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第五十二話 二章第十六話 脱出

異世界を舞台としたハーレム冒険小説の通算第五十二話です。

海賊に存在が露見したマサキ達は新たな脱出方法を取る!

初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!

読んでくれたら、作者のやる気が出て頑張れます!

「風の精霊よ、その力で我が敵を抱け!〝ブレードストーム〟」

〝ショートリープ〟によって地面近くまで移動した俺は、中庭に着地すると同時にアリサの声を聞いた。間髪を入れずに風が唸る音と複数の悲鳴が夜の闇に響き渡る。

 砦の異変に気付いたアリサ達が、俺達の援護として海賊への攻撃を開始したに違いない。

「怪我は? 走れるか?!」

「ない、大丈夫だ! そっちは?」

「こっちもない、行こう!」

 あの高さから飛び降りてケロっとしているランスには驚かされるが、合流した俺達は、更にアリサ達と合流するために悲鳴が聞こえた方向へと走り出した。


 事前の約束で侵入が発覚した場合、陽動役のアリサ達は砦と外を繋ぐ門とそこを見張る海賊達を襲撃するよう取り決めていた。

 門を制圧すれば脱出ルートを確保すると同時に、侵入した俺とランスに殺到する海賊達を二分することが出来るからだ。

 もっとも、そのためにアリサ達はたった三人で最も警備が厳重で戦力を確保している要所への襲撃を強いられることになる。

 俺は少しでも早くアリサ達に合流して苦戦する彼女達を救おうと全力で走った。


 だが、喧騒が響く中庭の一角に辿り着いた俺が目にしたのは、数で上回る敵に防戦を繰り広げる仲間の姿ではなく。辺り一面に倒れる海賊の身体で埋め尽くされた地獄絵図だった。

 倒れている海賊達は軽く見ただけでも十人近くはいる。剣で倒された者、矢を受けた者、全身を何かで切り裂かれた者達等、その傷は千差万別だが苦痛で喘きながら倒れているのは皆同じだ。

 夜なので血の色は見えないが、鼻を突く生臭い匂いでその凄惨さが予想出来た。昼間だったら吐いていたかもしれない。

 喉の奥に酸っぱいモノを感じながら俺は、仲間達の実力を侮っていたことを知った。



「皆(みんな)! 二人が帰って来た!」

 合図の口笛を鳴らした俺に気付いたアリサが、ネイリーンとルシェラに告げる。

「〝エナジードレイン〟」

 相討ちの危険を逃れた俺は、援護と精神力回復を兼ねて生き残りの海賊に向けて〝エナジードレイン〟を放つ。

 不意打ちを受けて動きを止めた海賊をネイリーンが倒し、ルシェラも別の敵を射ることで、その場にいた海賊達は全滅となった。

「例の物は?!」

「手に入れた!」

 合流した俺達にアリサが問い掛け、ランスがそれに答える。

「なら、もうここに用はないね!」

 もしかすると、このまま砦の海賊達を倒すことも可能だったのかもしれないが、アリサは撤退を告げた。俺達の目的は魔道具の奪還で、海賊の討伐ではないのだ。

「土の精霊よ、我が命に従いその力を壁として示せ!〝スピリットウォール・ノーム〟」

 砦の外に出るとアリサは門に被せるように精霊魔法で土の壁を作り上げる。これでしばらくは時間稼ぎが出来るだろう。


「・・・歩いて沖に出る頃にはもう、夜が明けているだろうね。予定を変更して海賊たちの船を盗んでそれで逃げよう!」

 一段落したことでアリサはこれからの指針を俺達に告げた。

 当初の予定では帰りも往路と同じく〝ウォーター・ウォーキング〟で島を密かに脱出するつもりだったが、俺達の存在が海賊に発覚した今の状況では、もう隠密行動をする意味は無い。むしろ暢気(のんき)に海上を歩いていたら容易く追い着かれてしまうだろう。

「わかりました! それでしたら私に考えがあります!」

 当然ながらアリサの考えに俺を含めて仲間からの異存はなく、島に詳しいランスが代表するように答えた。



「おい! 大変だ! 裏切り者が出たってよ!」

「ああ?! まじかよ! それで砦の方が騒がしかったのか!」

「ああ、そうだ! しかも、そいつらは隠していたボートで沖に逃げたらしい! その捜索のために、いつでも船を出航出来るようにしとけって、お頭の命令だ!」

「そいつは、一大事だ!」

「ああ、だから手分けをして他の船の連中にもそのことを報せに行ってくれ!」

「わ、わかった!」

 波止場までやって来た俺とランスの二人は再び海賊を騙(かた)って、船を見張っていた当直達に嘘の命令を報せる。

 混乱に乗じて海賊達を翻弄し、彼ら自身に俺達が逃げる船の準備をさせる策略だ。砦が騒いでいるのは紛れもない事実なので、彼らの多くは俺達の嘘を信じて散って行く。

「それで、どんな奴等なんだ、お頭を裏切ったアホ共は?」

 残った海賊一人が仲間の去った桟橋を見つめながら俺に問い掛ける。

「こんなアホさ! ついでに、そこの小型船を今直ぐ出せるようにしてもらおうか!」

 俺は意地の悪い笑顔を浮かべると、海賊の首に剣を突き付けて命令を下す。残っていたもう一人はランスが気絶させていた。


「こ、こんなひでえこと・・・人間のやることじゃねえ! この外道どもが!」

 脅して出航の準備を手伝わせていた海賊が泣きながら恨みの声を上げる。海賊達に人の道をとやかく言われるのは腑に落ちないが、まあ気持ちはわかる。

 何しろ俺達は海賊達の船に、次々と火矢を放っているのである。恨まれるのは当然だろう。


 騙して船を奪った俺達は隠れていたアリサと合流すると出航の準備を進めながらも、ルシェラには火矢を作ってもらい、離れ際にそれを使って追手の憂いを断つことにした。

 本来は混乱を助長させ時間稼ぎ程度のつもりだったが、ルシェラは火矢を情け容赦なく、的確に一番燃えやすい畳まれた帆に命中させる。

 当直の海賊達も消火しよう必死だが、明らかに後手に回っている。このままではほとんどの船が焼け落ちると思われた。泣くのも無理はない。

「風を捕えました!」

 海賊達の悲鳴が響き、火の爆ぜる匂いが漂う中、舵を受け持っていたランスが俺達に報告する。その声のとおり小舟は速度を上げて波止場の外に向って進み出しつつある。脱出準備は完全に整った。

「この男はもう用済みですね?」

「そうだね、人質を取るにしても見張りが必要になるし解放しよう」

 ネイリーンがアリサの許可を得ると、それまで恨み言を叫んでいた海賊を海に向ってゴミのように放り出す。先程からどっちが海賊かわからないような酷(ひど)いことをしているが、どうせ連れて帰っても海賊は縛り首である。ここで海に捨てる方がまだマシだろう。

「よし、出航だ!」

「「「「おお!!」」」」

 順調に沖に向かう様子に気を良くしたアリサは宣言し、それに俺達は揃って答える。もしかすると俺達は冒険者よりも、海賊の方が似合っているのかもしれない。

ご愛読ありがとうございました。二章からは一日ごとの更新を予定しております。

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