第五十話 二章第十四話 合流そして居直る
異世界を舞台としたハーレム冒険小説の通算第五十話です。
娼婦の誘われたマサキは一先ずは客を装うのだが・・・?!
初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!
読んでくれたら、作者のやる気が出て頑張れます!
「ねえ、一杯奢ってよ! 良いでしょう? 私達、酔っている方がサービス良くなるのよ!」
「そう、身体が火照ってきちゃうの!」
二人組の娼婦は挑発的な台詞を呟きながら、俺とランスの隣にそれぞれ腰を降ろす。今更断るのは不自然だし、元より情報収集が目的である。俺はランスに目配せをして任務続行を促した。
「そいつは楽しみだ! いいぜ! 一杯と言わず二杯でも三杯でも!」
ランスはまさに調子に乗ったチンピラとばかりにはしゃぐと、自分の隣に座った娼婦の腰に手をやって自分に引き寄せる。
「すごい!お兄さん、太っ腹ね!」
それを嫌がることなく、まあ本心は分からないが、娼婦も自らランスに甘えるように抱き付いた。
「私の分もいい?」
「ああ、もちろん!」
俺の相手となった娼婦が胸を腕に押しつけながら耳元でおねだりをしたので、俺もランスのテンションを真似て彼女の願いを聞いてやる。近くで見ると、思っていたより化粧が濃いが、スタイルは良いので及第点と言ったところだ。
おそらく彼女達は自分達の女性としての魅力を利用して、客に少しでもこの酒場で金を使わせようとしているのだろう。
一号にもこんな感じで迫られたことがあったが、それは金銭抜きのことだ。・・・俺は自分が相当に恵まれていたことを知る。今度トリムに帰ったら一号には好きなだけ精神力を融通してやろう。
「へへへ、良い身体してんな! 姉ちゃん!」
「もう! せっかちね!」
もっとも、今はスケベでガサツな海賊を演じなくてはならない。俺はランスを真似て右手で娼婦の身体を抱き寄せると、彼女の豊満な胸をその重さを確認するように左手で揉んだ。
手の平に伝わる独特の感触に俺は思わず笑みを零すが、これはあくまでも情報を仕入れるための、やむを得ない演技なのだと、自分に言い聞かせる。
しばらく四人で飲んでいた俺達だが、頃合いと見たところで二階に上がる。どうやら『一階で酒を飲みながら好みの相手見つけ、値段交渉が成立すると上の個室で続きを楽しむ』というのが、この店のシステムのようである。
「じゃあ、相棒! 〝こっち〟のことは俺に任せてお前も楽しめよ!」
ランスはそう告げると娼婦と隣の個室に消えて行く。知らない者が聞けば何でもない台詞だが、おそらくは情報収集は俺に任せろという意味なのだろう。
「おう! もちろんだぜ!」
俺はそれに海賊らしい軽薄な返事で答える。もっとも、酒の力を借りて陽気なフリはしているが、実は緊張状態だ。既に彼女達には前払いの金を払っている。つまり、もう何をやっても構わないのだ!
「じゃ、私達も楽しみましょう!」
金払いの良い客を装っているので、娼婦は上機嫌で俺の手を引くと個室に誘った。
「ふふふ、お兄さんどうしたの? てっきり個室に入ったら、むしゃぶりついて来るって思ってたのに! 本当は甘えたいのかしら? それなら私がママ役になってあげるわよ? そういうお客も少ないの、遠慮しなくていいのよ!」
個室の中に入った俺がどうしようか悩んでいると、何かの勘違いをした娼婦が問い掛ける。彼女が示唆しているのは、いわゆる赤ちゃんプレイのことだろうか?
世の中にはそのような性癖を持つ上級者がいることは知っていたが、彼女の発言からするとそれを願う客は少なくないようである。もしかすると、ここの海賊達は殺伐として生き方に疑問を感じ、母の愛に飢えているのかもしれない。
だが、そんな娼婦の言葉で俺は劣情に揺れていた心に、平静を取り戻すことになる。〝ママ〟で自分の母親の顔を思い出したからだ。とてもじゃないが、俺はそんな上級者には成れなかった。
「・・・そうだな。とりあえず、そこに横になってくれないか?」
俺は粗末な寝台を指して彼女に頼む。
「うん、どうする服は脱ぐ? それとも脱がしたい?」
「あ、服はそのままで」
「ふふふ、甘えたいけど、自分で脱がしたいのね!」
これがプロ魂なのだろうか、娼婦は俺の指示に従って横になるも、打てば響くとばかりに言葉を返して来る。
「次は目を瞑ってくれ」
「ママを夜這いしたいのかしら? いけない子ね!」
「〝スリープ〟!」
勝手に盛り上がる娼婦に俺は標的を睡眠状態にする暗黒魔法を掛けた。これで彼女は朝まで目を覚ますことはない。そして、その頃には俺達はこの島を離れているはずだ。
ちょっともったいない気もするが、これが最善の方法だろう。情報収集に出掛けたのに『娼婦と気持ち良いことして帰って来ました!』では、間違いなく俺はネイリーンに殺されてしまう。
その後はすっきりした顔で帰ってきたランスと一階で合流し、俺達は暗闇に紛れてアリサ達の元に戻る。
ランスは巧みな話術で肝心の情報の娼婦から聞き出したようで、夜目の効く厄介な幹部とやらは今現在、砦にいないことが判明した。これで忍び込む手筈は整った。
「おかえり! どう? 砦に忍び込めそうかな?」
「遅かったですね! 心配しましたよ!」
「良かった! やっと帰って来た!」
予め決めていた口笛の音を合図に合流を果たしたアリサ達は、それぞれの言葉で俺とランスを出迎える。
「待たせるつもりはなかったんだが、こっちも大変だったんだ。でも、ランスがしっかり情報を仕入れてくれた」
「ええ。私が危惧していた幹部は、今現在砦にいないことが確定しました。直ぐにでも決行しましょう。案内します!」
「「「おお!」」」
成果を伝えたことで、女性陣はそれまでの不満と憂慮を忘れて歓声を上げ、早速とばかりに砦に向う準備を開始した。
「あれ? なんかマサキから嗅いだ事のない匂いがする。・・・これは安物の化粧品?!」
隊列を整えるため俺の後ろに回ったルシェラが狩人の鋭い嗅覚で残り香を感じ取ったのだろう。鋭い指摘をする。
「え、マサキから化粧の匂いが?!」
ルシェラの声にネイリーンも反応し、顔を俺に近づけて犬のように鼻を鳴らして俺の匂いを嗅いでくる。これは面倒なことになりそうだ。
「たしかに、化粧・・・というか女の匂いがしますね。・・・もしかしてマサキ達はこの状況で女遊びをしていたのですか?!」
化粧の残り香だけでは女遊びをしていたとは限らないのだが、勘の良いネイリーンは限りなく正解に近い真実を探り当てた。この二人は猟犬と探偵の素質を合わせ持っているのか?!
「いや、それは違います。遊んで来たわけではありません。酒場でさりげなく情報を聞き出すにはその手の女性達から聞くのが一番安全だったのです!」
「だからって! そんな・・・」
ランスが俺を庇うように釈明するが、仲間の身の安全を願って待っていたネイリーンからすると、知らない女と遊んで来た事実は受け入れ難かったのだろう。俺達を糾弾しようとする。
「待ってくれネイリーン! いや、アリサとルシェラも聞いて欲しい。俺は疾しいことは何一つしていない! 本当だ! 信じてくれ!」
これがあるから俺は先程の誘惑に必死に耐えたである。
「・・・本当でしょうか?!」
「本当かな・・・」
「・・・私はマサキの行動をとやかく言う気はないけど、マサキがそこまで自信を持って言い切るってことは本当みたいだね」
「確かに・・・そうですね。優柔不断なマサキが嘘をこれほど堂々と言えるはずがありません。事実だったら、女の方から誘惑して来たんだぁ! とか醜い言いわけをしていたはずですし」
「うん、絶対そんなこと言ったね! 誤解してごめんね、マサキ!」
半信半疑のネイリーンとルシェラだったが、アリサの言葉で考えを改めてくれたようだ。さすが一番付き合いが長いアリサである。
それに比べて二人は、俺がどれだけ苦労して男としての本能を抑えつけてパーティー内の不和を防ごうとしているかを、まるでわかっていない! そう思うと俄然として腹が立って来る。
「いや、むしろあんな状況になりながら、何もしないで帰って来た俺をネイリーンとルシェラは褒めるべきだ! ぽっと出の女なんかに誑かせられなかった俺を褒めて欲しい! そう、この件が片付いたらご褒美が欲しい! とりあえず一緒に添い寝くらいはしないとダメだと思う!」
「うわ! 突然、マサキが居直った!」
「全く、マサキはいざって時に頼もしいのに・・・そもそも、あんな状況って、どんな状況?! ネイリーンも何か言ってやってよ!」
「いや・・・マサキが疾しいことをしていないのなら・・・添い寝くらいなら、して上げてもいいかと・・・」
「「「ええ!!」」」
予想外のネイリーンの反応に俺を含めた三人で驚きの声を上げる。まさか、あのネイリーンがアリサ達の前でこんなにはっきりとデレるとは! 言った俺もビックリだ!
彼女とのフラグは俺の遙か予想を超えて、カーボンファイバー並・・・いやエレンディアではミスリル銀並と呼ぶべきか、いずれにしてもとんでもない強度で出来上がっていたようだ。
「あの、すいません・・・そろそろ出発しましょう・・・あと出来るだけ会話は控える方向で・・・」
そんな俺達にランスが本当に申し訳ないとばかりに出発を催促するのだった。
ご愛読ありがとうございました。二章からは一日ごとの更新を予定しております。
よろしければ感想や評価をお待ちしております!




