第四十八話 二章第十二話 待ち伏せそして脅迫
異世界を舞台としたハーレム冒険小説の通算第四十八話です。
待ち伏せを受けたマサキ達の前に現れたのは?!
初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!
読んでくれたら、作者のやる気が出て頑張れます!
「こちらは戦う気はありません。改めて交渉をしたいだけです」
待ち伏せをしていた人影の先頭に立つ男、午前中にランスと名乗った冒険者が俺達に声を掛ける。先程は大人しく引き下がったと思っていたが、どうやらそんなわけではなかったようだ。
彼らからすれば、俺達をこんな人気のない場所におびき寄せてまで受けさせたい仕事があるということだろう。
いずれにしても、こんなことをする連中とは何らかの形で決着を付ける必要があるのは間違いない。
敵は五人でこちらよりも頭数は多いが、既にこちらは漕ぎ手への尋問は無意味と悟ったネイリーン達も桟橋から上がり臨戦態勢を整えている。その言葉が再び嘘であっても特に問題はなかった
「もう、話は着いたと思っていたけど?」
一応とばかりにアリサが問い掛ける。戦っても負けるとは思わないが、さすがに街中で殺し合いをするには、利害だけでなく道徳的にも抵抗がある。避けられるなら避けるべきなのだ。
「先程まではそのとおりです。ですが、こちらは新しく切り札を手に入れました。皆さんもこの切り札の存在を知れば考えが変わるはずです」
「・・・新しい切り札だって?!」
ランスの思わせぶりな台詞に俺は荒げて問い掛ける。彼のことは何一つ知らないが、これまでの態度や言動から下手なハッタリを嘯く男とは思えなかったからだ。
「ええ・・・皆さんは先程、揃って料理を堪能されたようですね?!」
「「「「・・・なんだって?!(なんですって?!)」」」」
そのランスの言葉に俺だけでなく、四人全員が震撼した。
「・・・毒でも盛ったのかな?」
はっきりとは明言しなかったが、アリサはランスの言葉の裏にある真意を嗅ぎつけると直接的に問い掛けた。
「ええ、店の者を買収してあなた方の食事に似たような物を少々混ぜさせて頂きました。正確には単なる毒ではなく定期的に摂取しないと禁断症状を引き起こす魔法の薬で、解毒剤はヘイズル卿自身がお持ちです。ああ、気安く解毒の魔法は使わない方がよろしいでしょう。大変強力な魔法の薬と聞かされています。魔法の特性からして一度、失敗してしまうとレベルを上げるまで再チャレンジは出来ないはずです・・・どうです? ヘイズル卿にお会いになられますか?」
ランスは恐ろしい事実を告げる。食事に毒を盛られていたとはさすがに想定外だ。
本能的な嫌悪が沸いて来るが、気になるのは後半の脅し文句である。その話が事実ならば、俺達はかなり不味い立場にいる。
「〝ディテクト・マジック〟!」
脅迫内容を確認するため、隣にいたネイリーンが俺に魔法を掛けた。この〝ディテクト・マジック〟は持続性のある魔法や魔法を帯びた存在を術者に知らしめ、分析する感知系の魔法だ。ランスの言葉が事実なら何かしらの反応があるはずだった。
「く! その男の言葉は本当のようです。マサキは何かしらの魔法の反応があります! いや、正確には呪いですよ、これは! 〝キュアー・ポイズン〟ではなく呪いを解く〝リムーブ・カース〟が必要かと!」
ハッタリであって欲しいと言う願いはあっさり裏切られ、ネイリーンは焦った口調で結果を報せる。
「な、治せそう?!」
「私も〝リムーブ・カース〟を使えますが、必ず成功させる保証は・・・」
俺は未だにまじまじと自分を見つめるネイリーン問い掛けるが、彼女は自信なさげに答えた。
確かネイリーンの回復魔法レベルは35レベルほどである。一人前を優に超えるこのレベルを持ってしても厳しいとなると、俺達四人全員を確実に解除するには回復魔法の専門家を探し出すか、あるいは解毒剤を手に入れるしかないだろう。
「・・・そのヘイズル卿とやらに案内してもらおうか!」
トリムならいざ知らず、街の規模で劣るメーゼレに達人級の回復魔法の使い手が存在している可能性は低い。自分達が置かれている状況を理解したアリサは、ランスに怒りを込めて告げた。
ヘイズルとの会見を選んだ俺達はランス達に連れられて屋敷のある山の手地区に移動を開始する。
余談になるが、小高い丘の上に造られた山の手地区と海に面した港地区では三十メートルほどの高低差がある。
そのため、この区間は階段の他にも、一種のケーブルカーが斜面に設置されており、俺達はこれを使って山の手地区に登った。
ケーブルカーの動力は〝白き翼号〟でお馴染みのウッドゴーレム達である。巨大な歯車を組み合わせた滑車を何十体ものウッドゴーレムが動かす様はなかなかの圧巻とも言えるが、どうもエレンディア世界の住人は、この手の動力に困ったらゴーレムで解決するようだ。
いずれにしても俺達はエレンディアの魔法文明の力で苦労せずに丘の上に登ることが出来た。
ケーブルカーを降りた先には二台の馬車が用意されており、俺達はそれに乗ってヘイズルの屋敷に到着する。裏庭から屋敷内へ案内されるが、さすがに屋敷の規模は山の手地区でも最大で、その権勢の程が窺えた。
そのまま豪華で瀟洒な内装が目立つ廊下を抜け、食堂と思われる広間に通される。解毒剤という切り札を持っているためか、ランスが俺達の武装は解くこともなかった。
とてもそんな気分ではなかったが、一応は賓客という立場なのだろう。テーブルに着いて主人であるヘイズルを待つ間、俺達は女中達に白磁と思われる見事なティーカップでお茶が振る舞われた。
「良い葉っぱ使っているよ、このお茶・・・」
「舶来品のセージェル葉ですね、きっと・・・」
「うん、確かに美味しいかも・・・」
〝毒食らわば皿まで〟の精神なのか、アリサがお茶に口を付けるとネイリーンとルシェラもそれに続く。今更だが、豪胆な女性達である。俺は香りを楽しむだけにした。
そんなやり取りをしていると、美人の女中達に傅かれながら一人の男が現れる。一目で上等と分かる見事な衣服を纏った、やや太めの体形をした壮年の人物だ。彼がヘイズル卿とやらだろう。
ヘイズルは一見すると、髪を綺麗に整えて後ろに撫でつけていたり、首には鮮やかな紫色のスカーフを巻いていたりして、なかなかの伊達男に見えなくもない。
だが、指や全身に無節操に身に付けた宝石類がそれを台無しにしていた。ランスはヘイズル卿と尊称をつけて呼んでいたが、貴族というよりは新興の成り上がり者といった感じだ。
「お待たせしました客人方。私が当屋敷の主人のヘイズルです。・・・美しいご婦人が多い冒険者達と聞かされていましたが、まさにその通りですな!」
上座に腰を降ろしたヘイズルは、まるで俺達が望んで会いに来たかのように微笑みながら告げる。その目は俺を除く三人を舐めるように見つめて薄気味悪い。
特にアリサに送る視線は胸の底に沸き立つ情念を隠すつもりがないのか、果てしなく卑しい。ランス達との戦いは躊躇した俺でも、この男ならなら今直ぐにでも息の根を止めることが出来そうだ。
「そんなことよりも、交渉に入りましょう。私達はあなたが持っている解毒剤がほしい! それを渡す条件を明かして下さい!」
本来ならリーダーのアリサに任せる場面のはずだが、ネイリーンが口火を切る。
おそらく、彼女もアリサをこの下品な成金男の矢面に立たせたくなかったのだろう。俺もまったく同じ気持ちだったので、心の中でネイリーンに賛辞を送る。
「せっかちな方ですな・・・まあ、良いでしょう。私の望みは〝アレ〟を取り返すこと、話が早く進むのはやぶさかではない。ランス、彼女達に説明して上げなさい!」
「はい。では、皆さん、改めてヘイズル卿のご依頼を申し上げましょう」
ネイリーンの要求に機嫌を損ねたヘイズルは憮然とすると、脇に控えていたランスに依頼内容を促した。
結論から言うとヘイズルの依頼とは、自分の所有する船が海賊に襲われたので、その時に奪われた魔道具を彼らから取り返して来いという内容だった。
大よその見当はついていたが、改めて聞かさせると随分と理不尽な依頼である。メーゼレ海軍でさえ手を焼く海賊に四人パーティーの冒険者で挑めというのだから、正気の沙汰とは思えない。
その事実を持ってネイリーンが反論するが、代理人のランスは海賊のアジトとなっている島の位置は既に把握しており水上歩行や呼吸を可能にする〝ウォーター・ウォーキング〟や〝ウォーター・ブリージング〟を扱える精霊魔法スキル保持者さえいれば、夜の闇に紛れて島に潜入するのは難しくないと答える。
しかも、ランス自身が俺達に同行し、盗賊の技でサポートすると申し出ていた。これは俺達の監視も兼ねていると思われたが、盗賊スキルの専門家が加わることで依頼達成の実現性が帯びてきた。
「その魔道具はどんな代物なんだ? 大きさは?」
具体的な内容が知らされる中、肝心の魔道具に関する情報が出てこないことに気付いた俺は、ランスに問い掛ける。
魔道具は触っただけで効果を現わす危険な物や、用意に動かせない大型のタイプも存在する。魔道具の性質や大きさ次第で任務の達成条件はかなり変化するはすだ。
「・・・魔道具の効果や性質は・・・まだ不明とされています。ですが、その大きさは片手で持てる程度ですし、詳しい形状は私が知っていますから、皆さんが気にする必要はありません。おそらくは海賊もその価値を見抜けず宝物庫に貯め込んでいるはずです。宝物庫への侵入は私の役目になるでしょうし、回収は私に任せて下さい!」
「なるほど・・・」
効果の知れない魔道具をこれだけの手間を掛けて取り戻すなど不自然だったが、俺は納得したふりをする。
おそらくは何かしらの力を秘めているに違いないが、意図的に隠している以上、突っ込んでも答えは返ってこないはずだ。ならば、その事実に気付かない間抜けな冒険者を演じた方が得策なのだ
アリサ達も黙っているので、俺と同じ思いを抱いているに違いない。優秀な仲間は本当に頼りになる!
「それで依頼を達成したとして、私達が解毒剤を貰える保証は?」
しばらくランスとやりとりを続け、その説明から依頼達成が決して不可能でないことを知ると、これまで黙っていたアリサがヘイズルに視線を送りながら問い掛けた。
「私が欲しいのは盗まれた魔道具だけ、それさえ取り返してくれるなら、当初の約束どおり金貨200枚と一緒に解毒剤を進呈しよう!」
「・・・わかりました。その言葉を信じましょう!」
「おお、それはありがたい! では、詳しいやりとりは、そこのランスと相談して取り決めるといいだろう! 薬の禁断症状が出るのは五日ほどだ。お互いのために吉報が早く届くのを待っているよ!」
ヘイズルとの約束などミジンコほども信用出来なかったが、現在の状況では依頼を受けるのが最善と判断したアリサは承諾の意志を示した。
「いっそのこと、この屋敷を制圧して薬を提出させることも出来ましたが?!」
「うん、その手は私もずっと考えたけど、そうすると上手く薬を手に入れたとしても、メーゼレだけでなくトリムを含めてお訪ね者になってしまうだろうからね。・・・依頼の実現性を考えて受けることにしたよ。それに海賊なら依頼の魔道具以外にも宝を持っているだろう? 何か掘り出し物を手に入れられるかもしれない!」
ヘイズルが広間から出ると、ネイリーンはもう一つの選択を提案するが、アリサは自分の考えを伝える。
「なるほど、アリサがそのような考えなら従いましょう!」
「今更だけど、マサキとルシェラはどうだい?」
「ああ、あの状況ではそれしかなかっただろう。それに暴れるのはいつでも出来るしさ!」
「そうそう、暴れるのは最後の手段だよね。今は依頼を受けたことにしとくのが得策だよ!」
「うむ、ではしばらくは依頼の達成を前提に行動しよう!」
ネイリーンに続き、俺とルシェラも賛成を示したことでアリサはパーティーの目標を明確にする。
「・・・では、皆さんより詳しい説明と今後の調整に入りましょう」
反乱の可能性を仄めかす俺達の会話を聞いていたランスは、やや引き攣った表情で提案を口にした。
ご愛読ありがとうございました。二章からは一日ごとの更新を予定しております。
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