第五十一話 二章第十五話 海賊の宝物庫
異世界を舞台としたハーレム冒険小説の通算第五十一話です。
目的の情報を手に入れたマサキ達は海賊の本拠地である砦に侵入する!
初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!
読んでくれたら、作者のやる気が出て頑張れます!
「〝ショートリープ〟」
俺は魔法で城壁を越えると砦の中庭へと侵入した。
すかざず、予め掛けていた〝スネーク・センス〟の力で、闇夜に包まれた周囲を窺う。
この魔法は熱で獲物を捕らえる蛇の感覚を術者に授ける一種の暗視能力だが〝生き物〟を見つけることに特化していた。例え物陰に隠れていても滲み出る熱で察知することが可能なのだ。
その力で見える範囲に見張りがいないことを確認した俺は、用意していたロープを城壁の外に投げつける。
やがてそのロープを使ってアリサ、ルシェラ、ランス、そして殿のネイリーンの順で砦内に続々と侵入を成功させた。
ちなみにネイリーンにはアリサが〝サイレンス〟の魔法を事前に掛けており、鎖帷子を纏った完全武装ながらも音を立てる危険性を排除している。
まあ、重さだけはどうしようもないので、彼女が壁を登る時は先に侵入した四人がかりで必死にロープを押さえるはめになったのだが・・・。こればかりは仕方がない。
砦内に潜入後は再び、俺とランス組とアリサ、ネイリーン、ルシェラ組の二手に分かれる。
俺とランス組は目的である魔道具の捜索と回収、アリサ組は万が一俺達が見つかった場合に備えて陽動と脱出ルートの確保を務める手筈としていた。
今回もランスに俺が同行するのは、単純な消去法である。
アリサとネイリーンは基本的に隠密行動には向かず、室内の探索ではルシェラよりも暗黒魔法スキルと限定的とはいえ盗賊系スキルを持つ俺の方が適切なのだ。
そのような理由から俺は再びアリサ達に別れを告げると、ランスの後に続き砦内部への侵入を開始した。
「そしたら、ジャークスの野郎が、いかさましやがったんだよ!」
「あいつ、またそんなことしたのかよ、本当に懲りねえな!」
接近しつつある話し声を聴きながら俺とランスは見張り達がやって来るのを、曲がり角に潜んで待っていた。
これまで内部事情を知るランスの案内で、護衛の控室と食堂を備えた一階、幹部達の個室がある二階を越えて海賊の首領の部屋と宝物庫のある三階へと順調に忍び進んでいたが、とうとう露見する危機に見舞われたのである。
肝心の宝物庫に繋がる廊下は一方通行なので、隠れてやり過ごす手立てはない。発覚される前に無力化する必要がある。俺は暗闇の中その時を待った。
「それで・・・」
「まじかよ・・・」
「〝スリープ〟!」
会話に夢中な見張り達が角を曲がろうとしたまさにその瞬間、俺は飛び出すと二人組に向けて眠りを齎す魔法を掛ける。
「「な!! お・・・」」
唐突に現れた俺の存在に彼らは揃って悲鳴を上げようするが〝スリープ〟の効果によって途中で意識を失うと腰を曲げて崩れ落ちる。その二人の身体を俺と同時に飛び出していたランスが支え、床にゆっくり降ろした。
魔法が抵抗された場合は彼が見張りの喉を切り裂く予定だったのだが、そこまでしなくて済んだようである。
「なかなか、やるね・・・」
見張りの身体を廊下の端に置いたランスは、それだけを俺に告げると静かに立ち上がって奥に向かって歩き出す。どうやら、未知数だった俺の実力を認めてくれたようである。
もちろん、ランスに一目置かれて悪い気はしないのだが、浮かれている状況ではないので俺は黙って彼の後に続いた。
「ここは俺に任せてくれ・・・」
しばらくして突き当りに行き着くと、ランスは後ろの俺に告げ、腰のベルトポーチから数々の道具を取り出す。どうやら、海賊達の宝物庫まで辿り着いたようだ。
これから彼はその宝物庫に掛けられた鍵と、おそらく仕掛けられていると思われる罠の解除に挑戦するのである。
俺の〝ショートリープ〟を使えば安全に中に入ることも可能だが、その場合、俺とランスの往復で四人分の精神力を消費することになる。
とてもじゃないが、既に精神力を消費している今の俺に〝ショートリープ〟を多用する余裕はない。ある程度は盗賊の真似事を可能とさせる暗黒魔法スキルだが、コスト的にはやはり本職には敵わないらしい。
そんなことを考えながら、ランスの仕事ぶりを見守っていると『カチャリ』と金属が軋む音が聞こえる。彼は鍵と罠の解除に成功したのだ。
「さすがだ・・・」
エレンディアでは優れた技術は魔法にも引けを取らないようである。俺はゆっくりと宝物庫の扉を開けるランスを労った。
遂に海賊の宝物庫に入った俺達はランスが用意していた小型のランタンに火を灯し、その光で内部を探索する。
俺としては金銀財宝があちこちに積み上げられた部屋を想像していたのだが、宝物庫の中は樽や箱が雑に置かれていて、どちらかと言うと小さな倉庫といった感じである。海賊といっても莫大な財宝を蓄えているわけではないらしい。がっかりである。
期待外れも甚だしいが、部屋の奥の壁には棚が設置されており、そこにようやく価値のありそうなお宝が飾られていた。
迂闊に触るなとランスに警告されているので眺めるだけだが、棚には幾つかの剣等の武器や装飾品の首飾りや腕輪等が置かれている。既にランスは興味なさそうに無視しているので、これらは目的の魔道具ではないようだ。
ランスによると回収目的である魔道具は〝それ〟と知らない限り利用も出来ないし、真の効果を発揮出来ない代物らしい。彼も外見上の形はヘイズルから教えられているが、具体的にどのような効果を持つ魔導具かは知らないとのことだ。
それでも魔道具であることは多くの魔法スキルで比較的初期に覚えられる〝ディテクト・マジック〟で判別出来るので、海賊達は未知の宝としてこの宝物庫で保管している可能性が高いというわけである。
ちなみにその形状は未だ俺達には未だ秘密にされていた。裏切りを恐れてのことだろう。ランスからしてみれば魔道具の入手こそが、妹を救うただ一つの手段である。慎重になるのは理解出来た。
どうやら目に着く場所に魔道具は無かったらしく、ランスは無造作に置かれている箱の一つに手を掛けた。
「こ、これだ・・・やった!」
四つ目の箱を開けたところでランスは興奮を抑えた声で喜びを表現する。形状は彼しか知らないので後片付けに専念していた俺だが、その声に釣られるようにランスの手元に視線をやる。
そこにあったのは小さな盃だった。形はワイングラスそのままで、銅で出来ているのか赤味を帯びた茶色の金属で作られており、特に価値のある代物には見えない。これが俺達の命運を担っていたのかと思うと、やや拍子抜けだ。
それでもランスが認めた以上、このありふれた盃こそがヘイズルの欲している魔道具に違いない。彼は首から下げた小袋にその盃を入れると、更にその小袋を革鎧の下へ慎重に仕舞い込む。あとはメーゼレに帰還するだけだ!
撤退する合図を送るランスに、俺は先程の棚に置かれていた宝物に指を差す。せっかく命を賭けて海賊の宝物庫までやって来たのである。ヘイズルの魔道具だけでなく、俺達自身の〝お土産〟を頂いても良いはずだった。
ランスも頷くと棚を覗きこみながら、ブレスレットらしき装飾品を自分のポケットに詰め込んだ。それを見た俺も先程から目に付けていた剣と幾つかのお宝を用意していた布で包みバックパックに収納する。剣は俺用で残りは外で待っているアリサ達への分だ。
「もう、行こう!」
「・・・わかった!」
可能ならバックパックに詰めるだけお宝を持ち出したかったが、ランスが催促したので俺も引き際と判断し彼の判断に従い宝物庫を出た。
『アリサ達と合流しこのまま島を出るだけだ!』
そんなことを考えていた俺だったが、現実はそれほど甘くなかった。宝物庫を出た俺とランスはこちらに向か来ると思われる数多くの足音と、砦内に響き渡る怒号を聞く。
理由は不明だが、宝物庫に忍び込んだ俺達ことを察知したのだろう。このタイミングでやって来たところを見ると、最後の宝漁りが不味かったのかもしれない。クソ!
「このままでは、追い詰められる! その窓から飛び出すぞ!」
ランスの判断は素早かった。俺にそれだけ言い残すと、明かり取り用の小さな窓に身を投げ出して真っ先にこの場から逃げ出した。
ここは三階だが、何としても生きてメーゼレに帰る! という執念がそうさせたに違いない。
「いたぞ! 一人だ! 殺すなよ! 見せしめにする!」
廊下の先から海賊達が姿を見せ始め、先頭にいる大柄の男が物騒なことを後ろの仲間達に命令する。どうやらこの男こそが海賊の首領だろう。
こちらを照らして出すランタンが逆光となって見え難いが、ドワーフにも負けない立派な髭と体躯をした人物である。
「〝ショートリープ〟!」
本物の英雄なら、ここで海賊とその首領を返り討ちにするのかもしれないが、今の俺にそんな実力はない。ランスに続いて温存していた〝ショートリープ〟で中庭に向って瞬間移動を開始する。逃げるが勝ちなのだ!
ご愛読ありがとうございました。二章からは一日ごとの更新を予定しております。
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