に矢が突き刺さった。鋼鉄の胸甲を容易く射抜く威力も恐ろしいが、乱戦の最中、針の穴を通すような的確なルシェラの腕前には驚愕するしかない。
もちろん仲間の援護は想定内のことだ、優勢と判断した俺は脱出ルートである勝手口に向って突撃を続ける。このまま一気に敵を殲滅して外に出るつもりだった。
「ダメだ! 止まれマサキ!!」
だが、一瞬の内に仲間を二人失って狼狽えていると思われる敵に斬り掛かる直前、アリサの悲鳴にも似た声が俺の鼓膜を震わせる。
彼女の言葉を信じた俺は勢いを殺すと直感的に防御体制を取る。その次の瞬間、視界が眩い閃光に包まれ強烈な痛みが俺の全身を襲った。
ご愛読ありがとうございました。二章からは一日ごとの更新を予定しております。
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