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第五十四話 二章第十八話 魔道具の秘密

異世界を舞台としたハーレム冒険小説の通算第五十四話です。

海賊の追手を振り切ったマサキ達は魔道具の秘密を解き明かそうとするのだが・・・。

初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!

読んでくれたら、作者のやる気が出て頑張れます!

 当初の予定ではヘイズルが用意した船と島の沖合で落ち合うはずだったが、海賊から船を奪った俺達はそのままメーゼレへの帰還ルートを取った。

 何しろ、これまでの経緯からして依頼主であるヘイズルが約束を守る保証はない。解毒剤を餌に新たな難題を吹っかけられる可能もある。

 そのために俺達はヘイズルが渇望している魔道具の秘密を解き明かし、取引の切り札とするつもりで意見が一致していた。


「そろそろ、問題の魔道具とやらを見せて貰ってもいいかな?!」

 そんな思惑から、海賊の追手を振り切って一段落するとアリサはランスに対して要望を示す。

「・・・ええ、これがヘイズル卿の求めている魔導具です」

 俺達の事情はランスも充分に理解しており、自然と集まって来たネイリーンとルシェラにも見えるよう魔道具を革鎧の下から取り出した。

「これが、私達の命運を握っていた・・・手に取ってもいいかな?」

「ええ、どうぞ・・・」

 ランスから魔導具を受け取ったアリサは陽の光に照らすように、銅製の盃を吟味する。俺は既に宝物庫から奪う時にその姿を確認していたが、改めて見ても特に価値のある代物には見えなかった。

「魔力が備わっているのは間違いないですが、それ以上のことはわかりませんね・・・」

 いつの間にか〝ディテクト・マジック〟使ったのだろう。ネイリーンが結果を口にする。

「うん・・・この魔道具は使用状態にならないと秘めている力を明かさないようだね・・・」

 ネイリーンに頷きながら、アリサは左手で顎を撫でる。考え込む時の彼女のくせだ。

 博物学のスキルを持つアリサなら何かしらの手掛かりを知っているのではと、淡い期待をしていたのだが、そう上手くはいかないようだ。

「・・・とりあえず、盃なのは間違いないようだし・・・何かを注(つ)いでみようか? これで反応するかもしれない・・・」

「それなら、海賊が置いていったラム酒があったよ!」

 アリサの発言にルシェラが素早く反応し、早速とばかり酒瓶を持って来るとアリサが待つ魔道具の中に透明な液体を注(そそ)いだ。

 何かしら変化が起きるのではと期待して待つ俺達だが、魔導具は何の反応も見せない。

「ああ・・・そんな、単純ではないか」

「じゃ、これはもったいないから私が飲んじゃうね!」

 アリサが溜息を吐(つ)きながら俺達の気持ちを代弁するが、ルシェラだけはラム酒の方が気になっていたらしく、魔道具を受け取ると一気に中身を飲み干した。

「「「「え!」」」」

「ふぅう・・・期待してなかったけど、まあまあの味だね!」

 ルシェラの行動に驚きの声を上げる俺達だが、当の本人は特に気にすることなくラム酒の味を報告する。

「いや、そうじゃなくて、よく、得体のしれない魔道具で酒を飲めるな!」

「だって、もったいないじゃん! それになんともないみたいだよ! それよりもマサキも一口くらい飲んだらどう? 冷えた身体が温まると思うよ!」

 俺達の心配をよそに酒の入ったルシェラは陽気に声を出すと、手酌で新たなにラム酒を注ぎ俺に押しつけるように魔道具を差し出した。

「・・・じゃ、せっかくだから」

 ルシェラの奇行に驚いた俺だが、彼女が身体を張って中身には異常がないことを証明したこともあり、盃を受け取るとラム酒を軽く口に含む。

 強いアルコール臭が鼻腔を刺激し、喉と胃を熱くする。先程まで寒さで震えていた身にはありがたいが、俺にはかなり強い酒である。

「確かに身体は温まりそうだけど、俺には少し酒精が強すぎるな。麦酒くらいなら丁度良いんだけど・・・え?」

 他愛のない冗談のつもりだったが、反応を見ようと視線を向けた俺の瞳に映ったのは、まるで時が止まったかのように驚く仲間達の顔だ。

「いや、つまらないことを言ったけど、そこまで驚かなくてもいいだろう・・・」

「いや、違う! マサキ、盃の中身が・・・」

 アリサが俺の右手を指差したことで、仲間達の視線が魔道具に集中していることに気付く。件(くだん)の盃に満たされているのは透明なラム酒ではなく、白い泡を立たせた麦酒と思われる液体だった。



「どうやらこの魔道具は注いだ中身を持ち主が念じた液体に変化させる効果があるようだ・・・」

 何回かの実験を繰り返し、その度に色を変えた液体を口に含んだアリサは魔道具の正体を見極めたとばかりに呟いた。彼女の言葉が真実であるならば、現在、盃に満たされているのは最上級品のワインである。

「うん、たしかにこのワインは美味しいよ・・・間違いなく最高級品だ!」

 その言葉を裏付けるように再び盃の中身を飲み干したルシェラが頷いた。

「中身を真水に!・・・おお! 確かにアリサの推測に間違いないようですね・・・これがあれば海上で水に困ることはないでしょう」

 更に盃を受け取って、改めて中身を変化させたネイリーンが魔道具の有用性を指摘する。

「確かに液体なら、そこら中にあるからな。今のところ使用に関して制限もないみたいだし、船乗りのとってはまさに宝だ!」

「うん、これがあれば船で干からびることはないね。だけど・・・水と美味い酒を出すだけの魔道具をヘイズルが欲しがるだろうか?」

 俺の指摘にアリサはネイリーンから盃を受け取ると再びラム酒を注いだ。

「いや・・・もしかすると、これで解決出来るかもしれない。・・・盃よ、私を蝕んでいる呪いを払う解毒剤を満たせ!」

 アリサ自身も答えを探していたのだろう。しばらく考え込んでいたが、何かの暗示を得たように盃に向って命令を発した。

「アリサ! この盃は魔法の薬を発現するほどの力も持っているのですか?!」

「いや、もしかしたらと思ったんだけど・・・」

 ネイリーンの問いにアリサは透明なままの盃の中身に対して苦笑を浮かべる。おそらくは劇的な変化を期待していたに違いない。


「・・・まあ、一応飲んでみよう!」

 仲間達が沈黙する中、俺は一縷の期待を込めて盃に口を付ける。

「うげ!」

 ラム酒の強い酒精を予想していた俺は、舌に感じた強烈な苦味で吐きだしそうになるのを必死に堪えた。これまで感じた最も苦い味を100倍に濃縮したよりも酷(ひど)い! 一口で頭がくらくらする程だ。

 だが、それでも多少は胃の中に入ったのだろう、身体がなんとなく軽くなったような気がした。

「だ、大丈夫ですかマサキ?! もしかしたら逆に毒に変化したのでは?!」

「・・・いや・・・体調は無事だと思うので、単純に不味いだけだと思う」

「遅れて効果が出る場合もありますし、念のため確認しましょう! 〝ディテクト・マジック〟これは・・・マサキの身体を蝕んでいた呪いの効果が消えています!!」

「まさか! 本当に!」

 素早く〝ディテクト・マジック〟で俺を確認したネイリーンの報告にアリサも驚きの声を上げる。自分の予想が的中したことよりも、魔導具が秘める力への畏怖だと思われた。

「本当に! じゃ、私も一口貰うね!」

「ああ、ルシャラ! 死ぬほど苦いからな! 気を付けろよ!!」

「もう、マサキは大袈裟だね! そこまで苦いわけ・・・うげぇええ!!」

 俺としては真面目な警告のつもりだったが、ルシェラは勢いのまま解毒剤を口にすると悲鳴を上げた。

 それを見ていたアリサとネイリーンの二人が解毒剤を口にするのに、しばらく時間が掛かったのは言うまでもない。

 奇しくも魔道具によって解毒剤を手に入れた俺達だったが、それは海賊を相手にするよりも遙かに厳しい試練を味あわせたのである。

ご愛読ありがとうございました。二章からは一日ごとの更新を予定しております。

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