第五十三話 二章第十七話 海賊の追手
異世界を舞台としたハーレム冒険小説の通算第五十三話です。
海賊達はマサキ達を簡単に逃さなかった。迎撃に出るが敵には人外の存在がいた!
初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!
読んでくれたら、作者のやる気が出て頑張れます!
順調に進むと思われた脱出劇だが、盗んだ舟が沖合に出たところで風が弱まり速度が落ちる。
こればかりはどうしようもないので再び良い風が吹くことを願って待つが、そうしている間にも復讐を誓う海賊は俺達に迫っていたらしい。
「皆! とうとう追手が現れた!」
目の良いルシェラの警告に、舵を受け持つランス以外の全員が船の後部に集まり出す。
最初は単なる点にしか見えなかった点が、しばらくして俺の目にも朝日に照らし出された大型の船が映し出される。
その船には帆が張られておらず、棒のようなマストが寂しく立っているだけだ。どうやら、風には頼らず櫂の力だけでここまで追って来たようである。
こちらも速度を上げたいところだが、俺達の船は小型の帆船で緊急時用の小さな櫂が左右に一本ずつあるだけだ。この程度では、どんなに漕いでも焼石に水だろう。俺達は迫りくる海賊へ戦いを覚悟した。
海賊船の舳に集まる海賊達の人影が判別出来るまで近づくと、不意にその中の一人が海に飛び込んだ。何事かと見守っていると、そいつは人間とは思えない速度でこちらに向って泳ぎ始める。まるで生きた魚雷だ。
「あいつは半魚人のジェルダです! 夜目の効く厄介な幹部がいると言いましたが、あいつがそうです! 合流して追ってきたようです!」
「夜目が効く幹部って人間じゃなかったのか?!」
「ええ、魚人は深海で暮らしているから人間よりも遙かに夜目が効くんです!」
「そんなことより、まずい! あいつ、こっちの船底に穴を開けるつもりだよ!」
俺がランスに唸っている間にも、アリサが状況の悪化を告げる。
〝ウォーター・ウォーキング〟で迎撃に出たとしても、海中から船底に穴でも開けられて船を沈められてしまえばメーゼレの帰還は不可能だ。何らかの手の打つ必要があった。
「アリサ! 俺に水中呼吸の魔法を掛けてくれ! あいつは俺が食い止める!」
鎧と服を脱ぎながら俺はアリサに訴え掛けた。
「そんな! マサキは・・・」
「そうだよ! マサキは海の中は苦手なんじゃ?!」
「いや、ここは俺に任せてくれ! 大丈夫だ!」
海への恐怖は未だに完全に拭えていないが、鎖帷子を纏ったネイリーンや弓を使うルシェラよりも俺が海中で戦う方が適任だ。やるしかなかった。
「・・・わかった。頼むよ、マサキ! 水の精霊よ、その力で彼に水中呼吸の加護を与えよ!〝ウォーター・ブリージング〟」
下着姿となった俺は短剣をだけを掴むと、アリサから魔法を授けられると同時に海に飛び込んだ。
冷たい海水の感覚が〝あの時〟の状況を克明に思い出させるが、俺は無視した。アリアの魔法によって呼吸は維持されているし、何よりも具体的な脅威がすぐそこに迫っているからだ。
俺の目はこちらに圧倒的な速度で迫る魚人の姿を捉えていた。魚人もこちらの存在に気付いているに違いないが、速度を落として警戒するそぶりは見せない。
おそらくは『人間如きが海中で何が出来る!』とでも思っているのだろう。手にした三又の銛で俺を串刺しにしようと一直線に迫ってくる。
「〝ショートリープ〟!」
だが、俺は銛が突き刺さる寸前で瞬間移動を発動させた。
海中で半魚人と対等に戦えると思うほど俺も馬鹿ではない。それでも水中戦を挑んだのは、俺にはこの切り札があったからだ。
〝ウォーター・ブリージング〟は水中での呼吸と発音を可能とさせる魔法である。つまり俺は海の中でも〝暗黒魔法〟の使用が可能なのだ。
「〝エナジードレイン〟!」
更に俺の姿を見失って狼狽する半魚人に〝エナジードレイン〟を背後からお見舞いする。隙を突いたためか〝ショートリープ〟で消費した以上の精神力が俺に補給された。
海中での動きの鈍さを〝ショートリープ〟で補い〝エナジードレイン〟で半魚人の精神力を削りながら、最後は敵を気絶させて倒す作戦だ。
一種のハメ技だが、ここは半魚人のホームグラウンドである海の中である。馬鹿正直にまともに相手をする必要はない。勝てば良かろうなのだ!
再び〝ショートリープ〟からの〝エナジードレイン〟のコンボを決めると、半魚人は俺の意図の気付いたのだろう。魔法を発動させる暇を与えないとばかりに、慎重に接近戦を挑んで来る。
もちろん、それに付き合う義務は俺にはない。〝ショートリープ〟で翻弄し、三発目の〝エナジードレイン〟を食らわすと半漁人は死に掛けの魚のように腹を上にして海上に浮かび上がっていった。
もちろん、この勝利に酔いしれている暇はなく、俺はアリサ達に合流すべく海面を目指した。そろそろ海賊船が追い着いているはずだった。
海上に顔を出した俺は、マストを燃え上がらせる海賊船を目にする。おそらくはルシェラが再び火矢を使って攻撃を開始したのだろう。
更にその火事を消そう動き回る海賊達をルシェラが的確に射抜いており、船上からは矢を受けて落ちる者達の姿も多数ある。
それだけでもえらい騒ぎなのだが、突如雨雲が現れると雷を甲板に向けて雨のように降らせる。アリサの攻撃魔法の中で最強を誇る〝コール・サンダー〟だ。この一撃が決め手になったようで海賊船は漕いでいた櫂の動きを止めた。
それを見て取った俺はチャンスとばかりに足を止めた海賊船に獲り付くと、半魚人を見倣って船底に穴を開ける作業に挑戦する。
俺が思っていたよりも船の木材は堅く、なかなか刃は通らならかったが、釘を撃ちこむように叩くことで短剣を根本まで刺し通し、後はそれを引っこ抜くことで小さな穴を開けることに成功させた。
これで海賊船は甲板の火事と合わせて浸水する船の修復に時間を掛ける必要があるだろう。
目論見を達成させた俺はアリサ達の元に戻るために泳ぎ出す。呼吸こそアリサの魔法で保証されているが、海水の肌を突き刺すような冷たさはどうしようも出来ない。そろそろ肉体的に限界を迎えようとしていた。
「マサキ! 捕まって下さい!」
戻ってきた俺をネイリーンの力強い腕が船の中へと引っ張り上げてくれる。自分でも彼女の身体にしがみつこうとするが、麻痺したように緩慢な動きしか取れなかった。
「だ・・・ずかった・・・」
船上に戻った俺は震えながらも必死に礼を伝える。何しろ俺の身体には船に這い上がる力も残されていなかったのである。
今更だが、やはり人間の身体は長時間の海中での活動に適していない。呼吸はもちろんだが、海水に奪われる体温はどうしようもなく。ウェットスーツもなしに海中で動き回った俺は寒さで凍えそうになっていた。
「魚人が浮かんで来たので、マサキが勝ったのは知ったけど、なんで直ぐに戻ってこなかったんだ! ほら、これを!」
「て、敵の・・・船に、あ、穴を開けて・・・」
「そんな、無理をしなくていいのに! 私のも使って!」
「はあ・・・」
アリサとルシェラが責めながらも、びしょ濡れの身体をマントで包んでくれたことで、俺はようやく生きた心地を取り戻した。
「では、行きましょう!」
俺を回収したことで弱いながらも風を捕えたランスが出発を合図する。かなりの深手を負わせたとはいえ、海賊船は未だ健在である。反論の余地なく、俺達はメーゼレへの逃避行を再開させた。
ご愛読ありがとうございました。二章からは一日ごとの更新を予定しております。
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