第四十七話 二章第十一話 海鮮スープ
異世界を舞台としたハーレム冒険小説の通算第四十七話です。
突如現れた男からの依頼を断ったマサキ達は、楽しみにしていた料理を堪能するのだが・・・。
初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!
読んでくれたら、作者のやる気が出て頑張れます!
「失礼ですが、あなた方が曰くつきのウンディーネを退治された冒険者の方々でしょうか?」
翌日、朝食を軽めに済ませそのままギルドの食堂で雑談を続けていた俺達に一人の男が声を掛けて来た。
その男は中肉中背の若い男で軽めの革鎧と小剣で武装し、腰のベルトには細々(こまごま)としたポーチを下げている。格好からすると、盗賊系スキルを持った冒険者だろう。
年齢は俺より少し上くらいだが、そのわりに口調は丁寧で、顔の出来も良くなかなかのイケメンだ。少なくても同性である俺でも『話くらいは聞いてやるか』と思う程度には、まともな人物に見えた。
「・・・そうだけど、あんたは?」
代表してアリサが答えるが、反応の間からすると彼女もこの男を吟味していたようだ。
「ああ、申し遅れましたが、私はヘイルズ卿に仕えている冒険者でランスと言います。早速ですが、私の主人であるヘイルズ卿がウンディーネを退治されたあなた方と会合を望まれております。よろしければ招待に応じて頂けませんか?」
「ん・・・なんか唐突だね。依頼を頼みたいってことかな?」
「はい。困難な任務を成功させたあなた方を屋敷に招待しようとしているのですから、そう察するのが自然かと思われます」
俺からするとヘイルズ卿って誰だよ?! となるが、話の内容からするとこの街の有力者の一人に違いない。確認のために話の腰を折るのも不躾なので、そのまま二人のやり取りを黙って見守る。
「なるほど。でも冒険者が必要ならこのギルドを通して募集したら?」
「ええ、もちろん主人は既に依頼をギルドに提出しております。ですが・・・メーゼレの街にはそもそも主人の期待に応えられる実力のある冒険者はおらず、あなた方の活躍を聞き窺った次第です。もちろん、報酬は依頼に相応しい額を用意しております。主人は依頼内容を成功させた暁には金貨二百枚を支払う用意があると仰っています! どうでしょう、まずは主人と会って話だけでも聞いてくれませんか?」
立て続けに質問を発したアリサによって、状況が明らかになる。どうやらヘイズルという人物は俺達に何かしらの依頼を頼みたいようである。それも報酬金額からすると、かなり困難で面倒な任務のだろう。
男と会話を続けるアリサは俺達三人にさり気なく視線を寄越す。その瞳は『私は乗り気がしないが、どうする?』と訴え掛けていた。
「「「・・・」」」
言葉こそ発しなかったが、俺とネイリーン、ルシェラの三人はアリサの想いを共有し『断れ!』のオーラを出す。報酬は魅力的ではあるが、俺達はそこまで金にがっついていないのだ。
「悪いけど、依頼は間に合っているんだ。誘いは断るよ」
「・・・そうですか、こちらこそ、突然お邪魔して失礼しました。主人にはそのように報告させて頂きます」
意外なことにランス名乗った男は交渉を粘ることなく、あっさりと引き下がると現れた時と同じように静かにその姿を俺達の前から消した。
まあ、受ける、受けないは俺達に選択権があるので、無理強いは逆効果と判断したのかもしれない。
男が去った後、俺達は念のためにヘイズル卿となる人物の評判をギルドで確認するが、この人物こそが以前の噂で聞いた海賊に奪われた積荷を奪い返そうとしている有力者と判明する。
メーゼレの大船主だが、禁制品を扱っていると言う噂もあるらしく、その評判はお世辞にも芳しくない。やはり断って正解だった。
そして、そんな怪しい人物のことを忘れた頃、俺達は予定して海鮮スープが有名な店に出向くために冒険者ギルドを出る。
俺達にとって素性のしれない人間からの誘いより、期待の料理の方がより大事なイベントなのだ。
また、この頃になると俺達はメーゼレの流儀に慣れ始めていた。この街には水路が無数に存在し、それが流通の要になっているのだが、実は乗合バスのような小舟も定期的に運用されており、俺達はそれを利用することを覚えたのだ。
バスに当たる小舟には様々な色の旗が掲げられており、色で航路を区別している。その色をしっかり覚えていれば、複数の小舟を乗り継ぐことで港地区の移動は大幅に時間節約が可能だ。
慣れさえすれば、メーゼレは本当に良く出来た街と言えた。
「ああ、美味しかった!」
話題の店で昼食を終えて水路に面した乗り場で小舟を待っていると、ルシェラは膨らんだお腹を軽く叩きながら呟いた。
彫刻のように整った顔と均整の取れた肢体を持つ彼女の外見からは、想像がつかない野暮ったい台詞と態度である。
「うん、本当に美味かった!」
そんなギャップの激しいルシェラの声に俺も全面的に賛成を示す。
期待の海鮮スープは、ブイヤベースというよりは、どちらかと言うと俺の良く知る鍋料理に近い見た目をしていた。
一見すると魚やエビの切り身と野菜を一緒に煮込んだ、本当にただの〝ごった煮〟なのだが、下味となるスープが独特で、酸味と辛味さらに微かな甘味を合わせ持ちながらも、具材が持つ本来の味を引き出しており、単純に見えて実はかなり手の込んだ料理だった。
そのスープは各種香辛料の他にもココナッツミルクらしき食材を隠し味にしているようで、日本人の俺からすると最初は『魚料理にココナッツミルクだと!』となったが、食べてみれば普通に美味いので二口目からは気にならなくなる。美味いは正義なのだ!
「私も麦酒を飲むのを忘れるくらい食べたかな。ふふふ」
「皆に好評のようで私もうれしいですよ!」
俺とルシェラだけでなくアリサも同意したことで、店に案内したネイリーンは安心した笑顔を見せる。仮に不味かったとしても彼女の責任ではないのだが、やはり心配だったのかもしれない。
そのように味わった海鮮スープの美味しさを思い出していると、冒険者ギルド方面に向かう赤い旗を掲げた小舟がやってきたので俺達は素早く乗り込む。
幸いにも他に客はおらず、乗っているのは漕ぎ手の一人だけで俺達の貸し切り状態だった。
「あれ、こんなところ通りましたか?」
他に客がいないことを良い事に雑談を続けていた俺達だが、突然ネイリーンが疑問の声を上げた。
水路側は街側と比べるとやや低いので、上側を意識していないと常に同じ石に覆われた壁を見続けることになる。正直に言うと俺には区別はつかなかったが、なんとなく記憶にない場所のように感じられた。
「確かに、そろそろ着いていても良い頃のはず・・・」
ネイリーンの疑問にアリサが頷き、後ろの漕ぎ手に視線を送る。
「一度、止めて貰えませんか?」
アリサだけでなく俺達四人の視線を無視するかのように漕ぎ続ける男に、ネイリーンが痺れを切らしたように告げる。既に長剣を抜くために左手で鞘を抑え、今にも鯉口を切ろうとしていた。
「あ、あっしは・・・頼まれただけでして・・・」
ネイリーンの本気の圧力を感じたのだろう。それまで態度を改めかのように漕ぎ手の男は櫂から片手を放して敵意のなさを証明しようとする。
「そこに船を着けて!」
アリサが少し先に見える小さな桟橋を指で示しながら、漕ぎ手に命令を下す。男の真意は不明だが、この小舟に乗り続けるのは利口とは言えない。漕ぎ手も黙ってその指示に従った。
「誰に頼まれてこんなことを? 目的は?!」
「いや、ネイリーンそれどころではないようだ!」
桟橋に着いたネイリーンは漕ぎ手を尋問しようとするが、場所と状況を確認しようと、まっさきに船を降りた俺は警告を伝える。
階段を上がった先はどこかの裏庭で、そこには武装した五人の人影があったからだ。
どうやら、異変に気付くのに一歩遅かったようである。俺達は待ち伏せをされたのだ。
ご愛読ありがとうございました。二章からは一日ごとの更新を予定しております。
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