第四十九話 二章第十三話 海賊の酒場
異世界を舞台としたハーレム冒険小説の通算第四十九話です。
海賊の本拠地に潜入したマサキはランスと情報収集に出向くのだが・・・。
初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!
読んでくれたら、作者のやる気が出て頑張れます!
「水の精霊よ、その力で我らに水上を歩む加護を与えよ!〝ウォーター・ウォーキング〟」
再びアリサから水上歩行の魔法を授けられた俺達は、順番に舟から降りて海上へと降り立った。
新月にほぼ近い薄暗い夜の中、遙か遠くに赤味を帯びた小さな灯が見える。それこそが俺達の目指す海賊が拠点する島だ。
ここから先は海賊の監視網が厳しくなるため、船を降りて歩いて向かうしかない。俺達は暗闇の中を波の音を聞きながら灯りに向かって歩き始めた。
強制的ではあったが、依頼を受けた俺達はランスと共に具体的な作戦を練り、その日の夕方には出発を開始していた。
もっとも、それほど素早く手筈を整えられたのはランスの成果だ、作戦の多くは彼が既に細部まで気付き上げており、極端な話〝ウォーター・ウォーキング〟を扱える優秀な精霊魔法の使い手さえいれば、いつでも実行可能の状態だった。
今回の依頼の最大の問題は如何に、監視の厳しい島への上陸と脱出方法を確保するかであり、アリサの存在がそれを可能としたのだ。
アリサ以外の俺達はおまけのような気もするが、彼女一人をランスに同行させるわけにはいかない。俺が持つ暗黒魔法は隠密行動向けの魔法が多いし、ルシェラの狩人の技も盗賊として応用出来る。ネイリーンは・・・戦いになれば役に立つだろう。
ヘイズルが用意した船を一昼夜走らせ、警戒網のぎりぎりまでやって来た俺達は、いよいよランスを加えた五人で海賊の拠点からお宝を盗み出そうとしているのだった。
二時間ほど海の上を歩いただろうか、途中で一度近くを通った船を海上に伏せてやり過ごした以外は順調に島への接近を成功させる。
その後はランスが誘導し、俺達は船着き場から離れた岩礁から島に上陸開始する。なんで、この男はこれほどまでに海賊の島に詳しいのだと作戦会議中にも話題になったが、なんのことはない。彼はかつて海賊の一味だったのだ。細部を知っていて当然である。
もっとも、海賊から足抜けした彼が、なぜ今回の依頼にここまで積極的になっているのかは不明だ。ヘイズルから高給を約束されているのかもしれないが、リスクを考えると腑に落ちない。そして、この質問に彼は無言を貫いていた。
「海賊の首領と幹部達が住んで宝を貯めている砦は、まさにこの先です。ですが、砦には夜目の効く厄介な幹部が一人いて、そいつの情報を調べる必要があります。それを下級船員の溜まり場である酒場に確認に行きますから、そちらの三人はここで待機していて下さい」
島に上陸を果たし海賊の根城である砦までもう少しの所でランスは俺達に告げる。
この段階で一時的に二手に別れ、俺とランスの二人で情報収集に出向くことは既に予定されていたが、彼はアリサ達に噛んで含めるように説明を施した。
おそらくは人選で少々揉めたことが原因だろう。ランスは最初から俺を指名していたのだが、それにネイリーンとルシェラが私達も連れて行けと、ごねたのである。
ランスの話では海賊の下級船員は襲撃した船や近くに漁村からスカウトして絶えず入れ替えがあるので、見知らぬ顔同士でも怪しまれることはまずないらしい。
だが、それは人間の男である場合で、長身で美女のネイリーンとダークエルフのルシェラではどうやっても誤魔化しきれないと反対したのである。
その主張はもっともなので、結局二人は意見を引き下げ、ランスの考えを受諾したという経緯があった。
「頼むよ、マサキ!」
「マサキ、くれぐれも調子に乗ってランスの邪魔をしないで下さいね! あなたはあまりお酒に強くないのですから!」
「そうだよ! マサキは直ぐ調子に乗るからね!」
別れ際にアリサ達から激昂を受ける俺だが、ネイリーンとルシェラの言葉が少し気に掛かる。
この二人が同行を申し出たのは俺のことが心配で堪らないからだと思っていたのだが、単に能力に不安を感じていただけ過ぎないかもしれない。
「では、行きましょう!」
なんとなく、がっかりする俺にランスが出発を合図した。
「酒場と聞かされていたが、ちょっとした村くらいの規模があるな」
「ええ、ここの海賊は何隻も船を持って船団を築いていますからね。半舷上陸で休むにしても、一軒程度では間に合わなくて、これくらいの規模が必要なんです。食堂に酒場に宿屋、それに娼館を全て併せ持たせていますから」
「なるほど」
ランスの答えに俺は納得して頷いた。アリサ達と別れた俺はランスに連れられて酒場、とういうよりは多くの酒場が建ち並ぶ歓楽街に紛れ込んでいた。
今はその中の一つでテーブルに座り、船員仲間として差し向かいで飲んでいるという設定だ。
なので、ルシェラには止められていたが、麦酒を半分ほど既に開けている。酒を飲まない海賊などいるはずがないのだ。
「例の情報はどうやって集める? カウンターにいるバーテンにさり気なく聞くのか?」
「いえ、ここのバーテンや店主は幹部連中のスパイです。彼らに迂闊なことを聞いたり話したりすると、面倒なことになります。しばらくはこうやって二人で飲んで適当に話を続けましょう。そのうち機会がやって来ます」
「そうなのか、わかった・・・」
酒場デビューを既に果たしている俺だが、ランスの方が場離れしているのは間違いない。ここは素直に意見を聞く。
「せっかくだから聞くけど、あんたはなんであの男の下で働いている? 俺達は例の報酬で仕方なくやっているが、あんたは才能もあるようだし、仕えるにしても、もっとましな奴を選べただろう?」
時間はあるようなので俺は、ランスに以前からの疑問を問い掛けた。
「それは・・・そうですね、ここでなら打ち明けても良いか・・・実は俺もヘイズルに弱みを握られているんだ。あいつは例の魔道具を何としても取り返そうとしているらしく、元海賊だった俺を探し出すと・・・妹を攫って俺を脅迫しこの計画を立てさせた。そして実行に必要な高レベルの精霊魔法の使い手、つまりあんた達が見つかり・・・ってわけさ」
惚けると思ったランスだが、ヘイズルの監視がない場所だからだろう。それまでの慇懃な言葉使いを捨てて、素性を口にする。
「・・・そんな・・・それで、その妹さんは無事なのか?」
「今のところはね、あの屋敷のどこかに囚われているんだ・・・あんた達の解毒剤が魔道具と引き換えのように、俺は妹の命が魔道具との引き換えだ。だから、その点では俺と君達は一連托生だな。・・・まあ、信じてくれとは、言いわないがね・・・」
最後にランスはそこで話を終えると麦酒に口を付ける。彼自身が語ったとおり、ヘイズルの手先であるランスの言葉を鵜呑みするのは危険だ。だが、これまでの経緯を考えると、かなり現実味のある話と言える。
今更だが、海賊の本拠地に乗り込んで宝を奪い返すなど、いくら内部事情に詳しいからと言っても正気の沙汰ではない。
そんなことをする実力があるなら、それこそメーゼレの有力者の屋敷からお宝を盗む方が、まだ現実的で難易度も低い。俺達がそうであるように、人質でもない限りこんな大それたことをする必然性はなかった。
「ところで、俺はあんたの質問に答えたわけだから、こっちも一つ聞いていいかな?」
「ん・・・なんだ?」
「あの三人の中であんたの一番は誰なんだい? 正直、上手くやっているようで羨ましいよ。特に背の高い女性と褐色の娘は、あんたのことが心配で仕方がないって感じだったぞ?」
俺がランスの背景を吟味していると、彼は笑みを浮かべてと問い掛ける。クールな男だと思っていたが、やはり若いだけあってその手のことには敏感なようである。
「そ、それは・・・まだ決めてない・・・今の関係が崩れるからな」
誰か一人を選ぶとしたら、やはりアリサなのだが、俺はそれを飲み込んで当たり障りのない返事で誤魔化した。
まあ、半分くらいは事実であるし、俺の選択肢の中にはランスの知らない一号もいる。・・・そう言えば、一号は元気にしているだろうか?
サキュバスである彼女は、定期的に人間から精神力を吸わないと衰弱する。予定では二週間ほどでトリムに戻ると伝えていたが、既にそのくらいが経過していた。
一号は俺の恋人というわけではないが、他の男の精神力を吸い取っていると思うと、なんだか嫉妬に近い感情が浮かび上がる。自分で言うのも何だが、随分と気の多い男だ。俺は!
「なるほど、誰か一人と深い関係になるとパーティーメンバーとしての関係が崩れるってことか・・・でも、それじゃ生殺し状態なのでは?」
「うん、それは事実だ。自分で言うのもなんだが、俺はパーティーを円満にするために色々と頑張っているんだ」
「・・・じゃ、もしあんたが外で女を抱いて帰って来たら、彼女達はどうすると思う?」
「・・・金髪の娘はあまり気にしないかもしれないが、大女と褐色は怒るだろうな・・・特に大女は俺の首をへし折るかもしれない。何せ彼女は絡んで来たチンピラの首を一発で殴り折ったことがある!」
「・・・そうか、あんたが慎重なのは、あの大柄の女性が・・・しかし、それは困ったな。実は例の情報は俺達に絡んで来た娼婦から聞き出すつもりだったんだ。ここの客はそれ目的で来ているから、何もせずに出るのは不自然なんだよ」
ランスの言葉に俺は改めて周囲に視線を送る。そう言えば、彼は最初に海賊の酒場は娼館も兼ねていると説明していた。
任務中なのでそんなつもりはなかったが、薄暗い酒場の灯の中でカウンターやテーブル席で何かを待つように座る女達の存在に気付く。どうやら彼女達は客ではなくここを縄張りとする娼婦のようだ。
「ねえ、お兄さん達。さっきから、ひそひそと何の悪巧みをしているの? 私達にも教えてくれないかしら?」
まずいことに、俺の視線は近くにいた二人組娼婦の一人と目が合って話し掛けられてしまう。彼女からすると、俺が好みの娼婦を探していたように見えたのだろう。
まあ、確かに彼女はその場にいた娼婦の中では一番可愛らしく胸も大きくて、俺の目に止まったのは事実だ。
だがこれで、こっそり店を抜けることも出来なくなる。俺は自分のスケベ心に呆れるしかなかった。
ご愛読ありがとうございました。二章からは一日ごとの更新を予定しております。
よろしければ感想や評価をお待ちしております!




